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映画・演劇のレビュー

『スラムドッグ$ミリオネア』

2009-03-25 22:34:40 | 映画
 今年度アカデミー賞8部門制覇の話題作なのだが、正直言ってこれでは納得がいかない。ファンタジー映画だとしてももう少しきちんとした緊張感が欲しい。だいたいラスト一問であんな簡単な問題を出したりするのか?リアリティー無さ過ぎ。
TVを見ている視聴者がみんな答えを知ってるような問題をあそこで出したりすれば、視聴者が怒るで。だいたい2000万ルピーの問題なのである。いいかげんにして欲しい。

 この映画自体がすべて夢物語なのだから、と言われれば納得しないわけでもないが、ここまで過酷な現実をベースにしたファンタジーって如何なものだろうか。映画は一応リアルなタッチで描いてるし。ならば、あのラストはないだろう。すべてが終わった後の、エピローグとして2人の再会シーンが用意されているが、あそこだけが現実で、クイズ・ミリオネア出場は夢だった、だなんていうのもなんだかなぁ、と思う。いっそのことすべて夢のお話にでもするか?

 まぁおもしろかったのならそれでもいいが、でも、とても良く出来た映画だからこそ、あまりに曖昧でどうとでも解釈可能なあのラストには納得がいかない。すべてが偶然によって組み立てられている。その積み重ねがあのラストに繋がる。これはただのエンタメ映画なのだ。甘いラブストーリーでしかないのだ。社会派では断じてない。ムンバイのスラムで生活する子供たちの過酷な現実をスパイスに利用しただけの単純エンタテインメントでしかない。それなら納得がいく。

 だが、そうは思えないのも事実で、だいたいそこまで開き直った映画には見えない。ダニー・ボイル監督がそんな映画を作るとは思えないし。ハッピーエンドはいいと思うし、インド映画のダンスシーンを最後に用意したのも楽しい。だが、いろんな意味でわだかまりが残る映画だ。これですっきりする人はいないだろう。(もしそんな人がいたなら、それはよほど鈍感な人だけだ。)

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