大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

誤訳怪訳日本の神話・37『ヌナカハヒメとスセリヒメ』

2021-04-27 09:46:08 | 評論

訳日本の神話・37
『ヌナカハヒメとスセリヒメ』  

 

 

 越の国はヌナカハヒメの館、その門前に立って、ヤチホコノカミ(オオクニヌシ)は歌を詠みます。

 最初、返事は返って来ませんが、何度か門の中に歌を投げ入れている(ヌナカハヒメの従者が取り次いだのか)うちに返事が返ってくるようになり、ヤチホコノカミは邸内に招じ入れられていい仲になります(n*´ω`*n)。

 しばらくは越の国に留まって楽しく暮らしたと記紀神話にはあります。

 ヤマガミヒメ、スセリヒメと数えて三人目の妻です。

「この調子で、もっと妻を増やしなさい!」

 ヌナカハヒメが言ったかどうかは分かりませんが、ヤチホコノカミは西日本のあちこちに出かけては妻を増やします。

 ヤチホコノカミ(オオクニヌシ)はヤチホコ(沢山の武器)を背景に西日本のあちこちを従えます。

 武力を背景にしていますが、力ずくという感じではなかったんでしょうねえ。

 地方の神々を妻にする(きちんと地方の神々を祀る)ことで信用を得て行ったのだと思います。

「越の国だけじゃなくて、山の向こうの、そのまた向こうの湖の国にも行って、豊かで平和な暮らしを広めてあげてください。わたしたちには子供も生まれましたし(^▽^)/」

 二人の間には建沼河男命や建御名方神(たけみなかたのかみ)=諏訪大社主神などが生まれています。

「え、いいの?」

「わたしのところだけが平和では申し訳ないです。あなたはスサノオノミコトからウツクシタマノカミの名もいただいているのですから」

「あ、それ忘れてたけど、めちゃくちゃイケメンの男って意味なんだよなあ(〃´∪`〃)」

「いいえ、魂までも美しい……」

「そ、そう? じゃ、じゃあ行ってみようかなあ(^_^;)」

 鼻の下を伸ばしてヤチホコノカミはあちこちに足を延ばして妻を増やしました。

 タキリヒメ(アマテラスがスサノオの剣を嚙み砕いて生まれた女神)、カムヤマタテヒメ、トトリノカミ(鳥取県の語源になった)などがそうですね。

 収まらないのがスセリヒメです。

「おい、ヤチホコ! オオクニヌシ! オオナムチ! いや、アシハラシコオ!」

「あのう……なんと呼んでくれてもいいんだけどね、そのアシハラシコオってのは日本一の不細工男って意味だから、ちょっと傷つく……」

「ふん、アシハラシコオで十分よ! それに、シレっと意訳してんじゃないわよ! シコオってのは不細工なんて生易しい意味じゃないわよ、一円玉ってことよ、一円玉!」

「え、なにそれ?」

「これ以上は崩せないって意味よ! それくらいに醜いって意味よ!」

「アハハ、うまいうまい(^▽^)/」

「笑ってごまかすなああ!!」

「ほんと、お父さん(スサノオノミコト)の直感は正しかったわよ、ほんと日本一のクズよ! あんたは!」

「いや、だから、これはね、ヌナカハヒメも言ってるけど、世の中を平和にするためなんだよ。うん、世界平和のためなんだよ。いや、ほんと、タケミナカタノカミが生まれてこなきゃ信濃国とも上手くいかなかったし、トトリノカミが生まれなきゃ『鳥取県』の名前も無かったわけだしさ」

「そいうことをシレっと言ってしまえる男なのよ! あんたみたいなのがいるから日本の男の浮気が停まらなくなんのよ!」

「いい加減にしろ!」

 ヤチホコノカミはスセリヒメに背を向けて馬の鐙に足を掛けます。

「いいえ、やめないわ! 今度は、ヤマトに行くつもりでしょ!? お願い、ヤマトだけはやめて!」

「うっせえ! ヤマトで待ってる女(ヒト)がいるんだ!」

「ヤマトに行ったら、今度は、あんたが呑み込まれるから、お願い、わたしのヤチホコ……」

 スセリヒメは手綱と鐙に手をかけビクともしません。

 手綱と鐙に掛けた手からは血が滲んでいます。父のスサノオによく似た黒目がちの瞳からは滂沱の涙が溢れ、涙の川となって道を隠してしまいます。

「……わかった、わかったよスセリヒメ。もう、どこにも行かないよ、この出雲で静かに暮らすことにしよう」

「そうよ、わたしのアシハラシコオ……」

 こうして、ヤチホコノカミは、やっと出雲に腰を落ち着けました。

 スセリヒメが最後にアシハラシコオと呼んだので、ヤチホコは、それ以上にはモテることもなくなり、大国主命として落ち着きました。

「でも、やっぱり心配!」

 スセリヒメは、亭主が浮気の虫を起こさないように、出雲大社だけは日本一の美しい巫女さんで揃えましたとさ……。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ライトノベルベスト『となりのアソコ・1』

