大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・堕天使マヤ 第一章・遍歴・4《試行錯誤②一枚のビラ》

2018-12-30 06:34:41 | ノベル

堕天使マヤ 第一章・遍歴・4
《試行錯誤②一枚のビラ》
       



 N駅で降りると、マヤは自分と同じ背格好の女性を探した。

 いつまでもM高校の制服姿だと補導されかねない時間帯になる。ちょうどバスターミナルから都心の大学に通う女子大生が三人歩いてきた。
 どうやら、左端のフェミニンボブの子の家で、夕べは泊まり込みで遊んでいたようだ。
 すれ違った、ほんの一瞬で、服を取り換えた。
「え、優子、どうしてセーラー服!?」
「え、ええ……どうして!?」
「なんか、マジック? すごいよ、なんかいけてるね」
「うん、案外かわいいじゃん!」

 若い女は気楽である。バッグなどの持ち物がそのままだったので、そのマジックのような現象をいぶかしがりながらも楽しみ、そのまま改札の中に入っていってしまった。
「案外アッケラカンとしてるんだ」
 改めてマヤは、ショーウィンドーに映る自分の姿を見た。
 チノパンに、ピンクのカットソーとタンクトップの重ね着。まあ、量販店で五千円もあれば揃うナリだ。

 駅前のコーヒーショップで、少し考えてみることにした。

 お金は、無人のATMに手をかざすだけで、二十万ほど下ろした。監視カメラには近所の国会議員の秘書の姿を映しておいた。事実ATMは、その国会議員の口座から引き落としてくれた。堕天使にはこの程度のことは朝飯前だった。

 コーヒーとティラミスで一時間近く考えた。

 自分が、何かをやらかして人間界に落とされた堕天使だということしか分からなかった。マヤという名前も、たまたま体をコピーしたのが摩耶という子だったので、それをカタカナで使っているだけだ。名前も使命も分からない。昨夜は摩耶の葬式で佐和を殺した。
 ちょっと考えてみた。特に悪いことだとは思わなかった。摩耶を殺したのは佐和だし、瑠璃の障がいも治してやることができた。佐和の魂は、霊界で再教育され、何年か先に生まれ変わる。ちょっとした人間界の修正をしてやった……そんな気分になった。

 とりあえずは、こんなふうに……やっていくしかない。という結論に達した。

 店を出てしばらく歩くと、身につけている下着が気になった。いくら洗濯してあるとは言え、下着ドロボーが盗んできたものである。

 開きはじめたショッピングモールのランジェリーの店で新品を買い、店をでたところで瞬間的に身に付けた。もとの下着はショップの紙袋に入れてゴミ箱に捨てた。
「おや……」
 ゴミ箱の中に、何枚かの同じビラが捨ててあるのに気が付いた……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする