フランス映画「さらば夏の日」は、フランシス・レイの甘美なメロディーと共に青春の情景を描いた心に残る名作だ。
夏のバカンスに南フランスにやってきた若いカップル。ヨットで地中海のクルージングを楽しむ計画だ。その旅の途中に青年は夏の日差しに惑わされたのか、別の女性に気を引かれてしまう。そのカップルは気まずいことになってしまい別れてしまう。しかし、季節が変わり再開した二人は、お互いがの心が通い合っていることに気付き、彼らは人生の次のステップへと進む。甘く切ない若者の一夏の出来事を描いた作品である。
夏のある日にクアトロにやってきたあるお客様は、ウニのクリームソースというパスタに心を通わせていた。ウニのクリームソースは一年中あるのに、なぜかクアトロには日替わりのおすすめになっている。いつものように、日替わりおすすめメニューにウニのクリームソース¥1500という表示があるのを確認し注文しようとした。その日替わりおすすめメニューにはウニのクリームソースと並べてポモドーロ・プレミアム¥1300と書かれているのも気に掛かる。カウンターに並べられているイタリア・トマトが目に映った。その赤く輝く細長いトマトが自分を誘惑している。太陽がふりそそぐ豊四季の田舎道を歩いてきたためだろうか、ウニのクリームソースと決めていたのに、そのトマトのパスタに心を奪われ、ポモドーロ・プレミアムを下さいと云ってしまった。
真っ赤なイタリアントマトの誘惑に負けるお客様の多い、この夏のクアトロである。
そして、次は秋の誘惑が待っていることに気付いていない。
それでも、それがグルメ人生のステップを登るプロセスなのである。
「スパゲッティ・アラ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーニ」
「スパゲッティ・アラ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーニ」
「スパゲッティ・アラ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーニ」
この呪文を何回繰り返しても空腹が訪れるだけだ。
この呪文はイタリア料理の基本を意味している。ニンニクと唐辛子とオリーブオイルのソースで絡めたスパゲッティのことである。
略してペペロンチーニとかペペロンチーノとか呼ぶ。このスパゲッティは単純そうですごく奥が深い。いかにそれぞれが融合してパスタに絡まるかということだ。
これを極めると、次に片品村産トウモロコシにアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーニのソースを融合させたパスタが誕生する。「カタシナムラサン・トウモロコシ・ノ・スパゲッティ・アラ・アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーニ」となる。
ニンニクと唐辛子とオリーブオイルのソースに片品村産トウモロコシの旨みを封じ込めた夏の終わりに登場するクアトロの傑作スパゲッティである。
ここは略して「片品村産トウモロコシのペペロンチーニ」とクアトロでは呼んでいる。
以上がクアトロの父のこのパスタの紹介文である。
「コンペペ、激旨」
若者の紹介文である。こっちの方がこのパスタの旨さは伝わるのかもしれない。
取調官の執拗な質問が続く
「奥さん、初めてクアトロに行ったのはいつごろですか」
「はい、友人に勧められて、確か昨年の夏の終わりだったと思います、その時の片品村産トウモロコシのペペロンチーニがとても美味しくて、それからはパスタはクアトロでなくてはだめになってしまいました」
「うむ、よくあるパターンのようですな、それで最近はどうなんです」
「はい、やっとトウモロコシのペペロンチーニが今年も食べられるようになって、それからサンマルツァーノのパスタも今の 内に食べなくてはと思い日曜に出かけてしまいました」
「パスタだけでは満足できなかったのかね」
「はい、売人のクアトロの父が小さな声で、これはイタリアでも手に入りづらいとか、もうあまり手持ちがないとかいうもので」
「それで、あの白い塊に手を出したというのかね」
「はい、それに口にしてみると、それはもう美味しくてとても気分がよくなってしまいました」
「そうか、テネリというデザートの魔力には勝てなかったという訳ですな」
「はい、そのとおりです、間違いありません」
遂に、前面自供をする容疑者Xであった。
水牛のミルクの乳固形分を凝縮させたリコッタチーズが問題の白い塊“テネリ”である。クアトロでは、これにハチミツかメイプルシロップで味付けをしてデザートとして秘かに販売されている。あなたも新たな犠牲者にならないように気をつけよう。
昨日、クアトロ・スタジオーネに片品村からトウモロコシが届いた。このトウモロコシをペペロンチーニに仕上げたパスタは絶品と云われている。クアトロでは毎年このパスタを数食販売するだけなのだが、それを食べたお客様は必ずその美味しさの虜になるようだ。
「トウモロコシのパスタはまだ食べられないの」
この時期になるとよくお客様に聞かれる。
トウモロコシなんてどこのでも同じだろうと考えるのも自由である。
やっぱりトウモロコシはとうもろこし街道の片品村のが旨い。その片品村のトウモロコシのパスタを食べたい。そう考える方々、お待たせ しました。
夏も終わろうとしているこの時期に、片品村のトウモロコシを使ったパスタに豊四季の新たな夏の風物詩が始まろうとしている。
このトウモロコシの到着を祝い、豊四季の神社「おすわさま」ではお祭り騒ぎである。
※訂正-クアトロのトウモロコシのパスタとは関係無く「おすわさま」はお祭りでした。
クアトロ科学捜査隊の調査は続いた。
“テネリ”はイタリア・ナポリの水牛のミルクから作られたリコッタチーズであった。イタリアでもとても珍重されるものであるらしい。
隊員は慎重にそのテネリの破片を口にしてみた。
これは旨い。
爽やかな酸味と濃厚なミルクの甘み、さらにハチミツかメイプルシロップが加わると最高のデザートである。これは雄叫びをあげたくなる味わいである。
クアトロ本部は早速、デザート・メニューに“テネリ”を加えたとのことである。ただし、賞味期間が短く売り切れの心配もあるようだ。
謎の多いクアトロの情報は「豊四季ウォーカー09」のクアトロ・スタジオーネ特集を参考にしよう。しかし発売の予定が立っていないようなので、やはりクアトロ・スタジオーネに直接足を運ぶのが懸命のようだ。