『あるスキャンダルの覚え書き』

　まるで、ホラー映画みたいな安直なラストを敢えて用意したのはなぜだろう。主人公のキャラクター設定は、正直言ってかなり「痛い」はずなのに。

　この映画はこの初老の独身女教師をかなり冷めた目で捉える。この女の性癖が、こういう事件を引き起こしたように描かれる。もちろん彼女の若い女性への過剰な思い入れは、かなり危険なものもある。しかし、正直言って、一番悪いのは生徒と関係を持ってしまった女（ケイト・ブランシェット）のほうである。

　主人公のジュディ・リンチはあくまでも、善意から同僚の彼女を守ろうとしただけである。だが、善意の行動もある一線を越えてしまうと犯罪になる。それも事実だ。

　ひとりで生きてきた。もうすぐ６０歳を迎える女の中にある孤独。それが同性の年若い女性に向けられていく。自分の事を理解してくれて、お互いがお互いを深いところで支えあう関係。それを理想とする。しかし、そんな友情はなかなかうまく成立しない。彼女の孤独の方が相手に勝ることにより微妙なバランスが崩れていく。結果、彼女は自分のことしか考えていないことになる。だから、そこには友情なんてものは成立しない。