コメディユニット磯川家『ティーチャー！！』

　「これ、むちゃくちゃやわ」と思う。こんなアホな学校はないし、まぁ、そんなことは十分わかった上で作ってるのだが、それにしてもバカすぎ。普通ならあきれて見てられないところなのだが、なぜかこの世界に嵌まってしまう。作、演出の保木本真也さんは確信犯なんで、こういうシチュエーションを使ってどれくらい笑わせれるのかを、狙う。ここにはリアリティーとかあまり関係ない。前回の「葬式」もそうだった。あのシチュエーションをどこまで遊べるかが彼の課題なのだ。不謹慎すれすれで、でもそうはならない。だいたい彼はバカではないし、下品でもない。ただしスマートでもない。どちらかというと真面目で誠実な人だ。そんな彼の人柄が出てるから、葬式や学校をコメディーに出来るのである。

　まず設定を作って、そこをちゃんとリアルに見せる。そこを舞台にして、あり得ない話でどこまで笑わせるか、それが彼のやり方だ。だが、それがバカバカしいだけならすぐに飽きるし、興ざめだが、彼はこのありえないバカを、バカの世界でのリアリティーとして、再構築していく。こんな高校があったなら、これはこれで楽しいかもしれないと思わせる。こんなふうに学校で先生たちが毎日遊んでいたなら、きっと楽しいだろうなぁ、と思わされる。そこにリアリティーを追求するのが保木本さんのやり方だ。

　職員室は恋の講習所ではない。合コンして、おもちゃ持ってきて、はしゃぐところでは断じてない。生徒なんかどうでもよくて、バカばっかりして遊んでいる、ところでもない。だいたいこんな高校があったら問題だが、見てるとてんやわんやで楽しそうだ。職場というよりここは遊び場だ。ここに毎日やってきて、たまに授業にも行きながら、遊び呆ける。こんな職場があったら凄いだろうなぁ、と思う。僕も行きたい。

　2時間１０分はちょっと長いが、ドタバタを楽しんでいたら退屈することなくちゃんと終わる。でも、本人もパンフに書いていたが、あと20分詰めて110分くらいがこの芝居にとって適正な上演時間だろう。