習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『スーパー8』

2011-06-13 23:23:37 | 映画
 久々に映画を見て、ワクワクドキドキした。まるで少年のように無邪気に映画の世界に溶け込んだ。まぁ正直言うと、そこまではのめり込めなかったのだが、ちょっと無理してでも、この世界を受け入れたくなったのだ。スピルバーグだって、もう子どもではないから、この手の映画を無邪気に作れるわけではない。だが、この気持ちを忘れてしまうくらいなら、もう映画なんかやめてしまう方がいい。そんなこと、誰よりも彼自身がよく知っているだろう。だから、もう一度。『ET』を作ろうとしたのだ。

 82年。『ET』が公開された時、大人も子供も夢中になった。まだ、十分に無邪気な時代だったのだろう。今、あんな映画を作っても誰も見向きもしない。残念な話だが。そのことは、彼もわかっている。それに、いまさらあの映画をリメイクしても意味はない。この映画を2011年の『ET』だ、なんて、言わない。日本版のコピーに「僕たちは、ひとりじゃない。」とあるが、本国でもこのコピーを使ったのだろうか。あまりにあからさまで、ちょっと恥ずかしい。これは『未知との遭遇』のパロディーだ。脚本、監督のJJエイブラムスのオマージュなのか、製作のスピルバーグ自身の要請なのか、どちらとも知れないが、これは、かってのスピルバーグ世界を結集させた作品だ。

 話はまるで先が読めないようになっている。いったいどう展開するのやら、わからない。子どもたちを主人公にして、田舎町を舞台にする。とてつもない出来事が起こっている。だが、それがなんなのか、なかなか明かされない。でも、徐々にそれは姿を現す。

 ネタばらしになるから、気になる人はこの先は読まないで欲しい。

 映画の後半になり、その「何者か」が、なんとなく、わかった時から、うすうす感じていたのだが、ここまであからさまな『ET』になるなんて、驚きだ。しかも、その生き物の顔がアップになった時。ETそっくりなのである。凶暴にならざるえなかったETくんの姿だ。エリオットに助けられ、自分の星に帰ることができたのが『ET』なら、これは、それが叶わずNASAに捕獲された場合のお話である。閉じ込められて、ふるさとを夢見て、地球で監禁されて、人間を恨み、凶暴化したETが、エリオットのような少年と、その仲間に出会い、ようやく故郷の星に帰るまでの話である。

 最初は貨物列車の脱線事故だった。それから不思議な出来事が次々に起こる。1979年、オハイオの小さな町。少年たちは8ミリ映画に夢中だった。スーパー8はそんな8ミリのフイルムだ。僕たちも昔よく使っていた。まぁ、どちらかというと、我々日本の子どもはシングル8だったが、スーパー8も何度か使った。この映画に出てくるあの山吹色のパッケージが懐かしい。8ミリ少年だった70年代の記憶がよみがえる。スピルバーグが映画監督としてスターになっていく時代を背景にしている。『ジョーズ』から『未知との遭遇』そして、『ET』という初期のスピルバーグ映画が世界中を席巻した時代。そんな時代を生きた少年たちの姿が描かれる。それって、JJエイブラムスの自画像なのか。

 B級映画のテイストと、家族の物語をミックスして、異星人と少年の友情物語という要素もほんの少し、残した。(そこはほとんどないと言ってもいいくらいだ)いまさらこんな映画を作るのはなぜか。殺伐とした時代だから、こんな温かいものを、提供したいと思ったのか。今の時代、こういう映画はあまり受け入れられないかもしれない。だが、スピルバーグはまるで、気にしない。こんな時代だからこそ、もう一度こんな映画を作りたいと思ったのだろう。母親を亡くした少年少女が、映画作りを通してお互いを必要だと知る。中学生くらいの子どもたちを主人公にしたのもいい。エリオットより、年上に設定したのは正解だった。このもうひとつの『ET』は、今の時代にどう受け入れられるのだろうか。楽しみだ。

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「スーパー8」感想 (内野晃)
2011-06-29 20:33:43
 コダックの8ミリフィルムで自主製作映画を作ってた若き日のスピルバーグに捧げるオマージュ。とかいうテーマで青春映画にしたほうが、かつて映画少年だったオジサン層にはウケたんじゃなかろうか。
 
 この映画を観たけど、え!こんなもん?という印象だった。サスペンス満点のストーリー展開にはひきつけられたが、エイリアン(?)が正体を現すと、意外と平凡な奴でがっかりした。

 いままで散々出てきたようなキャラじゃん・・・という感じ。それよりも、アメリカも日本も自主製作映画に夢中になっている子供に親はあんまりいい顔をしないんだね。

 そんなことよりスポーツでもしろ!なんてぼやかれるのは同じ。ラストのクレジットで映写機のカタカタいう音にはグッときた。
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