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映画・演劇のレビュー

虚飾集団廻天百眼『夢屋 地獄変』

2013-02-20 20:32:14 | 演劇
 虚飾集団廻天百眼の実験公演。これは本公演よりは規模の小さい作品らしいのだが、なかなかどうして1時間20分の長編である。 これは今回の LINX’S参加作品なのだが、まるでイベント公演とは思えないような本格的なものだ。彼らはLINX’を乗っ取って、好き放題している。ここまで堂々とされると納得するしかない。

 ひとりの少女が夢屋にやってくる。自分が見た悪夢を売るために、だ。セーラー服のこの少女を主人公にして、彼女が出会う夢と現実の境目での様々な出来事が綴られていく見世物小屋のようなお芝居だ。夢を喰う化け物たち。夢を買う夢屋。様々なわけのわからない魑魅魍魎が入れ替わり立ち替わり登場して、夢幻の世界が繰り広げられる。

 昔はこういうアングラって結構在ったのだが、今ではもう流行らない。久々に正統派アングラ劇団登場か、と思ったのだが、実はそうではない。まず、この芝居には、まるでお話がない。それらしい雰囲気だけだ。要するにとてもキッチュな作品なのだ。アングラではなく、アングラもどき、とでも言おうか。本人たちも実はちゃんとそこら辺は認識しているようだ。「おしゃれなアングラ」というのでもない。アンダーグラウンドではなく、アッパーグラウンドなんです、と言っていたが、これはある種ファッションとしてのアングラだと思う。過激なことを確かにやっているのだが、それは何かのポリシーがあっての行為ではなく、ただ、面白がっているだけに見える。血まみれ、ぐちょぐちょも、そうだ。自分の世界を伝えるための表現としての行為ではなく、興味半分のお遊び。だが、それはそれで、ちゃんと本格的で、とことんやろうというその姿勢がいい。結果的にこれはある種の距離感のもとで、演じられるものとなる。その冷静さが身上だ。

 舞台から様々なものが飛んでくるし、客席に役者が下りてきて、観客をいじくりまわす。かなり衝撃的だったのは、生きた虫を投げることだ。舞台上で虫を裸の女のふんどしの中に入れたり、身体に這わせるだけでは飽き足らず、客席に落とす。だから、上演中、僕の近所でずっとなんかの幼虫がクネクネしていたし。後半、臓物と見せかけて投げるのはこんにゃくとかなのたが、あの虫の後なので、それがなんだかとても不気味なものに思えて、気持ちが悪い。

 終盤には巨大な手とか、目玉とかのオブジェも登場し、いかにも、なのだが、見世物としてのそれ、だけにとどまる。見終えた印象としてはこれがなぜか、とても明るい作品なのだ。そのへんがこの作者(石井飛鳥)のねらいなのだろう。よくあるような変態的な世界観をセオリー通りに見せることで、ガジェットにしてしまう。これは確信犯的で、とても意図的なパフォーマンスなのである。


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