大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE滅鬼の刃・20『ハウルの動く城 動かないお祖父ちゃんの腕』

2021-04-05 13:47:01 | エッセー

RE エッセーノベル    

20・『ハウルの動く城 動かないお祖父ちゃんの腕   

 

 

 お祖父ちゃんが不調なので、今回もわたしが書きます。

 

 大したことは無いと思うんですけど、背中や肩が痛くてかなわないみたいです。

 パソコンのキーボードに向かって、打った文章の確認にのために首を上げただけで肩から首にかけて電気が走るんだそうです。

「ちょっと筋違えただけやから(#^-^#)」と言い訳していますが、どうなることやら。

 実は、お祖父ちゃん、先月エアガンを買ったんです。

 訳は、こうです。

 最近、糖尿病の数値が思わしくないので、糖類をひかえているお祖父ちゃんです。

 お祖父ちゃんは、文章を書く時には、なにかしら口に入れる習慣があります。

 タバコもお酒もやらないお祖父ちゃんは、もっぱらお菓子を食べています。

 お煎餅とかポテチとか柿の種とか、歯ごたえがあるものが好きで、ケーキやチョコレートとかはやりません。

「いや、下戸の作家はお菓子食べてるやつが多いんだ」

「ほんとう?」

 と聞くと、浅田次郎さんとか、正岡子規とかを例に挙げました。

 お酒が飲めない正岡子規は、妹やお母さんに頼んで、町内のお菓子屋さんに通ったもんだと言います。

 浅田次郎さんも、お酒がダメな作家さんで、アイデアや文章に詰まると、すぐお菓子に手が出てしまって困るとエッセーに書いているのを見せてくれるお祖父ちゃんです。

 お祖父ちゃんも心がけていて、お菓子は生協に頼んだ子供のおやつ用の小さなパックに限っていたんですが、それでもお医者さんに叱られるので、エアガンに替えました。

 お菓子の代わりがエアガン?

 ちょっと不思議ですよね。エアガンを食べているわけではありません。

 実は、こうなんです。

 お菓子を食べる代わりにエアガンを空撃ちしているんです。

 弾が飛び出すとエアガンでも怖いのですが、空撃ちだと……やっぱりやかましいですね(^_^;)。

 バシ! バシ! バシ!

 三回ぐらいで収まる時もあれば、百回撃ってもダメな時もあります。

 でも、スナック菓子を一袋(300キロカロリー~500キロカロリー)食べてしまうよりはいいんです。

 エアガンには糖質もカロリーもありませんからね(^_^;)。

 

 お祖父ちゃんは、コルトガバメントとS&Wのリボルバーを使っていました。

 二丁ともエアコッキングと言う奴で、撃鉄や遊底をガシャンと引いて撃つんです。

 それが、滅法硬いです(^_^;)。

 ちょうど、この『滅鬼の刃』を書いている時に、背中と首筋にギクっときたそうです。

 意地っ張りなお祖父ちゃんは、よっぽどなければ「痛い!」とは言いません。

 特に、孫のわたしの前では、言いません。

 すぐに湿布をするとか手当をすればいいんですけど、それも、わたしが心配すると言って、わたしがお風呂に入っているうちに、コッソリやっています。

 湿布って臭いますから、内緒にしても無駄なんですけどね。

 それで、様子を見ていたんですけど。

 ある程度マシになっても、どうも、パソコンの前に座って文章を書くのは億劫なようです。

 

 一昨日のテレビで『ハウルの動く城』をやっていました。

 ネットサーフィンの真っ最中のお祖父ちゃんを視野の片隅に入れて、夕食の片づけやったり洗濯物を畳んだり、雑誌をパラパラめくりながら、ボンヤリ見ていました。

 ハウルの部屋が出てきて、思わず笑ってしまいました。

 散らかりようがお祖父ちゃんの部屋にソックリだからです。

 荒れ地の魔女の呪いで百歳のオバサンになったソフィーが、きれいに掃除して、全部片づけてしまいます。

「ソフィー! 僕の部屋片づけただろ!」

 下のダイニングキッチンを片付けているソフィーに目を剥いて怒るハウル。

 部屋を片付けられてしまうと、ハウルは魔力を失います。なんか、水っぽくなって溶けていっちゃうんですよね。笑ってしまいます、あのグダグダグニャグニャのハウルはお祖父ちゃんそのものです。

 ただ、ハウルと違って、なんの魔力もありませんが(^_^;)。

 わたしが、お祖父ちゃんと二人暮らししているのは、お祖父ちゃんのハウル的な性格と言うか性癖が原因の半分なんですが、それは、またいずれ。

 

 

http://wwc:sumire:shiori○○//do.com

 Sのドクロブログ☠!

