マヌエル・プイグ『蜘蛛女のキス』




 プイグの「蜘蛛女のキス」、再読です。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスの刑務所の監獄で反体制派の政治犯バレンティンにゲイで未成年者への猥褻罪で収監されているモリーナが、毎夜昔観た映画の話しをする。

 モリーナの語り口はテレビで見るマツコと同じオネエ言葉で何故か耳に心地よくて(実際は読んでいるのですが聞こえてくる)、話しがイメージの中で容易に映像へと膨らんでいきます。
 モリーナによる濃密な映画の話しに魅了されるうちに徐々に状況や二人の関係も明らかになっていき、ストーリーは意外な展開をみせていきます。

 ラテン文学はガルシア・マルケスを数冊読んだだけですが、マルケス同様に他では読めない独特の幻想的で政治的な世界観があります。すごく面白い。

 何ヵ月前か、ニューズウィークを読んでいると、世界貿易センタービルに突っ込んだ2機目は本来はホワイトハウスに向かう予定だったのが、長い潜伏、同居生活の中で愛人関係となった犯人が1機目の恋人と一緒に死にたくて予定を変更してニューヨークに向かったのが最近の分析・定説になっているとありました。
 
 最後の方はそんなことを思い出しながら読んでいました。



 

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