大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベル・トモコパラドクス・87『S市司教の秘密・1』

2018-12-13 06:55:25 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・87
『S市司教の秘密・1』
        

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであった……さて、今回のターゲットが絞り込まれてきた。

 ドイツの司教が贅沢三昧で非難されている。

 S市に向かう車の中で、そのニュースを聞いた。自分の住居に何十億円も使い、インドの貧民街視察のための飛行機にファーストクラスを使うなど、司教にあらざる振る舞いにバチカンは対応に追われている。という内容だった。

「中世ヨーロッパじゃあるまいし、こんなのが今時いるんだな……」
 ジャック(滝川)は、S市へのルート66を走りながら呟いた。
「……あら、他の放送局でも同じことを言ってる」
 ジェシカ(紀香)がチューナーを回しながら言った。
「このあたりはカトリックが多いから関心が高いのよ」
 ミリー(友子)は、そう言いながら、少し違和感を感じていた。

 S市に入って最初に見つけたレストランで食事をしていると、奥の席で聖職者の略服を着た老人が、助祭一人を相手につつましく食事をしているのに気づいた。
「今まで気づかなかった」
「静かに食事をされているんだ、邪魔しちゃいけないよ」
「そうよ、ミリー。あなたもしずかにお上がりなさい」
――でも、あの二人、なんの思念も感じない――
――聖職者だ、そういう人もいるさ――

 三人が食事を終えかけると、十数人のマスメディアと思われる男女が、ドカドカと入ってきた。

「デイリーSのトンプソンです。司教、シカゴの大司教座での様子はどうだったんですか?」
 これを皮切りに、各メディアがそれぞれに口を開いた。
「みなさん、ここはレストランです。他のお客さんもいらっしゃいます。どうか教会の司祭館でお待ちください、あと……五分でみなさんのお相手をいたします」
 穏やかに司教が言うのでメディアの人間は、ゾロゾロと教会に向かった。少しあって食事を終えた司教と助祭は、ミリー(友子)達にも頬笑みを残して、教会へと向かった。
「ドイツの司教とは大違いだな、マスコミの連中も大人しい」
「人徳のある司教さんのようね。お供もひとりだけだったし」
――でも、少し変。平穏で澄み切った心しか感じない――
――聖職者としても?――
――メディアの人から読めたけど、司教の弟は、このS市の水道局長――
――水道水の成分がおかしいって言ってたな?――
――T町の水は100%このS市から買ってる――
――少し調べてみるか――

 三人はレストランを出ると、プレスの人間に変態して教会の司教館を目指した……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする