須賀敦子全集第7巻に収められた「どんぐりのたわごと」の中に
こうちゃん、はあります。
すすきの穂がはじけてふわふわになるのはもうすぐ。
こうちゃんは、その一本を持って、ぶんぶんと振り回しながら
わたしの庭をかけまわっています。
わたしは須賀敦子という類い稀な才能の作家について、ほとんど知りません。
知らないまま読み始め、噂ていどの知識はありましたが、その批評のどれとも
違う印象と記憶をわたしの中に強く刻んでいきます。
こうちゃん、読みはじめて数分、目頭が熱くなるので
驚きました。
悲しい話が書かれてある訳ではないのです。
中程で、気づきました。こうちゃんの正体に。
やはり、そうかと。
わたしはキリスト教文化に疎いのです。
日本人の多くが実はそうではないでしょうか。
小川国夫や遠藤周作を読んだにしても、です。
須賀敦子という人が、その教養に深さに及びもつかないだろうほとんどの人に
絶賛された理由がわかった気がしました。
こうちゃんは、だれにでも見えるからなんですね。
東西の文化や宗教の違いなど、人の都合にすぎないのだと
読み終えて、激しく涙があふれてきました。
肘掛けの部分が割れたので、添え木をしてガムテで補強した椅子は
みっともないでしょうね。
あたらしく買ったのより、すわりごこちがいいのです。
それに対で、おそろいを並べたほうが、落ち着くのです。
そのうちもう片方も壊れるでしょうから、そのときまで一緒に使います。