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映画・演劇のレビュー

ハレンチキャラメル『我に恋する用意あり!』

2011-07-05 22:56:54 | 演劇
ハレンチキャラメル・レーベルでの新作である。神原さんは今年も精力的だ。今年3月、浮狼舎としての久々の新作を上演したのに続き、夏の定番となりつつあるハレンチキャラメルである。いつもと同じようなお話だが、きちんとまとめてあるから、安心して見られる。お決まりのストーリーをいろんな形に変化させて、見せてくれる。だが、ただのルーティーンワークではなく、これはリバースだ。山田洋次の寅さんシリーズのように同じ話を何度見せられても新鮮なものってある。神原さんの作品もそんな感じだ。主人公は違うし、設定も微妙に変わるがお話の核心は同じだし、それより何より展開のさせ方が同じ。

今回のネタは「人魚の恋」。でも、例によって時空を超えての尽きせぬ想いが描かれるのだから、これも特別目新しい題材にはならない。何度も何度も生まれ変わっては出会い愛し合う恋人たち。14歳のまま歳を取らない女と、彼女をずっと愛し続ける男。男はどんどん老いていく。やがて死ぬ。だが女は若いままで生き続ける。これを報われない恋と思うか、それとも永遠の愛と思うかは受け止めかたの問題で、どう取ろうと構わない。先日見た『僕のエリ 200歳の少女』も基本はこれと同じ話だった。

 だが、神原さんはこれをあの映画のように小さな話にはせず、いつも通りの自分の文体の中で作る。切ないラブストーリーではなく、豪快な大河ドラマとして処理する。主人公は一組の男女に絞り込むのではなく、2人の人魚が、それぞれ別の場所で生き、やがて出会うまでの200年の話にもなっている。彼女たちが運命の糸に導かれて、出会うのだが、という作りだ。この2人を中心にして、例によって様々な男女が入り乱れて、それぞれの事情があり、そんなこんなが、絡み合い、殺し合い、果てていく姿をお約束通りに見せていき、よどみがない。いつもみんな死んでいくのは定番だ。

 ひとつの定型を繰り返しながら、飽きさせることなく見せる技術はさすがである。神原さんにはずっとこのまま「神原ワールド」を続けてもらいたい。きっちり我が道を行く潔さはこれはこれで心地いい。

 初日は大入り満員でギリギリに行ったから2時間の立ち見となった。劇場の壁にもたれて立ったり座ったりしながら見たのだが、それはそれで楽しかった。人の頭越しに舞台を垣間見るなんて、最近ではめったにない体験で、たまには悪くないなんて思う。こういう芝居だからぎっしりつまった客席にむかって役者がテンションをあげてくれると、芝居もどんどん面白くなるのだ。在りし日の大衆演劇ってこんな感じだったのだろう。たぶん。


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