これはエビス堂大交響楽団の頃の作品なのだろう。とても懐かしい岡本邦彦作品だ。昔、このスピード感が凄いと思った。目まぐるしい展開に振り落とされそうになる。オカモト國ヒコは20年前の作品をあの頃のやり方のままで復活させる。だが、それは今見ても新鮮だ。全く古びないだけではなく、今の芝居になっている。ただ、今の時代にこのスピードは驚きにはならない。ということは、今後は更なる仕掛けが必要になる。
華麗なアクションシーンを満載して、2時間10分を駆け抜けていく。短いシーンを連打して怒濤の展開で見せていく彼の作劇は健在だ。その展開の速さ、アクションの連続。スリリングで目まぐるしいドラマ。エンタメなのだけど、叙情的なドラマは充分泣かせてくれる。文句なしの力作である。
150年の歳月を経て再会する男女の恋物語が、宇宙戦争に至る壮大なスケールのドラマを背景にして描かれていく。確かに感動的な芝居にはなっているけど、見終えた時に「面白かった!」という単純な感想しか残らないのは、少し物足りない。このお話を通して、「何か」が伝わればいい。その「何か」が欲しい。
この目の眩むようなドラマを堪能しながらも、このスタイルが新作でも成り立つのかも気になった。その時、今の彼の視点からこの世界はどう映るのかが知りたい。それが先に書いた「何か」であればいい。お話を通して何を描こうとするのか。テーマがない、とかいうわけではないけど、このお話を通して訴えかけたかったものはなんだったのか。楽しいだけではもったいない。
テノヒラサイズでやってきたことを経て、どんな進化が彼の中にあるのか。次回の新作が今から待ち遠しい。