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映画・演劇のレビュー

『さよならドビュッシー』

2013-10-06 22:48:35 | 映画
これはダメだ。上映時間は2時間11分もの大作映画なのだが、まるで緊張感がない。利重剛はウェルメイドな娯楽映画を作ろうとしたのかもしれないが、それならもっとテンポよくするべきだ。上映時間は100分程度にまとめるべきだろう。だいたいこの素材で2時間超はない。ピアノのシーンが長いのだが、そこにまるで緊張感がない。ミステリーなのだが、ミステリーとしての要素が希薄だ。

これでは軽いB級映画ではないか。それならそれで、橋本愛がかわいくて、単純な謎解きが用意されてある、それだけでいい。原作は「このミステリーがすごい」大賞受賞作品ということだが、こんなくらいのお話で大賞受賞って、ないよな、と思う。(もちろん、映画と小説は違うから原作はまるで違う話で、本当にすごいのかもしれないけど。)きっと原作はもっとミステリーに比重が置かれてあるのだろう。それを脚色がバランスを青春映画寄りに設定した。その選択は決して間違ってはいない。だが、それならそれでもう少し徹底すべきだった。

要するに 謎解きよりも、青春映画として、ちゃんとヒロインの気持ちを描くほうが大切だったのではないか。事故により、自分を失った彼女がピアノを通して、もう一度自分を取り戻していくまでのラブストーリーでよかったのではないか。彼女を支える先生が、実は探偵で彼が事件を解決していくなんていうどうでもいい設定はいらない。(でも、原作はそうなっているのだから、仕方ないかぁ。)これはピアニスト探偵岬洋介シリーズの第1作ということらしい。なんだかなぁ、である。

 あれもこれもと欲張り過ぎて、中途半端でしかも、冗長な映画になってしまった。昔のアイドル映画ならこういう失敗はしなかったのだが、今の時代アイドル映画なんて言うジャンルはないから、作り手は苦慮する。作品の立ち位置が定まらないのだ。だからこれはただ橋本愛だけのための映画であるべきだったのである。


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