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映画・演劇のレビュー

大阪府高等学校演劇連盟『美しきものの伝説』

2011-03-30 20:47:00 | 演劇
最初は2時間半と聞いていたが、休憩15分も含めて3時間以上の超大作に仕上がっていた。段取りの悪さと、いろんなオプションを取り込んだため、ボリュームアップされてしまったのだろう。上演時間の長さだけではなく問題はあるが、今、自分たちの持てる力をすべて出し切ってこの作品に挑もうとした、その心意気はしっかりと伝わってくる力作だったと思う。

演出を担当された北摂つばさ高校、吉田美彦先生の熱い思いがみんなにしっかり伝わり、それが上手い、下手なんてものを超えて、熱い塊となり、我々観客の胸にしっかりと届いてくる。客席を埋めた高校生たち、学校の先生方を含む500名(と、言っていた)の人たちは、きっと満足して帰ったのではないか。すばらしい芝居を見たからではない。それどころか、あまりに稚拙で、失笑してしまう部分も多々ある。これなら客席にいた演劇部の高校生たちの方が演技は上手いのではないか、とすら思った。だが、そんなこともどうでもいい。顧問の先生方がこんなにも一生懸命演じている、その姿を見せることが何よりも大事なのだ。

これは大阪府高等学校演劇連盟創立60周年記念教員合同公演である。普段は顧問として、生徒たちを見守る先生たちが、1年間かけて、みんなでこの1本の作品に取り組んだ、その成果だ。今回、舞台に立つ彼らの中には、演技に関してはビギナーの人も多数いたらしい。校務を終えて、あるいは休みに日に、大阪中から集まり、この芝居を作るために頑張ってきた。たとえそれが学芸会レベルのものであってもいいから、今自分たちに出来る限りのことをしようと思う、その心意気がすばらしい。20名以上の先生たちが舞台に立ち、さらには裏方も含めると、凄い数の先生たちがこの作品に関わった。その事実の重さがこの作品のすべてだ。

描かれる内容も、よく考えられてある。今回取り上げる戯曲は、40年前、高校生になった吉田先生が見て、強い影響を受けた文学座の『美しきものの伝説』である。革命を夢見た100年前の若者たちの群像劇を、今という時代にも通じるドラマと信じて見せる。

 ここに描かれるまだ若くて何ものでもない主人公たちの姿が、先生たちからのこれから大人になっていく高校生たちへのメッセージだ。それを子供たちがどう受け止めてくれたのか、とても気になる。これはとても難しい芝居である。それは演じる方にとっても、見る観客にとっても同じだ。こういう手強い作品に挑み、怯むことなく、これを今を生きる若い子供たちに見せたいと先生たちは思ったのだ。

アナーキスト大杉栄と、伊藤野枝。芝居で世界を変えようとした島村抱月と松井須磨子。この2組のカップルを中心とした大河ドラマが、その拙さ(ごめんなさい! どうしても僕は正直にこういう書き方をしてしまう)ゆえ、輝いている芝居として、甦ったことを嬉しく思う。


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1 コメント

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水を差すようですが (大橋むつお)
2011-04-06 12:08:42
今、大阪の高校演劇は衰退期に入っています。常任委員の先生たちの高齢化、連盟加盟校や、コンク-ル参加校の減少。加盟校の平均を見ても、部員数は確実に減っています。部員五名を切る演劇部がかなりあります。そういう演劇部への手当、対策をこそ講じるべきで、職員劇など、気楽にやっている状況ではないと思います。舞台に立った先生方は、五年もすれば定年でいなくなります。展望が見えません。
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