15歳の少女と少年が出会い、傷つけあいながら過ごす日々が描かれる。これは痛ましい映画だ。とても微妙なものを掬い上げようとする。もどかしいけど、伝わりきらない部分も多々ある。何を描こうとしたのか、それすら明確に見えてこない部分もある。だから、見た後、僕の後ろに座っていた女子高生の二人組が「難しすぎてわからなかったわぁ」と話していたのにも納得する。だが、これを表現の拙さ、ということで納得させることはできない。
とても刺激的な見せ方をする。24歳の女性監督の手になるこの映画は傷つきやすい少年少女の内面をわからないまま提示した。わかりやすさなんか拒否する映画だ。ここには彼ら自身にすらわかっていない衝動が描かれているのだから。自分で自分の心を持て余す。だから、不安でならない。でも、それを覆い隠す。それは強がりではない。
山戸結希監督のメジャーデビュー作である。実にとんがった映画だ。それを若さの所作とは言わない。彼女の内面にある(というか、この主人公のふたりの)混沌をそのまま吐き出すような映画である。
田舎町を舞台にして、(和歌山の熊野だ)東京からそこにやってきた少女と、この村の長での家に生まれた少年。彼らが偶然出会い、心惹かれていく姿が描かれる。中学3年生という微妙な設定がポイントだ。子供ではないけど、まだ大人でもない。体は十分に成長している。精神的にも大人びている。しかも彼女は東京でモデルの仕事をしてきた。彼はこの村でわがまま放題してきた。だが、いかんせんまだ中学生だ。
映画はそんな彼らの日々を淡々と描いていくのだが、その中心にはふたつの夏の火祭りのシーンが用意される。そこで起きる事件が彼らを変えていく。最初の夏はとんでもない出来事を描く。リアルな現実だ。彼女をレイプしようとするファンの行為によって、それまで保ってきた少年と彼女との関係が崩れる。高校生になった1年後の夏。映画のクライマックスだ。ここではこれが妄想なのか、現実なのか、わからないように描く。再びあのレイプしようとした男が同じように火祭りの夜、彼女のもとを襲う。だが、それは彼女の見た妄想なのかもしれない。
最初の夏の事件の跡、ふたりの関係性が崩れる。やがて、高校生になり、ひとりひとりになった彼らの日々が描かれる。別々の場所でお互いを意識しながら過ごす。だが、このままではいられない。彼女は再びモデルとして東京に戻ることにする。彼を想う気持ちに拮抗するものを手に入れるために。この村で過ごした1年間(ここは空白)を経て、彼女はここを去る。
転校から始まり、ひとつめの夏。そこまでが、第1章。その後、ばらばらになるふたりを描く2章。その間に火祭りのシーンが象徴的に描かれる。「熊野」で「火祭り」って、まるで中上健次の小説のようだ。この映画は少女コミックを原作としているのだけど、従来のその手の映画とはまるで肌合いを異にする。
お決まりの展開なのだけど、予定調和にはならない。このおさまりの悪さが、この作品の魅力だ。あの終わり方は、旅立ちを描く感動的なラストのように見えて、それだけではない。
とても刺激的な見せ方をする。24歳の女性監督の手になるこの映画は傷つきやすい少年少女の内面をわからないまま提示した。わかりやすさなんか拒否する映画だ。ここには彼ら自身にすらわかっていない衝動が描かれているのだから。自分で自分の心を持て余す。だから、不安でならない。でも、それを覆い隠す。それは強がりではない。
山戸結希監督のメジャーデビュー作である。実にとんがった映画だ。それを若さの所作とは言わない。彼女の内面にある(というか、この主人公のふたりの)混沌をそのまま吐き出すような映画である。
田舎町を舞台にして、(和歌山の熊野だ)東京からそこにやってきた少女と、この村の長での家に生まれた少年。彼らが偶然出会い、心惹かれていく姿が描かれる。中学3年生という微妙な設定がポイントだ。子供ではないけど、まだ大人でもない。体は十分に成長している。精神的にも大人びている。しかも彼女は東京でモデルの仕事をしてきた。彼はこの村でわがまま放題してきた。だが、いかんせんまだ中学生だ。
映画はそんな彼らの日々を淡々と描いていくのだが、その中心にはふたつの夏の火祭りのシーンが用意される。そこで起きる事件が彼らを変えていく。最初の夏はとんでもない出来事を描く。リアルな現実だ。彼女をレイプしようとするファンの行為によって、それまで保ってきた少年と彼女との関係が崩れる。高校生になった1年後の夏。映画のクライマックスだ。ここではこれが妄想なのか、現実なのか、わからないように描く。再びあのレイプしようとした男が同じように火祭りの夜、彼女のもとを襲う。だが、それは彼女の見た妄想なのかもしれない。
最初の夏の事件の跡、ふたりの関係性が崩れる。やがて、高校生になり、ひとりひとりになった彼らの日々が描かれる。別々の場所でお互いを意識しながら過ごす。だが、このままではいられない。彼女は再びモデルとして東京に戻ることにする。彼を想う気持ちに拮抗するものを手に入れるために。この村で過ごした1年間(ここは空白)を経て、彼女はここを去る。
転校から始まり、ひとつめの夏。そこまでが、第1章。その後、ばらばらになるふたりを描く2章。その間に火祭りのシーンが象徴的に描かれる。「熊野」で「火祭り」って、まるで中上健次の小説のようだ。この映画は少女コミックを原作としているのだけど、従来のその手の映画とはまるで肌合いを異にする。
お決まりの展開なのだけど、予定調和にはならない。このおさまりの悪さが、この作品の魅力だ。あの終わり方は、旅立ちを描く感動的なラストのように見えて、それだけではない。