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映画・演劇のレビュー

園子温『毛深い闇』

2014-09-27 22:50:27 | その他
『恋の罪』を思い出させる。ああいう猟奇的なテイスト。読みやすい小説だ。通勤の片道で半分以上読んでしまった。そのまま、最後まで一気に読みたかったが、仕事があるから、帰りの電車までお預けだ。とても、気になる。

 エンタメだ。でも、それは彼の映画と同じで、彼の描きたいことがそのまま出ている。小難しいことなんか、どうでもいい。わかりやすいキーワードをちりばめて、自分の趣味を前面に押し出して、でも独りよがりにはならず、(だってエンタメですから)ラストまで一直線だ。ジェットコースターに乗せられて、一瞬でお化け屋敷の中に入った気分。そこは、文字通り『毛深い闇』なのだ。このなんだかいやらしくて、意味深なタイトル。あからさまなほどにありきたりな設定。これを映画化したなら、園子温なら、低予算ですぐに作れそうだ。それなのに、これをわざわざ小説として発表したのはなぜか?

 刑事の母と、高校生の娘。11歳のときの父の死。角膜移植。少女は深夜のファミレスで、仲間と無駄話をする。「悪魔画廊」の話で盛り上がる。死体をみつける。同じ名前の3人。連続殺人事件。3つの死体。

 だが、この小説、実は一筋縄ではいかない。帰りの電車で読んだ後半の意外な展開に圧倒される。ミステリだと思っていたのに、病んだ少女の内面に迫る心理小説になる。死体を見つけた後、警察に保護され、事件が明るみに出たところから、話は反対に少女の内面へと閉じていくのだ。事情聴取を終え、自宅へ戻る途中、自宅に戻ってからが描かれるのだが、彼女の記憶、過去に書いた小説のようなもの、父親の事故死のこと、それらが突如として噴出してくる。お話は、事件の究明へと収まるのではなく、とてつもない闇の中に解き放たれることとなる。

 作者の故郷(愛知県豊川市)を舞台にして、終盤、自転車が疾走する鮮烈なイメージが爆走。初期作品『自転車吐息』を思い出させる。なんだか騙された気分。


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