久々にドキドキさせられる芝居だった。この芝居がいったいどこに僕たちを連れて行ってくれるのか、予想もつかない。面白いことは確かなのだ、だが、着地点が見えないから、もしかしたらつまらなくなるかも、なんて思う。そんな不安定な気分を抱えて芝居を見守る。森田芳光監督の『家族ゲーム』を思わせる設定だ。凶暴な家庭教師がやってきて彼の介入を通して家族の姿が浮き彫りになってくる。食事のシーンがドラマに於いて大きな . . . 本文を読む
日本映画の封切リストに、337本もリストアップされていたのには驚かされる。2007年12月から08年11月末までに関西で封切られた映画の数である。最近日本映画は異常である。あきれるくらいの映画が作られている。外国映画が404本なので、その差はわずかだ。
こんなにもたくさんの映画が闇から闇へと公開されて消えているのである。なんだか、悲しくなる。映画を作るのはお金も時間もかかるし、公開するために . . . 本文を読む
劇場公開から半年近くたったが、ようやくちゃんと大スクリーンで見た。こういうイベント映画はDVDではなく劇場で見なくてはいけない、とは思うが、わざわざ劇場で見るほどのものとは思えないから、お金を出して見たいとは思わない。と、いうことでサンケイ名画鑑賞会で森之宮青少年会館にて鑑賞。
スクリーンは確かに大きいが、音響がモノラルでしょぼい音なので、このこけおどし映画には似合わない。映画がただの張りぼ . . . 本文を読む
『悪人』『さよなら渓谷』の続く吉田修一の犯罪小説。公社の金を使い込んだ職員が、バンコクで過ごす数日間の話だ。
現地で暮らす日本人青年に誘われて、ミントと名乗る美しい娼婦と出会う。彼女をお金で買って過ごす時間が描かれる。若い女をお金で自由にすること。最初は後ろめたさもあるが、言葉もまともに交わせない女と過ごす時間をただ淡々とやり過ごす。お金をばら撒き、いろんなことを考えず、ただ、この瞬間を過ご . . . 本文を読む
この特異な素材を下品にすることなく、コメディータッチで処理しながら、ひとりの女の自立の物語として爽やかに見せてしまったのには驚かされる。
なんとかしてまとまったお金を手に入れたくて、風俗で働くことのなる女、なんて言えばなんだかありきたりなのだが、その女性がかなりお年を召した中年女(どちらかと言えば、初老と言ったほうがいいくらいなのだ)で、とても体を売ることは出来ない。なんと彼女がする仕事とは . . . 本文を読む
『淫乱書生』というオリジナルタイトルは凄すぎる。もう、これが普通の映画である、ということを棄ててしまったとしか思えない。ポルノ映画さながらのこのタイトルで本国では大ヒットしたそうな。
内容もぶっ飛んでいる。ノン・ジャンルの怪作である。だが、これは文芸大作だろうなぁ、たぶん。最初の方を見ていると、エロを期待した人たちを怒らせるような展開だ。宮廷文芸ロマンってな、感じ。いやらしいシーンは残念なが . . . 本文を読む
パトリス・ルコントは本当に上手い。彼が作る映画にはいつも感心させられ続けてきたが、いまさらながら凄いと言わざる得ない。なにをいまさら、とは言わない。いまさらながら感心させるのだ。
『髪結いの亭主』が初めて日本で公開された時の衝撃は忘れられない。今はなき三越劇場で見た。こんなすごい映画はない、と興奮した。しばらく立てなかった。あの後、彼の映画は続々公開されるようになったが、あの衝撃を上回ること . . . 本文を読む
この映画は絶対に劇場では見たくなかった。アメリカで評判になった時、一体どんな映画なのだろうか、とかなり期待したが、情報が入ってくるうちにどんどん期待は萎んでいった。でも、いくら期待しなくても、こういうゲテモノは絶対に見るのが僕の主義(どんな主義なのやら)だから、劇場公開後、すぐに駆けつける予定だったが、情報を収集すると、いくら考えても、時間の無駄っぽいと判明した。『ブレア・ウイッチ・プロジェクト . . . 本文を読む
この映画へんだ。だいたい情報誌に載ったスチル(上の写真)を見たときから、おかしいと思った。須賀健太の横にモノクロの女の顔。あれ、谷村美月だ。だけど彼女が凄い顔してる。なんだ、この映画は。最初の感想はそんな感じ。
タイトルもへん。ストーリーもなんだか、おかしい。いじめられっ子の話のようだ。だが、いじめれれる少年の横になぜか、お化けの谷村が!青と呼ばれる少年にしか見えないそのばけものが彼に囁きか . . . 本文を読む
こんな映画があるから、韓国映画はやめられない。一見軽いタッチのコメディーにも見える。そう思う人はそういう理解で十分だ。肩肘張った映画ではない。3話からなるオムニバススタイルを取る。最初にそれぞれの主人公たちが出てくる。最後に出てきた女性がまず最初のエピソードの主人公となる。
大好きな弟が5年振りに帰ってくる。だが、女の人を連れている。しかもその女性はどう見てもかなりな歳だ。弟は「おれの妻だ」 . . . 本文を読む
これは2劇からのクリスマスプレゼント。3人の若い女たちの犯罪を通して、軽快にドラマは進んで行き、ラストでは彼女たちが素敵なクリスマスを過ごす姿を見せる。なんだかほっこりとできる、そんな芝居にする、つもりだったのだろう。
たとえ、そこまでが、もたついたとしても、それだけが出来たならこの芝居は成功したであろう。だが、そのほんの小さなドラマは、それなりに、きちんとした物語作りがなされてなかったなら . . . 本文を読む
テーマの提示が弱すぎるので、求心力のない芝居となっている。スピード感があり、シーンシーンはいつもながら面白いだけに、ほんの少しの匙加減で傑作になったり、凡作になったりするところに、高瀬作品の難しさがある。今回のテーマは「転がり落ちる人たち」なのだが、お話自体のドタバタ振りについていけない。
高瀬さんはテーマを追求していくタイプの作家ではない。役者たちのコンビネーションのよさと、シチュエーショ . . . 本文を読む
ダンスを中心にして構成された作品。全体の7割がダンスシーンで、残り3割がドラマ部分。ストーリーは、これではダンスシーンのつなぎでしかない。これをお芝居とは言い難い。
芝居とダンスが幸福な融合をした作品を目指しているようだが、バランスが悪すぎるのだ。これでは自ずとドラマは弱くならざるえない。両者がしっかり連動して、相乗効果をあげてくれたならいいのだが、残念ながらこれでは無理だ。ドラマの比重がこ . . . 本文を読む
古厩智之監督の作品はデビュー作からずっと見ている。PFFで受賞した8ミリ映画の『灼熱のドッジボール』を見たときから彼のファンになった。最新作『奈緒子』まで、そのすべての作品が好きだ。
なのに今回初めて納得できなかった。見終えて暗澹たる気分になった。ショックだ。素材のせいとは言いたくない。だが、彼がこの企画のどこに魅力を感じたのか、まるでわからない。
映画は少しも弾まない。おもしろくもなら . . . 本文を読む
日韓の新鋭監督の作品を2本続けて見た。新鮮な驚きを期待したが、がっかりな出来である。批評とかではけっこう褒められているようなので、つまらなかったのは僕だけなのかもしれないが。
イ・ユンギ『アドリブナイト』はまず、ポスターの少女(ハン・ヒョジェ)に心惹かれた。(不純な動機だ!)平安寿子の短編小説の映画化らしい。小予算のインディペンデント映画なようなのも気になった。その他いろんな意味で興味深い企 . . . 本文を読む