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映画・演劇のレビュー

アクサル『ワイルド・アダプター』

2008-03-10 22:06:32 | 演劇
 シーン、シーンをコラージュさせて早いテンポで展開していく。役者たちが次々に役を変えていき、場所も状況もめまぐるしい勢いで転換していく。厚生年金会館芸術ホールでの公演なので、マイクを使用しており、誰が喋っているのかもよくわからない。話している役者を探すのも、一苦労。でも、見つけた頃には次のシーンになっていることも。

 男だけの集団(それが売りでもある)なのだが、女の役もたくさんあり、男が女を演じることもある。それがかなりの違和感だ。様々な役をこなすため、抽象的な衣装を纏っていることもあり、役の区別も付きにくい。作者のねらった部分はことごとく作品の感情移入を拒絶する。前半、しばらくの間はこのスタイルについていけなくて困った。ようやくあきらめて慣れた頃には前半終了。15分の休憩を挟んで後半に。2部構成になっている。

 だが、2部にする必要はまるでない。1時間50分の芝居に途中休憩が必要とは思わない。反対に、この休憩によって芝居のテンポが殺がれた。後半はこの芝居のやり方がようやくわかったので、すんなり見れたが、見終えた後もなんだか違和感が残る。

 これでは原作漫画のダイジェストでしかないのではないか。コンテンポラリー・ダンスを全面的に援用した構成は斬新だが、ストーリーをただの書割にしてしまっている。これではこの物語世界に観客を巻き込むことは出来ない。スタイルが先行して、ドラマに奥行きが出来てない。

 人間を獣人と化すドラッグが蔓延する世界。そのドラッグを大量に使用する新興宗教団体の本部に潜入して、彼らのたくらみを暴くなんていう単純なお話なのだが、こういういかのもマンガ的な世界をただなぞっていくだけで、それ以上のものはまるで描かれないのも気になる。このストーリーを通して自分たちなりのメッセージくらいは欲しい。面白い試みだし、これが上手く機能したならいいのだが、残念である。

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