習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『ミックマック』

2010-10-19 23:48:11 | 映画
 大好きなジャン=ピエール・ジュネ監督の新作なのに、今回初めて乗れなかった。ショックだ。前半は大好きだ。これはいつもながらのジュネの世界だ、と嬉しくなる。作り物めいた不思議なビジュアルが刺激的で楽しい。だが、後半になって、お話が復讐の話になると、だんだんどうでもよくなってくる。まるで、話に奥行きがないからだ。つまらない。  ジュネのかつての映画と比較すると、これはあまりにストーリーが緩すぎて、途 . . . 本文を読む
コメント

『国家代表!?』

2010-10-19 23:36:14 | 映画
 最近の映画で言えば『ソフトボーイ』、大ヒット作ならば『ウォーターボーイズ』の流れを汲む映画だろう。もちろん全く同じタイプの『クールランニング』が比較対象としての最大のライバルか。ポンコツチームをひとつにして大きなものを掴むというよくあるパターンの映画だ。  全くのシロウトがマイナー競技でオリンピックに出場する。しかも、メダルにまで限りなく近づくまでが描かれる、という「とんでもない」話なのだが、 . . . 本文を読む
コメント

『エクスペンダブルズ』

2010-10-16 21:29:37 | 映画
 これはあり得ない。豪華アクションスター夢の競演である。映画を見ることより、このイベントを夢見ることの方が、ずっと楽しい。だから、この手の映画はいつも期待の方が大きくなりすぎてがっかりすることが多い。だから、今回もできるだけ、がっかりしないように予防線を張って劇場に行くことにした。とか言いながら、封切りの初日にちゃっかり劇場に足を運んでいる。こういう映画はできるだけ大スクリーンで楽しみたい。   . . . 本文を読む
コメント

『死刑台のエレベーター』

2010-10-16 09:28:42 | 映画
 これはダメだと思う。「愛のために人を殺せるか」なんていう観念的な話は、映画自体によほどの仕掛けがなくては、観客を納得させられない。雰囲気だけで流されるわけにはいかない。しかも、リアルな映画ならいざ知らず、こういうムードだけで押していく映画である。難しい。余程上手く乗せられなくては、冗談のようなおふざけ映画に堕してしまう。50年も前のフランス映画のリメイクである。ルイ・マル監督の傑作ミステリーを現 . . . 本文を読む
コメント

『大奥』

2010-10-16 09:20:31 | 映画
 よしながふみの原作コミックを読んだときは軽い衝撃を受けた。こんな手があったんだ、と感心したのだ。それはちょっとした驚きだった。男女逆転の世界というのは『猿の惑星』級の発想のおもしろさだ。それを、それだけに終わらせない。きちんとそこから考えられるリアルなドラマを見事展開して見せた。  この原作を持ってくるだけでこの映画の成功は約束されたと言っても過言ではあるまい。まぁ、現実はそんな簡単なものでは . . . 本文を読む
コメント

大阪新撰組『ひかりごけ』

2010-10-16 09:13:31 | 演劇
 重い芝居であることはわかっていたけど、こんなにも観念的な芝居にすることはないのに、と思う。とても新撰組の芝居だなんて思えない。後半、法廷劇となるところから、ドラマ自体が象徴的なものになってしまうのはわかっていたけど、前半までもが、まるでリアルではなく、抽象的で、象徴的な話として作られてあり、それがいつものアングラで、どちらかというと体力勝負のような新撰組とはまるで違い、なんだか不思議な気分にさせ . . . 本文を読む
コメント

『君に届け』

2010-10-16 08:12:46 | 映画
 劇場は若い女の人が95%を占めている。シングルの男子は僕一人だけだったので、かなり焦った。レイトショーで見たから客はあまり多くなかったからよかったが、中高生が見る時間だったら、かなり苦痛だったはずだ。それにしても、こういう映画に何を期待して彼女たちは劇場に足を運ぶのだろうか。原作は1600万部の大ヒットコミックらしい。想像もできない。こんな「どこにでも掃いて捨てるようにごろごろ転がっているような . . . 本文を読む
コメント

evkk『FOG』

2010-10-14 22:53:18 | 演劇
いつもにも増してどんどんエスカレートしていく。外輪さんは、もはやテキストを語るよりもテキストを解体して、物語らないことを選ぶ。それは観客を混乱させるためではない。語るべきドラマよりも心の深奥を見せることの方が大事だと感じるからだ。混沌を混沌のまま見せるためには、方法論が何よりも大事になる。情報量を肥大化させるために、あらゆる手を使う。その結果、観客はそのすべてを消化吸収することは不可能になる。こ . . . 本文を読む
コメント

