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映画・演劇のレビュー

『13/ザメッティ』

2007-04-19 21:47:58 | 映画
 モノクロ、シネマスコープ・サイズのフランス映画。監督は新人のゲラ・バブルアニ。彼は引き続きハリウッド版のリメイクも手掛けるらしい。主演はギオルギ・バブルアニとあるから監督の弟かなんかだろう。家内制手工業で作っているようだ。

 フイルム・ノワールを思わせるようなタッチで描かれる悪夢のような殺人ギャンブル。パリ郊外の森の中で催されるカジノ。13人の男たちによる同時円形ロシアンルーレット。大金を賭けて人殺しを見守る。ただそれだけのことが描かれていく。スタイリッシュな映像で93分。一気に駆け抜けていくように描かれる。

 ひとりの修理工の青年が辿る地獄巡りとしても読めるようになっている。いかにもハリウッドが喜びそうな題材である。低予算、ワン・アイデアのシンプルな映画。あまりに単純すぎて、あっけない。もう少しいろんな仕掛けが成されてなくては1本の映画としては納得いかない。

 かといって警察にもっと事件と関与して欲しいというわけではない。4回のロシアンルーレットを通して彼の内面がどう変化していくのか、その心理的な駆け引きのようなものを、もっとスリリングに描いて欲しいのだ。物語の構造上、彼が死なないことは解っているから(まぁ、ラストでは死にますが)それは承知の上で、さらなるサスペンスを用意しなくては劇映画としては弱い。彼がこの地獄に導かれていく過程を、もう少し丁寧に描いてもよかった。

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