2021-04-27 06:28:44 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト

『となりのアソコ・1』  




 となりのアソコが気になってしかたがなかった。

 アソコとは、となりの東側、三階部分の屋根の下、一ミリほどの亀裂。軒下から斜めに十センチほどのところで、外から見ただけでは絶対に分からない。少し強い雨が降った後、うっすらと亀裂の形に水が染み込んだ跡が出る。雨がやんで半日もすると消えてしまうし、表の通りからは分かりにくいせいか、もう何カ月もそのままになっている。あたしの三階の部屋からは、お隣りの壁まで一メートルほどなのでよく分かるんだ。
 きっと、家の中は水が柱や壁づたいに染みこんで家を傷めて居るに違いない。注意してあげたいんだけど、やりようもない。

 だって、となりは一年ちょっと前から空き家だから。

 その空き家に購入希望者が来た、若い夫婦だった。
 頭金に貯金を使って、あとは三十年ローン。そんなとこかな……と、思った。
 言ってあげようかな……と、思ったけど、不動産屋さんにしてみれば営業妨害になる。
 それに、中に入って、ちょっと気を付けて見れば、すぐに雨漏りの跡なんかが見つかって分かってしまうだろう。
 あたしは、そう独り決めして、なにも言わなかった。

 ところが、その夫婦は、二回下見に来たあと、その家を買ってしまった!

 この日曜日には、四トンの引っ越しトラックに、ちょっと足りない程度の家財道具を運んで、いそいそと引っ越してきた。
「となりに越してきました、或角(あるかど)です。どうぞよろしく」
 その晩には、故郷の特産品だというチョコレートを持って引っ越しの挨拶にきた。
「珍しいお名前ですね。或角さん……」
「失礼だぞ、お名前のことなんか」
 苗字に興味を持ったお母さんを、お父さんがたしなめた。
「ああ、ボク帰化してつけた苗字なんです。もともとはアルカードって、当て字です」
「ホホ、そう言えば、ご主人なかなかのイケメンでいらっしゃる」
「いえいえ、こちらのお嬢さんこそAKBにいてもおかしくないほど、可愛くっていらっしゃいますよ」
「ほんと、柏木由紀に似てらっしゃるわ」
「あ、てかSKEの松岡菜摘に似てるなあ」
 言われたあたしはドギマギして、それどころではなくなった。
「すみません。あたしたち、夫婦揃ってアイドル好きなもんで(^_^;)」

 で、壁のヒビは言えなくなってしまった。

「ね、お母さん、あの壁、ヒビ入ってるでしょ?」
「そお……光の加減で、そう感じるだけじゃない。なんかあったら、或角さん自身が不動産屋さんに言うわよ。奈月、あんまり人の家のこと言うんじゃないわよ」
 お母さんに言ってみたけど、一言のもとに却下。
 ま、常識的に考えれば、お母さんの言う通りだし。あたしの目の錯覚かもしれないと納得。奥さんは、可愛い人だったけど、なんてのか、一目では覚えられない可愛さ。日本人の二十代の女の人のいいとこ取りをしたら、こうなるって感じ。ご主人は阿部寛に似た、やっぱ外人さん。だけど、日本で生まれたのか、育ちが長いのか、物腰が日本人で、言われてようくみなければ分からない。ま、美男美女の夫婦であることには違いない。

 困ったことが、二つ起きた。

 一つは、隣の或角さんちの……その……気配が感じられること。その……若い夫婦でしょ。で、夜の気配が、なんちゅうかもろ聞こえちゃう。女子高生のあたしには刺激強すぎ!
 で、その気配が、アソコから聞こえて来るような気がする。以前住んでいたのはガキンチョが二人もいる田中さんだったけど、兄妹ゲンカが夫婦ゲンカに発展したけど、ご主人が怪我をして救急車が来るまでは気が付かなかった。
 ま、それだけ、互いに遮音性に優れた建て売りではある。

 季節がら、エアコンつける時期でもないし、網戸ぐらいで寝たいんだけど、窓を閉めて寝ることにする。それでもなんとなく気になるのは、あたしが、そういうHな妄想をしたくなる年頃のせいかもしれない。

 寝不足か……と、お父さんに言われてしまった。

「いろいろ考える年頃なの」
 そう言うと、ちょっと考えてから、こんなことを勧めてくれた。
「オリーブオイルを飲むと、よく眠れるよ」
「え、オリーブオイル!?」
「ああ、ギリシャ人なんか、よくやってるって。まあ、最初はコップ1/4ぐらいからやってみな」
 言われて飲んでみると、これがいけた。するっと喉に入って油っぽさがない。おかげでグッスリ眠れるようになった。

 そうそう、もう一つ気になること。五月下旬並の暖かさだった日、家に帰ると、部屋がムッとしていたので、窓を開けた。爽やかな風が吹き込んで良い気持ち。で、そのまま夕方に。
 夕飯を終えて、開けっ放しの窓。アソコから気配がした……て、Hな気配じゃなくて、なにかが居る気配。

