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またまた小路幸也の新作である。そろそろ『東京バンドワゴン』の新作も刊行されるんじゃないかな。たぶん春には出るだろう。さて、この『花咲小路』シリーズ最新作はミステリ仕立て。たい焼き屋の禄朗とその彼女(婚約者)であるユイちゃんがちょっとした謎に挑む。
相も変わらずたわいもないお話だけど、読んでいて楽しいのはお話がどうこうということではなく、このコミュニティの心地よさである。個人商店が軒を並べる今の時代においてはあり得ないような下町商店街が舞台になる。これはそこで暮らす人たちによる人情劇である。相変わらずの小路幸也節が全開。
禄朗は他人の嘘が見えてしまうという特技というか、不思議体質を持つ30代の男。だから生きるのは大変かもしれない。あまり人付き合いは得意じゃない。だけどユイちゃんだけはまるで嘘をつかないから(彼女が子どもの頃から知っている)自然に接することができる。これはそんなふたりのお話。
今回のお話自体は彼の甥っ子の小さな嘘から始まる。もちろん彼が犯罪を犯すわけじゃなくて、困っている友人を助けるために奮闘する話だ。そしてみんながそれを助ける。さらには20年前の事件の意味が明らかになる。
大きな事件ではないし、その出来事自体が問題だということじゃない。そこを通してこの商店街という共同体で生きることの心地よさがさらりと描かれる。予定調和の心地よさ。