ウイング再演大博覧會2024に参加したオリゴは『パイライフ』で挑む。これはもう20年も前の作品になる。まだ若かった頃の岩橋さんの作品である。それを今改めて再演する。硬くなることなく、いつもながらの飄々とした岩橋節が炸裂する。
舞台はロンドン。とあるパブ。ここには日本人しか来ないから、日本語しかしない。だから、まるで日本。そこに集う人たちの群像劇。正体不明の怪しい人たちばかり。彼らが何者なのかはわからないけど、大切なお客さまだからとママは気にはしないで受け入れる。
旅人ミナミは恐る恐るここに足を踏み入れ仲間入りする。世界中を放浪している彼女がここにやって来るところから芝居は始まる。もちろんここはいつものように彼女を優しく受け入れてくれる。トルコから友人の紹介でロンドンに来たと言う。やがてアフリカに向かう。それまでの時間が描かれる。
ここにいる彼らはパイライフかもしれない。パイライフって何? 何度も繰り返し問われる。お面を被った彼らはパイライフそのもの。パンフには「悪魔、悪霊、邪神に分類されるべき存在」とある。始まる前にネタバレかい、と思うけど作、演出の岩橋貞典はまるで気にしてない。
だいたいここがロンドンだということからして眉唾物である。それさえたわいない冗談でもかまわない。ここはどこでもない場所。ただここにくればみんなが優しく迎えてくれる。それだけでいい。こんなふうにして岩橋氏はオリゴ党を作ってきた。そしてこれからもオリゴはユルユルと活動していく。これはそんな意志表明のような作品だった。