 そっと、窓から覗くと、大きくなったアソコのひび割れから二匹のコウモリが飛び立っていった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真凡プレジデント・65《体重は何キロありましたか?》

2021-04-27 06:04:38 | 小説3

レジデント・65

《体重は何キロありましたか?》    

 

 

 

 人間の体と言うのは不思議だ。

 

 危機的状態になると脳から麻薬的な物質だったか信号だったかが発信されて痛みや恐怖を緩和するらしい。

 お姉ちゃんがMCをやった特集番組で言っていた。

 災害に遭った人が瓦礫に埋もれて、助けられたのが72時間後。ふつう36時間~48時間が限度で、誰もが助からないと思っていて。救助隊もほとんど遺体捜索のつもりだったのが無事に発見される。

 助けられた本人は72時間の憶えがなく、せいぜい24時間の感覚だったとか。

 つまり、ほとんどの時間、脳から発せられたものによって、いわば冬眠状態のようになっていて助かったのだ。

 

「72時間たったんですか……」

 

 救助された時、朦朧とした意識の中で、そう聞いたそうだ。

 実際は23時間あまりだった。

 生徒会の三人が車の特徴を覚えていて、警察は慎重に捜査。

 途中、車を乗り換えたので手こずったそうだが、今の時代、あちこちに防犯カメラ、それに行き交う車には車載カメラがついている。

 わたしが拉致されたニュースがテレビやネットで流れて、多くの人が情報を提供してくれた。

 でもって、乗り換えた車の特定も進んで、発見に至ったということらしい。

 

 フリーアナウンサー田中美樹の妹の田中真凡さんが誘拐される!

 

 そういうキャプションで世間に知れ渡った。

 なつきが撮ってくれた写真が公開された。上から下までお姉ちゃんの服で固めて、頭には毎朝テレビのキャップを被ったのが。

 世間の興味は、田中美樹 の妹の 田中真凡

 半分の人たちは田中美樹が誘拐されたと思ったらしい。

 だから、こんなに情報提供がなされ、23時間と言うスピード発見になった。

 毎朝テレビは、世間の怨嗟の中に潰れて行ったが、看板女子アナ田中美樹の人気は絶大だと再認識させられた。

 

 ミイラになることも、オモラシすることもなく救助されたわたしは、それでも23時間を確認した後意識を失った。

 

「体重は何キロありましたか?」

 念のための検査でお医者さんに聞かれる。お医者さんでも答えるのは恥ずかしい。

「あ、えと……53キロくらいです」

「……だよね、健康診断でも、そうなってるよね」

 知ってるんなら聞かないでほしい。

「体重がなにか……」

「もう一度体重計に乗ってもらえます」

「は、はい」

 おそるおそる足を載せる。

「やっぱ、42キロだね……違う体重計を使ってみよう、あ、それじゃないほう」

 看護師さんが手にしたデジタルをキャンセルして、お医者さんが指差したのはレトロなアナログ体重計というよりはハカリだ。

 そっと足を載せる。

「……42キロです」

 キッパリと看護師さん。

「きみ、載ってみて」

 言われた看護師さんは、一瞬嫌な顔をしたが、きちんとハカリに乗る。

「……62キロ……、狂ってないよね?」

「お昼を食べてなければ61キロです」

 可愛く見栄を張った看護師さんだけど、それには構わずに、わたしを見た。

「怖い目に遭って体重が減ることは、ままあることなんだけど、それでも10キロはありえないなあ」

 

 わたしって、10キロも減った?

 

 そのあと、女医さんに交代して体の隅から隅まで調べられた。

「この体格なら50キロは無いとおかしい……」

 数分腕を組んだ女医さんは、なにか思い立ったようで、ポンと膝を叩いた。

「ちょっと、脳波を計ってみましょう」

 

 ラグビーのヘッドギアみたいなのを被らされて脳波を計ることになった。

 

「この脳波計おかしい、ちょっと……」

 女医さんは看護師さんに目配せ、看護師さんは――またか――という顔をしながらヘッドギアを装着。

「やっぱ、正常だ……」

「どこがおかしいんですか?」

 思い切って聞いてみた。

「あのね……見た方が早いわね」

 女医さんは、レシートのロールに似た計測用紙を示してくれる。

 素人目にも分かった。

 脳波を表すグラフが二重になっている。

 つまり、二人分の脳波がダブっているように見えるのだった!

「いや、二人分の脳波よ」

 女医さんはキッパリと言い放って腕を組んだ……

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡    ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  田中 美樹    真凡の姉、東大卒で美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、いまは家でゴロゴロ
  •  橘 なつき    中学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き
  •  藤田先生     定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生     若い生徒会顧問
  •  柳沢 琢磨    天才・秀才・イケメン・スポーツ万能・ちょっとサイコパス
  •  北白川綾乃    真凡のクラスメート、とびきりの美人、なぜか琢磨とは犬猿の仲
  •  福島 みずき   真凡とならんで立候補で当選した副会長
  •  伊達 利宗    二の丸高校の生徒会長
  •  
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする