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映画・演劇のレビュー

『謝罪の王様』

2013-10-18 21:24:46 | 映画
最初はテンポがいい。とてもバカバカしいけど、阿部サダヲのテンションの高さに引っ張られていき、笑える。土下座でこれだけ笑わせるのである。大したもんだ。だが、串団子式エピソードの羅列はいささか単調すぎて、やがて少しずつ飽きてくる。とどめは、あの国際紛争となるエピソードだ。スケールの大きさでも誇示したかったのかもしれないが、あれで反対に醒める。ああいう中途半端なモブシーンは、映画がただの嘘でしかないことを際立たせるばかりだ。

 昨年の『テルマエ・ロマエ』でも同じようなことをしていたが、その更に前の『映画 怪物くん』のインドのウソ臭さを思い出した。あの映画は、あのわけのわからないインドのせいで究極のつまらなさを露呈したが、これも同じパターンだ。そこまでの、ちまちました描写の積み重ねはあんなに面白かったのに、ここに至って空中分解だ。謝りに行く、というシチュエーションをどう展開するのかが、大事なのに、ワキゲボーボーだけで済ませる。しかも、しつこい。

とことんつまらない、せこいことに拘ってもらいたかった。この映画の持つ笑いとはそういうことなのではないか。いつも不機嫌な井上真央のキャラも、この映画には、不似合い。彼女の存在が不快なので笑えない。だが、彼女の存在は阿部サダヲとのコンビで相殺される。2人のアンサンブルとして機能するからだ。それだけに、彼女がいなくなるシーンは、反対につまらなくなる。

しかも、あの王子(野間口徹)の肖像権をめぐってそれがこれだけの紛争に発展するという展開の過程があまりにおざなりすぎた。総理大臣の謝罪にまで広がっていくというお話の展開が、中途半端なモブシーン同様まるで手抜き。どうしてこうなったのか。スケールアップのはずが、これではダウンにしかならない。

 エンディングのバカバカしいほどの豪華さで、なんとか取り戻すけど、全体のバランスが悪すぎた。せっかくの前半の面白さが持続出来ないのが惜しい。しかも、黒崎の秘密とでもいう最後のエピソードも不発。彼がなぜ謝罪師になったのかを、解き明かすエピソード0に当たる話なのに、ここも弾まない。

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