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映画・演劇のレビュー

アリス・マンロー『イラクサ』

2014-01-26 22:03:07 | その他
こんなにもどうでもいいようなことを(でも、本人たちにとっては大切なこと)こんなにもそっけなく、でも、丁寧に綴っていく。特別なドラマなんてほとんど何もないのに、読み流してしまったら、後には何も残らないほどなのに、じっくりと舐めまわすように、味わいながらゆっくりと一語一語読んでいくと、とてつもない深い味わいが湧いてくる。

人生って残酷で美しい。使用人の女と放蕩息子(死にかけ)の恋を、娘たちの気まぐれな偽装手紙(いたずら)で成立させるのが冒頭の『恋占い』。こんな話なのに、小説自体はとても重いタッチだ。読みながら、かなりの時間がかかる。それは、ストーリーの重要な展開がさらっと書かれてあり、読み流すと大変なことになるからだ。だって作品自体の意味が分からなくなるのだから。

ある教師の葬式とか、初恋の相手との再会とか、描かれるものは、簡単なのだが、先にも書いたように、人間関係微妙な問題が淡々としたタッチで綴られていくから面白いけど、読むには、結構疲れる。

2001年のバストセラーで、日本でも2006年に出版された。それを2014年に読む。しかも、うちの図書館の新刊コーナーでみつけた。昨年の秋のシーズンの入荷してもらった本だった。「ニューヨークタイムズ今年の10冊選出作品」(もちろん2001年のことだろうが)を今、読んでいる。(しかもこんなにゆっくり時間をかけて) なんだかとても贅沢な時間の使い方だな、と思う。


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