平野の向こうにそそり立つごつごつした岩山の中腹に赤い屋根がひしめき会っているのがモンサントの町。初めて目にしたとき亭主は”絶対山頂まで上らない。”と宣言した。私だってあんなそそり立つ山へ登るのは嫌だと思ったけど、何も言わない。
ふもとの町の広場にキャンパーが6台も駐車している。きっとここでフリーキャンピングをしているのだろう。そこから道はぐんぐん上り坂になり、ふもとの町や村があまりにきれいで途中の道端にキャンパーを停めてもらった。
巨石がごろごろしていてこれでは誰にも動かせないだろう。よくも上手に道路を作ったものだと思う。この辺り一体にミモザの花が満開でこのヨーロッパ産のミモザはオーストラリア産と葉の形が全然違う。そしてアルガーヴではヨーロッパ産のミモザはオーストラリア産より早く花が咲き、1月末で花の盛りは終わってしまった。それが1ヶ月以上も遅く今盛りのミモザを見ると今年は何回春を味わえるのだろうとうれしくなる。
モンサントは1938年に最もポルトガルらしい村に選ばれたというが、ポルトガルらしさとはなんだろう。山全体にごろごろ転がっている巨石の間を利用して住居を作り、または巨石を屋根にしていたりと驚きで満ちあふれているのがこの町。
巨石を一方の壁にし三方を高い石垣で囲った豚小屋が町の一角にあった。人恋しそうな豚がカメラを向けるとポーズしてくれる。彼はきっとすべての観光客に愛想を振りまいているに違いない。
この町は小さくてゆっくり坂道を登っていくうち町を過ぎてしまい、山頂の立派な城砦が見えてくる。上らないと宣言したはずの誰かさんは文句も言わずに岩の間の山道を登っていった。途中の崖から見下ろすモンサントの町はすばらしい。
この山は先史時代から聖なる山としてあがめられ12世紀イスラム教徒を撃退した初代ポルトガル王の統治下で13世紀に再建されたのがこの城砦。岩と城砦が渾然一体となっているから遠くから見るとごつごつした岩山に見える。なかなか頑丈な造りでアーチや石の階段なども崩壊が少ない。
亭主は息を切らしながらも山頂に立って大満足、大いに自慢していた。モンサントの町を見下ろすと町の外側の墓地までがよく見える。
再び町へ戻り細い路地を歩き回っているうち、二つの巨岩にはさまれたこの奇妙な家についた。毎日暮らしていて圧迫感を感じないものだろうか?
昔は包囲され使ったであろう大砲が観光用に飾られていた。
ふもとの広場まで下りて昼食を食べ、このふもとにも巨石が多くうまく利用して観光業に使っているのがほほえましい。