昨日、自宅の本棚をちょっと片付けていたら、久々にこの写真集を目にし、思わず手に取った。
「SCRATCH(スクラッチ)」
写真:伊島薫
1983年出版。
今から27年も前の写真集だ。
被写体は、当時、音楽活動を休止してニューヨークで暮らしていた佐野元春。
当時14歳の僕には、まだよく理解できなかったけど、
それまでに見たり購入した写真集とは比較にならないほど
洗練された写真集だったことはたしかだった。
なんせ、それまでに宝物のように所有していた写真集は、
キョンキョンの「わたし、今日子」だったからね(爆)
はじめてこの「SCRATCH」を見たのは、その年の晩秋の頃だったような記憶がある。
3歳年上の女性が貸してくれた。
オフコースの大ファンの女子高生だった彼女が、どうして佐野元春の写真集を
持っていたのか僕は少し不審がったが、後で聞いたら同級生の元春ファンから
借りた、と言っていた。
借り物ということもあって、僕は丁寧にページをめくった。
ページをめくりながら、自分の中にこんなに冷静で慎重な自分がいたことに驚いた(笑)
今考えれば、僕の幼い琴線に、グラフィックデザインやエディトリアルデザインが
初めて触れた作品のひとつだったのだろう。
大げさな表現をすれば、今の僕は、この写真集を目にした頃からはじまったのかもしれない。
数週間後、貸してくれた女性に写真集を返した。
それ以降、この写真集を見ることはなかった。
13年後。
それは、僕が27歳の時だった。
暇つぶしにフラッと立ち寄った古本屋の棚で、「SCRATCH」を見つけた。
僕は思わず自分の目を疑い、棚から本を引っぱり出し、
そしてそれが本物だと確認すると、
すぐに財布を取り出して、レジに向かった。
値札なんて見なかった。
今、この写真集は当然のごとく絶版になっている。
インターネットで検索しても、まず売られていない。
オークションで見つけることも稀だ。
どんなに自宅の本棚に書物が増えて、不要な本を売っても、
どんなに時代が進化して、電子書籍の時代になろうとも、
こういう自分にとっての“原石”のような書物は、絶対に手放してはならない。
僕は、そう思う。