rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

シカとウサギ

2012-03-17 23:57:34 | 旅先から
祖父の葬儀で、3年ぶりに北の国へ行った。
3月に訪れるのは、子供のときに彼の地を後にしてから、初めてのこと。
あたり一面雪に覆われているけれど、陽射しはさすがに春めいていた。
最寄の駅から祖父の家に向かう道すがら、3年前には多分見なかった標識が目に留まった。
”シカ飛び出し注意”
驚いて、もしやと雪深い山側に目を向けると、なんと3頭のシカの姿があるではないか。
反対車線の向こうに広がる雪野原には、ウサギと思しき足跡が縦横無尽に点々とついている。
今では、かなり住宅が押し寄せ、街となった地域ではあるが、野生の動物もまた多く生息しているらしい。
たしか、25年位前になるだろうか、道路も太く整備され住宅化が始まった頃、キノコ狩りをしていた人がヒグマに遭遇した話を聞いたことがある。
それ以前、道路が未舗装の砂利道で信号機もない、よく泊まりに行っていた子供のときに、クマ出没と聞いたことがなかったのだが。
開発が進み、住処とした原生林が失われ追い込まれた動物達の生息地と、人間の居住区が、隣接を超えて重なり合うようになったのかもしれない。
いとこに、近年シカを見かけることがあるのかと尋ねたところ、この冬、前を走っていた自動車が道路を横切るシカに衝突するところに居合わせたと話してくれた。
彼女は、シカは群れで行動するので、一頭道路に飛び出してきたら次も続くと思って注意していると言った。
自然を身近に感じられるのは楽しいだろうと、のんきなことを言ってはいられないようだ。

どうしてこうも人間は、アメーバーのように周囲を侵食していくのだろうか?
先住している他の動物や植物に敬意を払わないのだろう?
棲み分けをしてこそ、互いに心地よく生きていけると思う。
生態系などを考慮して、人間の活動領域をある程度限定し、その中を効率よく活用すべきではないか?
環境汚染も限定的に最小限度の影響で封じ込め、かえってそれが人間の生存活動の負の部分を浄化してくれるような気がする。
勝手な線引きになるが、そもそも自然界において協議した上での棲み分けをしているはずもない。
しかし、棲み分けをしないで、互いの生命活動を維持することはできない。
命に対する謙虚さを、自分の知恵に驕れる人間に是非とも持ってもらわなくては、かえって己が命を滅亡に向かわせることになるだろう。

北の白銀の大地に見た野生動物の姿に、こんなことを思った、このたびの帰郷であった。