青年団『砂と兵隊』

2010-10-14 22:45:54 | 演劇
 ただ、下手から上手に砂の中を匍匐前進していくだけの兵士たち。同じように下手から上手へと黙々と歩いていく観光客たち。この単純な運動のくりかえしだけの芝居が、どうしてこんなにも胸に迫るのだろうか。この変化のない単調な繰り返しは、ここが戦場であることを忘れさせる。抜けるような青空と、そこを漂う真っ白な雲が、額縁のように背後のパネルの中に描かれてある。それが空中に浮かんでいる。吊り下げられたそれの前、舞 . . . 本文を読む
コメント

演劇集団よろずや『青眉のひと』

2010-10-12 07:49:35 | 演劇
 今回で3度目になる。寺田夢酔さんはもともと再演が好きな人だが、今回はいつもにも増して気合が入っている。だって山本能楽堂での公演である。由緒正しきこの空間で、彼の演劇がどれだけ力を発揮するのか、楽しみだった。まず結果から言おう。充分成功している。とても満足した。気合は入っても、気負いがない。そこがいいところだ。空回りすることなく、ちゃんと地に足のついた芝居をする。  彼は自分の作品をとても大切に . . . 本文を読む
コメント

虚空旅団『見送ル、背中』

2010-10-12 07:20:58 | 演劇
 とても芝居らしい「お芝居」だ。まるで大劇場による大河ロマンを見たような気分にすらさせられる。ここはウイングフィールドなのに、なんだか不思議な気分。ちょっと贅沢な体験。とても堂々としていて気持ちのいい芝居だ。役者たちがきちんとそこにいて、背筋を伸ばして存在している。そんな当たり前のことが、なぜかうれしい。彼らは自分たちの生き方に自信を持っている。ここには小劇場の芝居にありがちな、曖昧さや甘えがない . . . 本文を読む
コメント

『ルンバ!』&『アイスバーグ!』

2010-10-08 23:46:13 | 映画
 それにしても、《2本立!》 なんとも懐かしい響きだ。昔はほとんどの日本映画が2本立だった。外国映画だってB級映画は2本セットで公開された。場末の2番館なんて3本立、4本立なんてのもあった。今ではなんでもかんでも1本で公開される。貧乏な人は劇場で映画を見るな、と言われているようだ。まぁ、今ではレンタルで安く映画がいつでも見れるから、わざわざ劇場で見るようなケースは特別なことなのかもしれない。今回の . . . 本文を読む
コメント

『バレンタイン・デー』

2010-10-08 23:43:32 | 映画
 こういうスタイルの映画は山盛りある。1日の話で、24時間の中で、いろんな人たちがそれぞれの場所で、悲喜こもごものドラマを体験していくというドラマをスケッチしていく群像劇。数年前に日本映画でも『大停電の夜に』という映画があった。『ナッシュビル』『ウエディング』、そして『ショートカッツ』など多数の作品でそのやり方を踏み、得意としてきたロバート・アルトマンや、僕の大好きな映画であるポール・トーマス・ア . . . 本文を読む
コメント

トイガーデン『ユビュ王』

2010-10-07 21:31:28 | 演劇
 また『ユビュ王』である。安武さんはほんとうにこの作品が大好きなのだな、と感心する。新しい作品にトライするよりも、勝手知ったるこの作品で、また、新しいアプローチをして、遊ぶ方が楽しいのだろう。今回は最初に20分くらいかけて「あらすじ」を紹介する。しかも役者たちを使って「あらすじ」を演じさせるのだ。そんなのありか?   あきれるやら、笑えるやら。そして、本編に突入である。本編は50分。ちゃんとわか . . . 本文を読む
コメント

小手鞠るい『私の神様』

2010-10-07 21:30:19 | その他
 小手鞠るいはもう読まない、と強く心に決めたはずなのに、新刊が出たら、また読んでしまった。そして、途中で後悔した。なんでこの人はこんなに安易な展開しかしないのか、と。そして相変わらず嘘くさい。  だが、最後まで読んだとき、これはこれで結構感動している自分に気づく。相変わらず甘いとは思うが、よく考えられてあるし、これは彼女なりの大作だ、と思う。かなり気合いが入っていたから、一応は満足だ。今自分に出 . . . 本文を読む
コメント (1)