習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『私は貝になりたい』

2008-12-09 21:28:52 | 映画
 大作である。見るからに大作であることを誇示するような作り方をしている。それが悪いと言うわけではない。大作映画の巨匠、橋本忍による久々の脚本で、TV界の大作ディレクター、福澤克雄監督の劇場映画デビュー作。久石譲のいかにもの大作映画然とした音楽。中居正広の熱演。美しい日本の自然、妻との愛、子どもへの想い。A級戦犯として、裁かれること。感動的な場面が続々。しかも丁寧に作られている。なのに、なんだか、僕 . . . 本文を読む
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くじら企画『山の声』

2008-12-07 21:31:13 | 演劇
 大竹野正典さんの(というか、昔からの友だちなので『さん』付けは気味が悪い)2年半振りの新作である。ここ数年山登りに嵌ってしまった彼は、芝居より山、という毎日を送っている。だから、こんなにも公演まで、間が開いてしまったのだ。これは満を持しての(『芝居よりも山』である今の彼にとっては、これは「満を持しての」ではないかもしれない。というよりも、これは「僕たち観客にとって」満を持しての、という感じだが) . . . 本文を読む
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『ラブファイト』

2008-12-07 20:29:24 | 映画
 まっすぐにすすんでいく。ゆるぎない視線を相手にむける。目の前にいるその人にゆらぐことなく向かっていく。10年間逃げ続けた少年が、10年間ずっと彼を守り続けてきた少女の前に立つ。そして、戦いを挑んでいく。2人が、かつて通い続けた幼稚園のグランドに足でリングを描く。このシーンを見たとき涙が溢れてきた。胸が熱くなる。『バッテリー』『ダイブ!!』の林遣都と、『幸福な食卓』の北乃きいの主演作。2人がただた . . . 本文を読む
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『ワールド・オブ・ライズ』

2008-12-04 19:58:31 | 映画
 リドリー・スコットの新作である。前作『アメリカン・ギャングスター』に続いてラッセル・クロウを迎え、中東を舞台にしたテロに対するアメリカの諜報戦が描かれる。主人公はレオナルド・ディカプリオ。彼が体を張った芝居を見せる。ラッセルは電話ひとつで彼を動かす上司。だが、この2人を対極に配置することで、CIAのスタンスが見事に図式化される。自分たちは手を汚さないで、世界を支配下に置き、自分たちの正義を世界に . . . 本文を読む
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平安寿子『恋愛嫌い』

2008-12-04 19:25:27 | その他
 この恋愛小説は思いがけない拾い物だった。3人の女たちのそれぞれの生き方を綴る短編集の趣で連作された長編小説。スタイルは1話完結で、3人をそれぞれ主人公とする3つのエピソードが、2つずつ収められてあり、それにエピローグとなる短編がついた全7話からなる作品。  この3人が基本的には絡み合わないのがいい。昼食をいっしょにとるだけの関係で、職場も年齢も違う。だから、あまりつっこんだ話なんかしない。その . . . 本文を読む
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『ハッピー・フライト』

2008-12-02 21:37:01 | 映画
 矢口史靖 監督の最新作はCAとパイロット、そして空港で働くたくさんの人たちを主人公にした群像劇。『ウォーター・ボーイズ』『スィング・ガールズ』に続く映画なのだが、前2作とはまるでタッチの違うコメディーに仕上がっている。こういう映画がちゃんとヒットしなくてはいけない!と思うのだが、劇場はガラガラで「大丈夫か、矢口!」状態だった。平日の6時の回だから、こんなものかもしれないが、なんだか寂しい。映画は . . . 本文を読む
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『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』

2008-12-01 20:33:29 | 映画
 このなんでもない映画に見える作品が、実はかなりおもしろいという事実に気付くのは、見た人だけであろう。そんな当たり前のことをさも偉そうに書くなんてバカみたいなのだが、でも見るまで、まるで何にも期待していなかったのだから、その驚きは大きい。  田舎でくすぶるウエイトレスをしている女が主人公。彼女はパイを焼くのが大好き。自分のオリジナルパイをたくさん作っている。コンテストに出て、入賞して自分のお店を . . . 本文を読む
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『マーゴット・ウエディング』

2008-12-01 20:17:26 | 映画
 このとても地味な、そして歪な映画は、面白い映画だなんて、そんな一言で言えるしろものではない。だが、ただの変な映画、の一言で切り捨ててしまってもいいくらいに、さりげない。見終えた後、何だったのだ、と思って、しばらく忘れていたくらいだ。  だけどなんとなく気になって調べて見たらあの『イカとクジラ』のノア・バームバック監督の新作だった。あの人ならさもありなんと納得した。ニコール・キッドマン、ジェニフ . . . 本文を読む
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小森真弓『きのうの少年』

2008-12-01 19:47:40 | その他
 この児童書を(と、いっても350ページもある)読みながら、小学6年生というとても微妙な時間のことをいろいろ考えさせらた。  先日、高校の授業で重松清の『小学5年生』という短編集から『タオル』という作品をやったのだが、高校2年生にとって5年前にあたる小5という時間はなか感慨深いもののようだった。遠い過去とは言えないが、最近の出来事だなんて思えない。もう生々しくはない。だが、あの頃の痛みはまだリア . . . 本文を読む
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