 

 クソジジイが七十になって、やっと二十歳になるあたしってどーよ!?

 今さら、身の不運を呪ったりしないけど、ほんと、心配なんですけど!

 大学にはいきたいし、就職しても、トーブンは独身のまんまで遊んでいたいって、女子高生としては普通の願望だと思うんですけど!

 そのためにはさ、健康でいてくれなくちゃ困るわけですよ!

 お菓子食べながらキーボード叩くのは自由だけどもさ、体は壊さないでよね!

 お菓子を控えてエアガンもけっこうなんだろーけどさ。

 肩と背中が痛くなったのは、エアガンの撃ちすぎじゃないと思うよ。

 クソジジイ、高血圧で肝臓悪くって、去年の秋からは糖尿だよ。

 コロナが第四波になろうかって今日この頃、クソジジイはコロナに感染したら一発だからね。

 志村けんとか相撲取りがコロナで死んじゃったてニュース聞くたびにハラハラしてんだよ。

 クソジジイ自身気にしてるのは、この一年電車に載ったり人に会ってないことでも分かるよ、分かってるよ。

 でも、口にしたら言霊ってあるじゃん。

 本当になってしまうんじゃないかって……だから「筋違えたあ……」って言っても否定しないんだよ。

 たぶん、自分でもヤバいと思ってるんだよな。

 ネットで検索したら、糖尿病の症状に、手足の先の痺れとか背中が痛くなるとかあった。

 あたし、まだ十七歳だからね。

 老人介護で、あたしの人生メチャクチャとか、まじ勘弁して!

 ハウルに掛けたクソジジイの事、あれこれ書きたかったけど、また今度!

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かの世界この世界:179『今度は無事に……!』

2021-04-05 08:57:41 | 小説5

かの世界この世界:179

『今度は無事に……!』語り手:テル(光子)    

 

 

 今度は男神のイザナギの方から声をかけた。

「おお、なんと美しい! こんなに美しい女の人に出会うのは初めてだ! なんか、からだが震えてきて止まらなくなりそうだよ!」

「そういう、あなたこそ、この上もなく美しく頼もしい男です! あまりにもたくましいので、まともに目を合わせることもできないわ!」

「そう言わずに、目を合わせて……」

「合わせるのは目だけですか(*ノωノ)?」

「そ、それは言わぬが花……(;'∀')」

「期待も、あそこも膨らんで……(;^_^」

「そ、それでは(#゚Д゚#)」

「あなたぁ……ん♡」

 

 ゴックン

 

 洞に身を潜めた我々は思わず生唾を呑み込んだ。

「す、す……すごい!」

 鼻血を押えながらヒルデが歓声を上げる。

 わたしとケイトは息をするのも忘れて、見守るばかりだ。

 その……男女の営みとしてもすごいんだけど、生まれてくる子供たちがもごいのだ。

 最初に淡路島……次に四国、隠岐の島、九州、壱岐の島、対馬、佐渡島と続いていく。

 神とは言え、イザナギ・イザナミは人の体をしている。

 地球的規模から言うと、島々は小さな存在だけど、とても人間の体が生み出せるもんじゃない。

 見たままで言うと、こんな感じだよ。

 二人が体を重ね、そこいらじゅうがピンク色に染まって、ハートマークが幾千幾万と飛び交って二人の姿をシルエットのようにしてしまう。魔法少女系アニメの変身シーンのエフェクトに似ている。

 やがて、二人の体が重なったところ(エフェクトに隠れて見えないんだけど)から産声が上がり、光の球が生まれ出てきて、空中で人の形になったかと思うと、海上を沖の方に滑って行って島の形になる。

