習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『それでも恋するバルセロナ』

2010-02-04 22:55:31 | 映画
 ウディ・アレンの最新作だが、劇場で見るまでもない。たわいない映画だ。こんな観光映画をウディ・アレンが作る時代が来た、だなんて、なんだか嘆かわしい。ニューヨークを離れても映画が作れるウディ・アレンは、成長したというべきなんでしょうか。僕にはもう無残としか言いようがない、と思うのですが。確かに『マッチ・ポイント』はつまらなくはなかった。だが、わざわざ彼が撮らなくてもいいんじゃないか、と思った。今回も同じだ。彼は本当に撮りたい映画を撮ってるのか? なんか、そうは思えないのだが。

 これはこのヤケクソのような日本語タイトルそのままの映画で、なんだか投げやりな作品だ。うるさいナレーションも含めてまるで情緒不安定。無理してどうでもいい映画なんか作らなくてもいいんじゃないか。ペネロペ・クルスはこの映画でアカデミー賞の助演女優賞を取ったらしいから、この映画はそれなりの評価を得ているのかもしれないが、僕は趣味ではない。

 バルセロナの街を主人公にしたような映画を作りたかったのだろう。その目的は確かに達成されている。ガウディーを中心にした観光の名所がふんだんに登場し、この映画を見たなら、きっと自分も行きたいと思うことだろう。これは良くできた観光映画だ。当然映画だから、出逢いがあり、恋が始まる。相手がセクシーで危険な香りのする芸術家の男性(『ノーカントリー』のあの変態殺人鬼ハビエル・バルデム)であるのも、いかにも映画らしくてよい。主人公は女の子2人。彼女たちは旅の開放感から、自由な雰囲気を楽しもうとする。2人のキャラクターが対照的なのも、いかにも、なパターンだ。紹介文にはこんなふうに書いてある。

 恋愛保守的なビッキー(レベッカ・ホール)と恋に積極的なクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)が、ひとりの男フアン・アントニオ(ハビエル・バルデム)を巡って繰り広げるラブロマンス。そこへ男の元妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)も絡んできて、それぞれの恋は思わぬ方向へ……。

 これがウディ・アレン監督作品でなければ、絶対見ないだろう。なぜはがこんな映画を撮る気になったのだろうか。3角関係がねじれてきて、意外な方向に、というお話自体は悪くはない。軽いタッチなのも、いいだろう。だが、僕にはそれだけの映画にしか見えなかった。それで充分ではないか、と言われたなら返す言葉はない。だが仮にも(いや、仮ではないが)ウディ・アレンである。なんでこんなに箸にも棒にもかからない当たり障りのない映画を作るのだ? 本人がバカンスを楽しむのは悪いことではないが、バカンスのような映画を見せられる身にもなって貰いたい、と思うのは僕だけか。

 こういうつまらない恋愛映画を今更濫造して、何がしたいんだろうか。いくつになっても恋愛現役老人ウディ・アレンは今日もこんなくだらないことばかり考えて人生を生きてる。まぁ適当に頑張って下さい。
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