rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

まだ注視できない、3月11日の映像

2012-03-04 22:41:50 | 随想たち
NHKスペシャルで、3月11日の特集をしていた。
冒頭に、断りの文が流れた。
衝撃的な映像が多く含まれるので、無理をしないで視聴して欲しいと。
その心積もりで、見始めた。
各地の揺れの状況から始まり、当時の記憶が蘇って、心臓の鼓動が速くなる。
しかし、時系列からいって、津波の映像に変わるとき、もう耐えられなくなった。
番組の最初に映し出された津波の映像と、それについている音声を数秒見たときに、音が耳に焼きつき、心臓がきりきり痛んだ。
その連続には、到底耐えることはできないと、テレビを消した。
恐怖から絶望へと変わる人の叫びが、今も耳にこだまする。

ちょうど一週間後の日曜日、あの日から1年経つ。
これからも、しばしば辛い映像が、テレビの画面に映し出されるだろう。
忘れ去るのはいけないし、忘れることはできそうにもない。
生きている人にできることは、またこのような天災が起きたときに、どれだけ被害を少なくできるかを考え、努力することだ。
そして、前向きに明るく生きていくことだ。
地球に生きているちっぽけな生き物だから。

大航海時代栄華の面影を色濃く残す、ポルトガル:リスボン

2012-03-04 01:08:32 | 街たち
「にじいろジーン 地球まるごと見聞録」ポルトガルのリスボン。
かつて、世界の海の覇者としてスペインと双璧をなしていたポルトガルの首都リスボンは、往時の栄華を街のいたるところに残している。
大西洋に注ぐヘージョ川の河口に位置するが、起伏に富んだ地形にあるため「7つの丘の都」の異名を持つ。
狭く勾配のある道を、黄色い路面電車が走り、市民の大切な足となっている。
そして、天空に聳え立つサンタ・ジェスタのエレベーターにある展望台からは、赤褐色の屋根を頂く街並を一望できるという。

ジンジーニャというさくらんぼの甘いリキュールは、食前酒として市民に親しまれている。
ジンジーニャを専門に扱うショットバーに、気軽に飲みにいくライフスタイルは、ちょっと憧れてしまう。
ポルトガルの郷土料理とも言えるバカリャウのグラタン。
バカリャウとは、塩漬け鱈の干物。
このバカリャウを水で戻し、オリーブオイルとニンニクで炒め、細かく砕いたトウモロコシパンをのせてオーブンで焼き、茹でた菜の花をのせるとできる。
ポルトガルは、世界一鱈の消費量が多く、イギリスとフランスに鱈の漁業権で争ったほどだとか。
ほかに、カタプラーナ鍋で作る無水料理も、ポルトガル名物。
カタプラーナ鍋とは、底の丸い鍋を二つ合わせたような形をし、外側は銅、内側が錫でできているため、熱伝導がとてもよい。
モロッコなどにあるタジン鍋と似通った具合で、材料の水分で調理する。
ガウロパという魚とそのほかのシーフードにたくさんの野菜を入れたガウロパのカタプラーナ鍋、さっぱりしながらうまみが凝縮して美味しそうだ。
パン・デ・ローは、カステラの元になったスイーツ。
中は半熟状態でとろりと甘く、最近日本でも食べられるところがある。
そのときに必ず一緒に飲むものは、レモン湯。
レモンの皮にお湯を注ぎ、好みで砂糖を入れる。

リスボンからバスで2時間半のところにある、コインブラ。
モンデブ川沿いにある、ポルトガル第3の都市で、13世紀にできたコインブラ大学がある学園都市。
コインブラ大学には、世界一美しいといわれる図書館があり、その蔵書40000冊。
歴史的に価値の高いこの蔵書は、もちろん学術研究に勤しむ学生に開かれている。
ところが、この図書館の下には、牢屋があるのだ。
むかし、遅刻したり校則違反者などを戒める為に、授業に出席する以外はこの牢に入れたらしい。
ポルトガルの民謡的なものにファドがあるが、コインブラのものはいささか違うところがある。
男性のみが演奏し、歌を歌うのだ。
これもまた昔のこと、コインブラの男子大学生が、夜に好きな女性の家の前で歌ったのが始まり。
それに、聞惚れた周りの家の人たちが、拍手の代わりに咳払いで喝采を送ったのが慣わしとなり、いまでもコインブラファドには咳払いで褒めるという。
この街にあるジェロニモズ修道院発祥のエッグタルトは、まわりがサクッとしたパイ生地で、しっとりしたカスタードとの食感が小気味いい。
このタルトにたっぷりのシナモンパウダーをかけて食べるのが、美味しいらしい。

ポルトガルは、ヨーロッパのバブル経済にあまり恩恵を受けなかったのだろうか、映し出される街の光景に、現代風の建物や浮かれた建築物が見えなかったように思える。
ギリシャの経済破綻が明るみに出るしばらく前から、ポルトガル経済が危機的だと報じられていた。
スペインも同様だが・・・
だから、いい意味で歴史的景観が守られているのか。
大航海時代、世界の富財宝が集中したポルトガルのリスボン、栄枯盛衰を味わった街。
当時の新大陸バブルが弾けて以来、経済のカヤの外にあり続けてきた。
それでも、外から見るとそんなに不幸そうには見えない。
かえって、泰然自若として人生の豊かさを感じる。
いったん成熟を極めたものは、緩やかな下降線を辿ってあるところで落ち着くのが、自然の成り行きなのか。
それから無理に成長しようとすると、修正の利かない歪ができ、急激な破滅への道に、周りともども道連れに向かいそうな気配が、今の世界にあるように思える。
0.01%の特権階級以外は、とめどない欲望に足をすくわれ、負のスパイラル、内ゲバ、共食いの状態になり、
滅びの道を辿りそうだ。
99.99%のうちの10%自らがつまずくのか、それとも0.01%が仕掛けたシナリオなのか。
それはともかくも、ポルトガルの美しさは、大変魅力的だ。
均一化されていないこのポルトガルの美を、これからも大切に守り抜いてほしいと思う。