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映画・演劇のレビュー

『街角的小王子』

2012-05-24 19:57:32 | 映画
 この小さな映画は、とてもかわいい。75分という上映時間も凄い。劇場用映画としては破格だろう。最近の台湾映画はこういう映画が人気なのか。小さければ小さいほどいい。ささやかであれば、ささやかであるほど、いい。そんな映画だ。2010年9月に台湾で公開されたリン・シャオチュン監督のデビュー作。

 パステルカラーの青春映画。おとなしい女の子が、友だちと2人で、捨て猫を見つけるシーンから始まる。その猫を飼うことにする。偶然、幼い頃別れた男の子と、再会する。10年ぶり。2人はお互い大学生になっている。しかも、同じ大学。彼はバンドをしている。彼に恋心を寄せる。でも、彼には、彼のことを好きだという女の子がいて、さらには、そのバンドのボーカルの男の子を友だちが好きになって、とか。ありふれたどこにでもあるような恋愛映画だ。それを猫の視点から描くのか、と思ったがそうでもない。猫はただの彩りでしかない。明確なキャラクターの色分け、予定調和のお話。なんら新機軸はない。古典的ともいうべき作品だ。でも、そのわかりやすい展開が心地よい。さわやかな春風のような映画なのだ。しかも、彼と彼女が、幼い日に別れた真相が明らかになる部分は、胸きゅんのストーリーが用意されてある。

 映画は夢の装置だ。スクリーンを見ながら、現実ではない時間を浮遊することが出来る。そんな夢見る時間を提示できるのが、本当の映画だ。現実では満たされない想いが、ここには溢れる。そんな映画がいい映画だと思う。そういう意味でこの映画はよく出来た映画のお手本のような作品だと言える。あまりに教科書どおりで、気恥ずかしいけど、たまには、そんな映画を見るのもいいではないか。


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