ハレンチキャラメル『浮世の月にかかる雲なし！』

　神原さんによるネオ大衆演劇。とても単純明快。話は、２重構造の図式を使って（まぁ、ただの劇中劇なのだが）ある。だが、そこには神原さんの強固な姿勢が貫かれる。ストレートな心情をわかりやすく見せる。そして、いつも通り熱い。

　ありきたりで、いかにもな人情劇だ。なめくじ長屋の住人は人情に厚い。ヤクザものの安太郎（島上とおる）は山道の閻魔堂で、人斬りに兄を殺された目の不自由なお信（古志勇気）を助ける。自分の長屋で彼女を匿い、徐々に明るくなっていく彼女に惚れる。別れ別れの姉がやってきて、なんやらかんやらで。まぁ、おきまりの展開がベタな芝居で綴られるわけだ。だが、なんだか見ていて安心感に包まれる。

　それは神原さんがポイントをしっかり抑えてメリハリのある豪快な演出で見せてくれるからだろう。総勢１７名に及ぶキャストを用意して、この単純な芝居を華のあるものにして見せる。そんな中から、舞台を生きる楽しさ、喜びがひしひし伝わる。外枠としてある旅役者、荒城月之介一座のお話と、劇中劇はシンクロし、クライマックスを迎える。

　今回の会場となった飛鳥人権文化センターホールは、この芝居にとって必ずしも好ましい空間には思えなかったが、神原さんはどこにおいても、同じ。まるで問題なくいつもの自分の芝居を見せる。広い舞台を自由に使って、マイペース。やっぱり凄いわ。泰然自若。何があろうと動じない。信念を持って、曲げることない。そんなところはやっぱり素敵だ。