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映画・演劇のレビュー

『あの頃、君を追いかけた』

2012-07-22 20:19:43 | 映画
 昨年、台湾だけでなく、香港でも記録的大ヒットを飛ばした青春映画なのだが、日本ではいつまでたっても公開されない。本国でDVDになったので、買ってきてもらって、ようやく見ることが出来た。かなり期待したのだが、正直言うと少し肩透かしを食らった気分だ。この手の軽い青春映画が、なぜ、ここまで熱狂的に受け入れられたのか、よくわからない。『海角7号』のときも、悪い映画ではないけど、そこまで熱狂するか、と首を傾げたが、今回はあの時以上だ。不思議でならない。

 90年代を舞台にしたセンチメンタルで、でも、とてもさわやかな、おバカで、ありきたりな青春グラフィティー。5人組の男の子たちと、彼らのマドンナ的存在の女の子。その友だち。計7人の男女のひと夏の物語からスタートして、10年に及ぶ日々が描かれていく。こんなタイプの映画なら今までも何百本も見てきた。だから、これが特別だなんて思わない。かけがえのない青春を描く秀作は枚挙に暇がない。

 なのに、これだけがここまで大ヒットした。その理由がわからない。だが、そんなものかもしれない。理由なんかない。たまたまタイミングがよかったのだろう。同じような青春映画で、はるかにレベルが高いトム・リンの『九月に降る風』の足元にも及ばないし、もちろん世界映画史上最高の1本であるホウ・シャオシェンの『恋恋風塵』とは比較するまでもない。もし、比較するのなら鈴木則文の『パンツの穴』だろう。あのさわやかで、ちょっとエッチなバカ映画は、これとよく似ている。要するにそういうことなのだ。敷居がとても低いのに、入ったらとても心地よくて、まるで自分たちの青春時代を思わせる、どこにでもあるありきたりで、でも、かけがえのないドラマ。それがこの映画なのである。主人公たちが、美男美女ではないのもいい。普通の男女が、普通に恋をする。ヒロインはちょっとあの頃の菊池桃子に似ている。




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