このタイトルは面白い。身内を守るための行為だが、必ずしも単純ではない。それぞれの思惑が交錯して、まさかの結論に辿り着く。7年ぶりの再演である。劇団が本格的にミステリに移行した頃の作品。初演はなんと10年以上前で、だから今回は再再演。作、演出の丸尾さんにとってはこれは自家薬籠中のもの。だから安心して見ていられる。(もちろんいつもだって安心してるけど)
細部までしっかり作ってある。だけどそれはリアルというのではなく、ケレン味たっぷりで、それがあざとくはならないのも上手い。ちゃんと犯人捜しにもなっていて、休憩中(途中休憩10分を挟んで2時間20分)には犯人投票もある。ただし、犯人は誰も当たらないけど。強盗殺人事件の犯人はどうなったのか、と言っている人も客席にいた。ふむふむ。確かに。
家族にはそれぞれに動機はある。しかし、あからさまな殺意はない。では誰が当主である母親を殺したのか。これは殺人事件を、ではなく家族の確執がメインに描かれるもので必ずしもミステリーとしてはリアルではない。母親の死から始まり、刑事がやって来て、犯人捜し。それはある種のパターン。あっと驚くような展開はない。だから意外性はない。だけど、いや、だから見終えてなんだか優しい気分になる。そんな「ある種のハートウォーミング」にもなっているのがいい。案内人の山崎修一がいい雰囲気を醸し出し作品をしっかりリードしている。そして久しぶりの参戦となる遊気舎の西田政彦もしっかり劇団に(家族に)溶け込んで、劇団のみんなを引率する。