上下巻で1100ページ、原稿用紙にして2400枚に及ぶ超大作である。『永遠の0』で注目を浴び、その後さまざまな作品に挑戦した彼の渾身の書き下ろし力作がこの作品らしい。僕は彼の『海賊とよばれた男』を読んで、感心した新参者だから、(これが彼の作品はまだ3作目)この作品の彼の作品の流れの中での位置付けはよくわからないけど、この『海賊』並みの分量を持つ大作に期待した。
だが、300ページくらい読んだところで、なんだかいつまでたっても面白くならないから、さすがにイライラしてきた。つまらない小説をいつもでも読んでいるのは時間のムダ。やめてもよかったのだが、ここまで読んで、投げ出すのもなんだか悔しいから、ついつい読み続けてしまった。
主人公が大阪を離れたところから、どんどんつまらなさが加速する。正直言うと、根室のところからは、流し読みした。ただ、終盤、バンコクに行ったところからは、なかなかおもしろく、結局読破してしまったけど。
ただ、読み終えて感じたのは、こういう自伝小説はひとりよがりになる可能性が高いなぁ、ということだ。ヒロイズムとまではいかないけど、でも、かなり自分に酔ってしまっていて、記述に客観性がない。物語としてのおもしろさもない。テンポも悪い。『海賊』があんなにも面白かったのは、実在する人物に取材して、彼の生きざまを客観的に追えたからだろう。今回は、(と言うか、これのほうが古い作品なのだが)自分の話をモデルにしたため、フィクション部分も含めて、客観性がない。これだけの長編をものにする力量は買うけど、さすがにまだ若いのに(50代だが)こういう自伝に挑戦するのは荷が重かったようだ。
それにしても、成長しない男だ。何度も何度も同じ失敗を繰り返す。でも、自分のバカに気付かない。確かにこの男はキャラクターとしてはおもしろい。30年間もこういうバカを繰り返して、でも、また同じ失敗をする。やけくそのような人生の軌跡。それをクソ丁寧に描いていく。バカは死ななきゃ治らない、というが死んでも無理。そう思わせる。ただ、こんなにも、バカをする人生に延々と付き合う、自分のバカさにも驚く。後先考えない彼の直情型の生きざまには誰も共感はしないだろうけど、こんな生き方もあると、笑ってしまえれる。
僕とほぼ同じ時間を生きているから、なんだか懐かしい。僕より4年前に生まれた彼の軌跡は、僕がこれまでたどってきた歴史と重ね合わせることで、まるでもうひとつの自分の人生をたどるような気分にさせられた。それもまた、これを途中で辞められなかった理由かもしれない。読みながら、自分のあの頃と重ね合わせて、この主人公の近くでいた彼より少し若い自分を思う。彼ほどバカではないけど、僕も、そして、きっと、あの頃を生きた「すべての人たち」も、きっと大なり小なり同じようにバカだったのだ。
だが、300ページくらい読んだところで、なんだかいつまでたっても面白くならないから、さすがにイライラしてきた。つまらない小説をいつもでも読んでいるのは時間のムダ。やめてもよかったのだが、ここまで読んで、投げ出すのもなんだか悔しいから、ついつい読み続けてしまった。
主人公が大阪を離れたところから、どんどんつまらなさが加速する。正直言うと、根室のところからは、流し読みした。ただ、終盤、バンコクに行ったところからは、なかなかおもしろく、結局読破してしまったけど。
ただ、読み終えて感じたのは、こういう自伝小説はひとりよがりになる可能性が高いなぁ、ということだ。ヒロイズムとまではいかないけど、でも、かなり自分に酔ってしまっていて、記述に客観性がない。物語としてのおもしろさもない。テンポも悪い。『海賊』があんなにも面白かったのは、実在する人物に取材して、彼の生きざまを客観的に追えたからだろう。今回は、(と言うか、これのほうが古い作品なのだが)自分の話をモデルにしたため、フィクション部分も含めて、客観性がない。これだけの長編をものにする力量は買うけど、さすがにまだ若いのに(50代だが)こういう自伝に挑戦するのは荷が重かったようだ。
それにしても、成長しない男だ。何度も何度も同じ失敗を繰り返す。でも、自分のバカに気付かない。確かにこの男はキャラクターとしてはおもしろい。30年間もこういうバカを繰り返して、でも、また同じ失敗をする。やけくそのような人生の軌跡。それをクソ丁寧に描いていく。バカは死ななきゃ治らない、というが死んでも無理。そう思わせる。ただ、こんなにも、バカをする人生に延々と付き合う、自分のバカさにも驚く。後先考えない彼の直情型の生きざまには誰も共感はしないだろうけど、こんな生き方もあると、笑ってしまえれる。
僕とほぼ同じ時間を生きているから、なんだか懐かしい。僕より4年前に生まれた彼の軌跡は、僕がこれまでたどってきた歴史と重ね合わせることで、まるでもうひとつの自分の人生をたどるような気分にさせられた。それもまた、これを途中で辞められなかった理由かもしれない。読みながら、自分のあの頃と重ね合わせて、この主人公の近くでいた彼より少し若い自分を思う。彼ほどバカではないけど、僕も、そして、きっと、あの頃を生きた「すべての人たち」も、きっと大なり小なり同じようにバカだったのだ。