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映画・演劇のレビュー

追悼  市川崑監督

2008-02-14 22:03:21 | 映画
 なんとなく市川崑監督の映画が見たくなり、「日本映画専門チャンネル」に入った。今月は市川監督の映画がたくさんオンエアーされている。まだ見たことのない作品も何本かある。それって、虫の知らせだったのか。

 一昨日『処刑の部屋』を見た。石原慎太郎原作、川口浩、若尾文子主演の作品だ。昔見たはずだが、とても新鮮だった。モノクロの昔々の映画がどうしてこんなにモダンなのか、なんて言わない。これは 市川崑監督作品なのだから当然のことなのだ。

 初めて監督の映画を見たのは、昔、朝9時30分くらいからやっていた「あなたの映画劇場」で見た『私は二歳』ではないか?あまりの面白さに驚いた。いや、もしかしたら『おとうと』のほうが先だったかも知れない。岸恵子の姉が素敵だった。それって中学3年生くらいの頃か。夏休みとか、冬休みに見ていた。

 劇場で初めて見たのは、たぶん『吾輩が猫である』が最初だ。名画劇場でしか見たことのなかった市川崑の映画を始めてリアルタイムで見た。75年のお話である。今調べたら『犬神家の一族』が76年秋だったので間違いない。これが初体験だ。なんと篠田正浩の『桜の森の満開の下』が同時上映されていた。今考えたら凄い2本立だが、当時はこんなことは日常茶飯時だった。

 昔はビデオもDVDもなかったから、映画は劇場か、TVの名画劇場で見るしかなかった。必死になって、情報誌を探し見たい映画をみつける。中学、高校の頃はそんな風にしていつも映画を見ていた。(まぁ、今も同じようなものだが)

 今考えたなら、あの頃どうしてこんなにたくさんの市川映画を見れたのか、不思議だ。僕たちの世代は、市川崑作品は『犬神家』から、という人は多いだろう。でも、僕はそれよりずっと前から市川監督の作品を追いかけていた。そんなこと自慢にもならないことだろうが、それはなんだか誇らしい。

 前述の『猫』以降、そのすべての映画を欠かすことなくすべてリアルタイムでもちろん劇場で見た。最期になった新版『犬神家』については『市川崑からの遺言状』というサブタイトルをつけてこのレビューにも書いた。なんだか、そんな予感がしたのだ。

 昨日 市川崑監督の訃報を聞き、近い将来そんな日が来るとは思っていたが、なんだか、悲しくて、泣いてしまった。今、こんなものを書きながら、何を書けばいいのか、何から書けばいいのか、よくわからない。でも、何かを書かなくてはいられない気分なのだ。 市川崑監督の存在は大きすぎて、手が付けれない。

 どの映画も大好きだ。たぶん60本くらいは見ている。でもまだ見たことがない彼の映画はたくさんある。いまからでも遅くはない。遺された彼の映画をもう一度見ようと思う。初めて見る映画に心ときめかそう。

 黒沢明が死んだときより、木下恵介のときより、ずっと、ずっとショックだ。それくらいに、僕らの中で彼の存在は大きい。いくつになっても新しい挑戦をする、子供みたいな人だった。様々な映画を作り続けた人だった。だから、『火の鳥』のような映画まで撮った。あの映画には笑った。実写とアニメを融合させた画期的な映画になるはずだったのに、出来上がった作品は凄かった。余談だが、子供の頃の尾美としのりがこの映画の主役である。もちろん『転校生』に出るずっと以前の話である。

 市川監督は失敗を怖れない。守りに入ったりはしない。そして、誰よりも尊敬できる人だった。40年近く映画を見てきて、でもずっとずっと好きだった。こんなに好きだった人はいない。さようなら。 市川崑監督。

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