実りましたよ、紅いヤマボウシの実。
6月は若葉で緑一色の森に白い花を添えてくれました。
大きな木なので、その一角の白は華やかで、そして清冽なのでした。
それだけでもじゅうぶんうれしくて、ありがとう、と言いました。
ほんとうのことを言えば、秋の紅い実を期待して、ありがとうと言ったのですが。
そして今年は昨年に比べても見事な実りです。
まだこれから色づくのがたくさん生っています。
足下にもたくさん落ちています。
ほんとうのありがとうは、期待も形も望みもないところで抱くものです。
だから、わたしのありがとうは、ヤマボウシの実に対してではなく
目には見えないけれども、山に降りそそぎ満ちている気配に向けて
もろもろのつながりの純粋な采配へ向けて。
降り続いてうっとうしい雨に、そのあとに訪れる猛烈な湿気に、
そしてそれを吹き飛ばす大風に、抜けるような空からの陽差しに、
そこに生きる鳥たちに、風に乗った粒子に。
紅い実に集約されたそれら諸々が
今日もまた、元気に生きていろよとうながしてくれます。
ありがとうと頭が下がります。