 そして、島々たちはオノコロジマを周りながら、次の弟妹が生まれるのを待っている。

「あ、次は難産みたい!」

「身を乗り出すな!」

 ケイトを押さえ込んだのがきっかけのようになって、イザナミの喘ぎ声が高くなる。それをイザナギが庇ってやって、イザナミの呼吸が整う。

 ヒー・フーー ヒー・フーー ヒー・フーー

「おお、ラマーズ式呼吸法か!?」

「ヒルデも静かに!」

「す、すまん……」

 ラマーズ呼吸法が千回も続いたころに盛大な産声が上がって、ひと際元気な赤ちゃんが生まれた! 

 生まれた子は、一瞬人の姿になったあと、光の球になって滑っていき、ひと際大きな島になった。

 あまりの大きさに、先に生まれた兄姉たちは、さらに沖に押しやられたが、それが嬉しいらしくケラケラと子供らしい笑い声が木霊している。

「妹よ!」「弟よ!」

 島々は末の子の男女の別も分からないようだけど、自分の好みで好き好きに呼びかけている。

 妹が生まれた時、お父さんに連れられて新生児室に行った時のことを思いだした。

 その時は、生まれてきた赤ちゃんの名前も性別も分からなかったけど、血の繋がりがある赤ちゃんが生まれたことが、とても晴れやかで嬉しかったことを思いだす。一緒に来たお祖母ちゃんやおばちゃんたちも嬉しそうで、我が家の最高の喜びの瞬間だった。

 産後のお母さんに伝えると「光子が生まれた時も同じくらい嬉しかったわ」と言ってくれ、一緒に寝息を立てている妹といっしょにハグしてくれた。お父さんが、その上に覆いかぶさってきて「ちょ、おとうさん!」妹が窒息してはいけないと腕を突っぱった。

 あの楽しい息苦しさを思い出した。

「なんだ、泣いているのかテル?」

「うん、ちょっと、妹が生まれた時のことを思いだして……」

「そうなんだ」

「そ、そうか、わたしには兄妹がいないから想像するしかないが、いいものなのだな、兄妹というものは……」

 ヒルデもケイトも兄妹はいないみたいだけど、このイザナギ・イザナミの子たちの誕生には心打たれるものがあるようだ。

 最後に生まれてきたのは大倭豊秋津島(オオヤマトトヨアキツシマ)、ちょっと長い名前だけど、要は日本の本州のこと。

 こうやって、我々三人は日本の大八島が出揃う現場に立ち会ったのだった。

 

☆ 主な登場人物

―― この世界 ――

  •  寺井光子  二年生   この長い物語の主人公
  •  二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
  •   中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  •   志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

―― かの世界 ――

  •   テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
  •  ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
  •  ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
  •  タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
  •  タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
  •  ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
  •  ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
  •  ペギー         荒れ地の万屋
  •  イザナギ        始まりの男神
  •  イザナミ        始まりの女神 

 

 

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らいと古典『わたしの徒然草63・兵を用ゐん事、穏かならぬことなり』

2021-04-05 06:30:17 | 自己紹介

わたしの然草・63
兵を用ゐん事、穏かならぬことなり』   

 



徒然草 第六十三段

 後七日の阿闍梨、武者を集むる事、いつとかや、盗人にあひにけるより、宿直人とて、かくことことしくなりにけり。一年の相は、この修中のありさまにこそ見ゆなれば、兵を用ゐん事、穏かならぬことなり。


 ちょっと説明がいりますね。

 兼好法師の時代一月八日からの七日間、天下太平を祈って大内裏の真言院で仏事がおこなわれていました。その仏事は阿闍梨(あざり=偉い坊さん)が指導し、武者を集めて、厳重に警備しました。いつからか、こんな行事にも盗人が出るようになり、宿直人(とのゐびと=ガードマン)だって、こんなに、ものものしくなってしまった。一年の吉凶を祈る行事にだって、こんなこの有様。穏かじゃないねという兼好の感想であります。

