今週は『百花』に続いて、さらに死を扱う小説3連発となった。そんな3冊の中ではこれが一番タッチは軽いけど、それでも認知症の母親への対応とか、それなりにリアル。身につまされる。この手の小説が最近多いのは、それが今では誰もが向き合う現実だからだろう。それとどういうふうに対応すべきなのかを様々な小説が提示してくれる。
これは最初はファンタジーとして読み始めたのだが、設定自体はありえないけど、もしそれがあり得たなら、という展開で、その後は実にリアル。だから後半になるとお話がどんどん重くなる。短編連作スタイル(6話からなる)だが、ちゃんとお話はつながっていて長編作品仕様だ。初老夫婦の死を描く2話までがいい。お話のまとめに入る5話からは明らかにパワーダウンする。
失踪者を探し、彼らの死の理由をたどる桂望実『残された人が編む物語』も5話からなる連作長編。行方不明者捜索協会で働く女性西山静香が、失踪者を探し出す。依頼者が主人公で、まず彼らの視点からドラマが綴られる。やがて彼らが依頼する失踪者たち(弟、友人、夫、社長)の死に至るドラマ(4話のいずれもが死んでいる)がそこに添えられることになる。最終話だけ、静香のお話。そこでは彼女の幼い日の母親の失踪が描かれる。
小川洋子『小箱』は、死んでしまった子供たちへの鎮魂歌。世界中から子供たちが死んでしまった後の世界。だから、あと少しでこの世界から人は消えてしまう。静かに世界の終わりを待つ時間が描かれる。なんだか重くて暗いし、明確なストーリーもなく、読みにくい作品だった。今までの彼女の小説とは少しタッチが違う気がしたけど嫌いではない。
ただ、この数日、こんな3冊を連続で読んでいると、さすがになんだか暗い気分になってしまった。だから、次は明るい小説を読もう。もちろん、お盆で、死者たちが帰ってくるタイミングに重ねたわけではなく、これもいつものことだが、たまたま、だ。この小川洋子の7年ぶりの新刊(らしい)は、2019年に出版されていたようだが、知らなかった。これの直前の作品は『ことり』だったらしい。それくらいに最近新作が滞っていたみたいだ。気が付かなかったので、驚いた。10年で2冊。最近、彼女はすごい寡作だったんだ。