古典を題材にして、それを現代に移しかえるのではなく、古典の世界をそのまま、自分たちの表現として上演する。こういう形の芝居って、ありそうでない。この自由さが、この独自の作品世界を形作る。もともと、浄瑠璃も歌舞伎も庶民のもので、大層な古典芸能なんかじゃない。(最初から「古典」なんてありえないしね)
オリジナルの世界観をそのまま、舞台に再現して、今のテイストでリニューアルして見せていく。こんなベタな話、現代劇ではできまい。「よう、待ってました!」は歌舞伎のお約束の中でしかない。でも、堅苦しい歌舞伎の伝統とか、そんなのには、縛られたくはないし。
ということで、こういうスタイルなのである。この世界に嵌ったなら、とても心地の良い芝居を楽しめるはずだ。お約束通りの展開をちゃんと満喫し、どんどん感情移入しよう。これはそういう芝居なのだ。
作、主演の松本大志郎さんがとても幸せそうに演じている。こんな伸び伸びした芝居を見るのは久しぶりだ。心から楽しんでいる。そんな彼の気持ちが伝わってくる。それは観客である僕たちに、だけではなく、まず、役者たちに伝わるのだ。舞台上の周囲のみんなも彼を立てるためサポートに回るのではなく、同じようにこの世界を楽しむ。大見え切った芝居でいいのだ。実に楽しそうに演じるから、結果的に僕たちも楽しい。
だから、このお話自身がどうこうというのではないのは自明のことだろう。2時間10分、みんなが幸せな時間を過ごせたならそれだけでいい。娯楽の王道をいく。それでいい。
今後とも、よろしくお願い致します。