 つまり、昔は(おそらく、鎌倉時代、平安時代)宮中で穏やかにやってたのですが、世の中が物騒になり、完全武装の武士のオッサンたちの世話にならなくてはならなくなったことを、兼好は嘆いているのですねえ。まあ、鎌倉幕府が倒れ、大ざっぱな歴史区分では、室町時代になるんですが、後醍醐さんというケッタイな天皇さんが出てきて「これからは、自分で政治をやっちゃうからね!」と宣言しました。

 どこがケッタイかというと、歴代の天皇さんは君臨して国の安寧を祈る以外に仕事をしないことが常識でありました。むろん政治なんかはやらない。それをやろうとしたのですから、実にケッタイ、無謀であります。

 後醍醐さんは寝る間も惜しんで、なんでも一人でやっちゃう。それも理想は延喜天暦の治(えんげてんりゃくのち)と言って、平安時代の醍醐・村上天皇の時代がそうであったと思い(摂関を置かなかったので、そう思いこんでいた)自分の天皇としての名前を後醍醐、息子には後村上と名乗るように決めてしまいました(普通、この時代は、天皇さんの名前は、没後みんなで相談してつけた)。後醍醐天皇は、中国の歴史に詳しく、中国の皇帝がそうであったように、「オレだって、やっちゃうもんね!」と、思いこんでしまった人なのです。はた迷惑なこと、この上ない人で、後醍醐さんの「建武の新政」は、二年あまりでズッコケます。その前後の混乱期であるので、宮中といえ、物騒だったのですねえ。

 横道に入りますが、日本史上、最重要な決定をご自分でなさったのが昭和天皇の終戦の決定であります。正確には、何度も開いた御前会議で事が決まらず、時の内閣や重臣たちが天皇陛下に丸投げしてしまったのです。旧憲法の規定からも違法の色が濃いと言えますが。ここに日本の軍国主義と、ドイツ・イタリアのファシズムの大きな違いがあります。

 先日、大阪の新設公立高校の職員室を見る機会に恵まれました。

 ここで、わたしは兼好と同質の「穏やかじゃないね」を感じました。職員室に校内に設置された防犯カメラのモニターがあるのです。機密上、何台のカメラがあったかは言えませんが。しかし学校に防犯カメラは穏やかではありません。
 わたしは困難校の勤務が長く、生徒の行動監視や不審者の侵入には悩まされてきましたが、冗談で「監視カメラ欲しいなあ」と言ったことはありますが、設置が話題にのぼったことはありませんでした。生徒はワルサをするもの、不審者の侵入はあるものと覚悟はしていましたが、その監視は、教師という生身の人間がやっていました。それが、当たり前でした。
「ちょっと、なにやってんねん!?」
「あなた、どなたですか?」
 などと生身の人間が見て言うのと、監視カメラで機械的に警備するのとでは、基本的に有りようが違うと思います。

 今の教師は、首から犬の鑑札のようにIDカードをぶらさげています。
「こんなもん着けられるか!」
 わたしの感覚では、こうなります。出退勤もこれで管理される。昔は出勤簿への捺印でありました。
 むろんIDカードの方が管理にはラクチンです。しかし、これには「人間は不正をする」という性悪説が潜んでいます。出勤簿には、「まあ、ええかげんにやっておきましょう」という大らかさと、信頼感がありました。生徒に対して監視カメラを使わないというのと同列の信頼です。

 IDカードにしろ、監視カメラにしろ、抜け道はいろいろあります。IDカードによる管理は中抜けができます。極端な場合、他人が代わりに機械を通すこともできます。監視カメラは死角を見つければ、いくらでも抜け道があります。
 
 職員室にいる先生達の机上には、パソコンが置かれ、それとお見合いしている先生がたくさんおられました。成績や、その日の出欠状況を確認されておられるのでしょう。
 わたしは、放課後は、個人的な生徒指導ノートに肉筆で書き込んでいました。最後には、仕上げにノートをパラパラとめくります。すると、ひっかかる生徒や事件の記録が目に止まります。その時の筆跡で、そのコトガアッタ時の気分や状況まで蘇ってきます。で、気にかかった生徒を呼び出したり、そのまま家庭訪問に行ったりにつながります。
 教育にはアナログでなければできない領域があると、今でも思います。
 


