習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『セッション』

2015-06-18 22:01:27 | 映画

公開からもう2カ月になるのに、まだ堂々ロングラン公開中である。しかも、全国TOHOシネマズでのロードショーだ。この規模の作品でそういうことは今までありえなかった。だいたい今時、2か月のロードショーなんてハリウッドの大作映画でも不可能だ。そんな偉業をこんな地味なノー・スター映画が成し遂げている。諸事情があって先日ようやく満を持して見たのだが、噂に違わぬ衝撃的な映画だった。興奮した。ありえない、と思った。

だって、これは『巨人の星』なのである! 今時こんなスポコン映画があるのか? というか、音楽映画なのだけど。いや、音楽というスポーツ? というか、星一徹なんですけど。あの主人公の音楽教師。あのこわいおっさんに見出された青年が、なんだかわけのわからない特訓を受けて、すごいミュージシャンになる、とか。そんな感じ。音楽学校のお話で、主人公の星ヒューマは、大リーグボール養成ギブスをつけられて、試練の日々、しかも、なんかわからないけど、星一徹は、途中から、勝手にライバルの指導をして、彼をさらに苦しめる。苛められる。まぁ、それもこれも彼のための試練なんだけど。それにしても、なんじゃ、これ、の世界だ。もう、交通事故で血まみれになっているのに、コンクールの会場にやってきて、舞台に上がりドラムを叩くシーンなんか、ありえないよ、それ、と思う。

しかも、何がすごいって、最後の一発大逆転。この映画の飛雄馬は、一徹よりも腹黒い。楽譜がない、という苛めここに極まるというシーンから、ラストまで、啞然として、そんなばかな、と思うしかない。圧倒される。もう時効だからネタばれしても、いいだろうけど、(というか、もうみんな僕より先に見ているだろうから、わざわざ書かないけど、)そんなぁ、と思った。

こういうとんでもない映画だから、本来ならミニシアターで地味に公開されそうなのにちゃんとロードショー公開されこれだけのヒットとなったのだろう。昔デビット・リンチの『エレファントマン』がヒットしたような感じか。要するにアート映画ではなく、ゲテモノ映画と理解されたのだ。でも、こんな風に書いても、それでも、この映画を貶めることにはならない。これはほんとに凄いのだ。


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