石井裕也が『川の底からこんにちは』の直前に撮った作品で、ようやくDVD化されたので、レンタルしてきた。従来の自主映画のステージでのびのびと自分の世界観を展開しており、彼がこの後ブレイクすることとなった商業映画第1作『川の底からこんにちは』以上に彼らしい佳作である。17,8歳の高校生の男の子が、34歳の高校教師と駆け落ちする、という衝撃のドラマを、いつもながらの幼稚な下ネタ満載で見せる肩の力の抜けた映画で、一見やる気がなさそうに描く。だが、これはいつもの彼のやり方だ。だいたい東京に出てきた田舎ものの2人の生活を描くだけで充分面白くなるはずなのに、そこをあえて外す。2人のドラマは突き詰められることはなく、どうでもいいような傍役との関わりばかりに気を取られていくのだ。これでは本末転倒である。だが、石井監督は平気だ。
本来ならここで突き詰められるはずの、なぜ、彼女は自分の人生の半分くらいしか生きてないこんなちんけな少年を連れて駆け落ちするのか、とかは故意に描かれない。2人の間にせっぱ詰まった感情があり、気持ちを抑えられなかったとか、そんなのはまるでない。こいつらほんとうに駆け落ちなのか、と突っ込みを入れたくなるくらいに、ただの姉と弟で、なまめかしいものは一切ない。下世話な話だが、きっとセックスもしていないのではないか。というか、そういうことにはまるで興味ないように見せる。でも、そうではないことは明白で、わざとそこを避けている。きれいごとを描きたいからではない。そんなことはあんたたちにはどうでもいいことではないか、と言われているように見える。だから、2人はちゃんとやることはしている(下品だなぁ)のかもしれない。でも、観客の下世話な興味を満足させることもなく、映画はどんどん横道へと逸れて行く。
石井裕也の興味はこの2人が普段何をしているのか、ではなく、それぞれが普段何をしているのか、である。だから別々の2人を描くばかりだ。図書館で野球少年と友だちになり、彼のことをプロ野球選手だと思い込んだその少年のために、野球選手になりきる。そんなうそ臭い話で引っ張る。彼女の方はバイト先のカラオケ屋の話でつなぐ。まるでやる気のない人である彼女に対して他のバイトの人たちからパッシングを受ける。まぁ、当然だろう。このそれぞれのエピソードで映画を引っ張っていくのだが、本題であるはずの2人の物語をもっとちゃんと見せてもらいたい。けっこうストレスが溜まる映画である。もどかしい。
改めて言う。これは彼女が年下の教え子に溺れたとか、そんな3面記事的な話ではない。彼女は至って冷静である。彼が可哀想だから、というのが正直なところだろうが、それすら定かではない。なんかちょっと違う気もする。両親が死んで、自分も自殺しようとしていた彼をたまたま助けてしまって、そこから腐れ縁のように関わることになったのだが、それでも駆け落ちはない。2人は愛し合っていたなんてふうにはとても見えない。先にも書いたが歳の離れた姉と弟にしかみえない。性的なにおいは一切しない。キスシーンすらないのに、同棲時代である。(言うこと古いなぁ)2人のお互いに対する心情には出来るだけ触れないようにしているみたいだ。それを面白いととるか、つまらないととるか、そこが評価の分かれ目だろう。
17歳にもなって、小学生並の男の子。34歳にもなって、明日のことくらいしか、考えない女。そんな2人のままごとライフが90分綴られていく。とても嘘くさいけど、なんか、さわやか。このありえないことを見ながらこの不思議の国のお話を僕はとても心地よく受け止めた。
本来ならここで突き詰められるはずの、なぜ、彼女は自分の人生の半分くらいしか生きてないこんなちんけな少年を連れて駆け落ちするのか、とかは故意に描かれない。2人の間にせっぱ詰まった感情があり、気持ちを抑えられなかったとか、そんなのはまるでない。こいつらほんとうに駆け落ちなのか、と突っ込みを入れたくなるくらいに、ただの姉と弟で、なまめかしいものは一切ない。下世話な話だが、きっとセックスもしていないのではないか。というか、そういうことにはまるで興味ないように見せる。でも、そうではないことは明白で、わざとそこを避けている。きれいごとを描きたいからではない。そんなことはあんたたちにはどうでもいいことではないか、と言われているように見える。だから、2人はちゃんとやることはしている(下品だなぁ)のかもしれない。でも、観客の下世話な興味を満足させることもなく、映画はどんどん横道へと逸れて行く。
石井裕也の興味はこの2人が普段何をしているのか、ではなく、それぞれが普段何をしているのか、である。だから別々の2人を描くばかりだ。図書館で野球少年と友だちになり、彼のことをプロ野球選手だと思い込んだその少年のために、野球選手になりきる。そんなうそ臭い話で引っ張る。彼女の方はバイト先のカラオケ屋の話でつなぐ。まるでやる気のない人である彼女に対して他のバイトの人たちからパッシングを受ける。まぁ、当然だろう。このそれぞれのエピソードで映画を引っ張っていくのだが、本題であるはずの2人の物語をもっとちゃんと見せてもらいたい。けっこうストレスが溜まる映画である。もどかしい。
改めて言う。これは彼女が年下の教え子に溺れたとか、そんな3面記事的な話ではない。彼女は至って冷静である。彼が可哀想だから、というのが正直なところだろうが、それすら定かではない。なんかちょっと違う気もする。両親が死んで、自分も自殺しようとしていた彼をたまたま助けてしまって、そこから腐れ縁のように関わることになったのだが、それでも駆け落ちはない。2人は愛し合っていたなんてふうにはとても見えない。先にも書いたが歳の離れた姉と弟にしかみえない。性的なにおいは一切しない。キスシーンすらないのに、同棲時代である。(言うこと古いなぁ)2人のお互いに対する心情には出来るだけ触れないようにしているみたいだ。それを面白いととるか、つまらないととるか、そこが評価の分かれ目だろう。
17歳にもなって、小学生並の男の子。34歳にもなって、明日のことくらいしか、考えない女。そんな2人のままごとライフが90分綴られていく。とても嘘くさいけど、なんか、さわやか。このありえないことを見ながらこの不思議の国のお話を僕はとても心地よく受け止めた。