習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『マーゴット・ウエディング』

2008-12-01 20:17:26 | 映画
 このとても地味な、そして歪な映画は、面白い映画だなんて、そんな一言で言えるしろものではない。だが、ただの変な映画、の一言で切り捨ててしまってもいいくらいに、さりげない。見終えた後、何だったのだ、と思って、しばらく忘れていたくらいだ。

 だけどなんとなく気になって調べて見たらあの『イカとクジラ』のノア・バームバック監督の新作だった。あの人ならさもありなんと納得した。ニコール・キッドマン、ジェニファー・ジェイソン・リー、ジャック・ブラック、ジョン・タトゥーロ。これだけの面子が集うってことはただ事ではない、とは思ったが、みんな本気の映画に出たいんだなぁ、と改めて思う。ハリウッドのお手軽映画だけでは生きている実感が味わえないだろうから。

 妹の結婚式に出席するため故郷に帰る姉。しかし、彼女の結婚相手は仕事も持たない売れない画家。こんな奴と一緒になっても妹は幸せにはなれない、と思う。2人の結婚には承服しかねる。とはいっても、この姉妹は犬猿の仲。作家である姉が家族のこと、自分のことのあることないこと、小説のネタにしてしまうのに腹をたて、ずっと交流がなかったのだ。両親はもう死んでいる。ここは今、妹の家になっている。ここで暮らした日々がよみがえってくる。

 失われた家族を取り戻したいというわけではない。だが、妹の結婚という事実を通して何かがよみがえってくる。本当は彼女が好きだった。だからこそ、彼女を嫌いになってしまった。

 『きのうの少年』を読んでいて、主人公のアキの父と、彼の妹(アキにとっては叔母さんだ)の関係を見ながら、なぜかこの映画のことを思い出してしまった。お互いのことを大事に思っている。なのに、それが上手く伝わりあわない。

 何ヶ月も前に見た映画のことを今頃書いている。見たときにはなぜか描くのを敬遠してしまった。あの映画が言いたかったことがあまりよくわからなかったからだ。もちろん、今もよくわかるわけではない。ただ、ずっと気になっているのだ。

 いい映画は、いつもよくわからなくても、気になる。そんなこだわりを残すのだ。

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