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真凡プレジデント・43《盗難届を出す》

2021-04-05 05:56:45 | 小説3

レジデント・43

《盗難届を出す》   

 

 

  

 盗難届を出したいんですが。

 

 そう告げると、カウンターの担当さんよりも階段を下りてきた毛利刑事の方が声をかけてきた。

「よう、柳沢君!」

 毛利刑事は地声が大きい、中町署一階ホールに居た者は、いっせいに刑事に視線を奪われた。

 担当さんは、手にした盗難届用紙をヒラヒラさせたまま――この野郎――という顔になっている。

「毛利さん……」

「なんだ、なにか盗られたのか?」

「ええ、盗難に遭ったとしか思えないもんで……」

 まず届を書いてしまわなければ毛利刑事を相手にはできない。

 毛利刑事は、列車事故の時、俺の取り調べを担当した刑事だ。

 列車を止めなければ大事故が起こっていた。俺は瞬時に判断して、すぐそばに飼い主に連れられ散歩途中の犬を抱え上げ、跨道橋の下に投げ飛ばした。

 犬は、脚を骨折しながらも線路上を迫りくる列車の方角に駆けだした。

 犬に列車事故を防ごうなどという思いは無い。理不尽に自分を投げ飛ばした乱暴者から遠ざかりたい一心だ。

 結果的に、カーブを曲がった先に迫っていた列車の運転手が気づいて急停車。その先の線路上に入り込んで立ち往生していた軽自動車は助かって、大事故は未然に防がれた。

 

 しかし、俺の行為は列車往来妨害と動物虐待行為にあたり逮捕されてしまった。

 

 その時の担当刑事……良くも悪くも仕事熱心で、俺の行為が事故回避のための緊急避難行為であると認められるまで攻め続けた名物刑事だ。

「これは盗難に違いないなあ……」

 中町警察横の喫茶店、温くなったコーヒーを飲み干して、毛利刑事は呟いた。

 手元には、俺のタブレット。無理を言ってスタバの向かいの店からコピーさせてもらった防犯カメラの映像が入っている。

 ガラス越しなので鮮明とは言えないが、俺が園田その子にタブレットを見せているのが分かる。デジタル処理で拡大した映像になって、タブレットにUSBメモリが付いているのが分かる。

「このUSBが無くなったんだな……ホシは園田という女の子か同じカウンターあるいは近くの客だなあ」

「園田さんはありえませんよ。USBを抜き取る理由がありませんからね」

「そうは思うが、捜査の基本は全てを疑うところからだからな」

 そう言いながらも、毛利刑事は、両隣の客の姿を拡大しては観察している。

「スタバの防犯カメラを見せてもらえれば、もっとはっきり分かるんですが」

「だろうな……盗難届が受理されれば防犯ビデオの提出が申し出られる……でも、このUSBには何が入っているんだい?」

「世界が壊滅しそうなプログラムが入っています」

「ゲホッ……世界が壊滅ぅ!?」

 おれは、元ハッカーであることを説明した。それで、アメリカのCIAの依頼で作ったウイルスが入っていることを言うと、毛利刑事は零したコーヒーを拭きながら驚いてくれた。

 ここが大事なところだ。

 USBは盗まれたものだ。

 ウィルスは開発しただけでは罪にはならない。ネットに流して特定あるいは不特定のコンピューターに攻撃を仕掛けなければ犯罪行為としては成立しない。

 そう、あれは盗んだやつが悪い。

「そうだな、なんにしろ取られたことは事実のようだな。すぐに盗難届を書け」

 運よく、毛利刑事と確認しあえた。まずは良し。

 

☆ 主な登場人物

  •  田中 真凡(生徒会長)   ブスでも美人でもなく、人の印象に残らないことを密かに気にしている高校二年生
  •  福島 みずき(副会長)   真凡たちの一組とは反対の位置にある六組
  •  橘 なつき(会計)      入学以来の友だち、勉強は苦手だが真凡のことは大好き 
  •  北白川 綾乃(書記)    モテカワ美少女の同級生 
  •  田中 美樹          真凡の姉、美人の誉れも高き女子アナだったが三月で退職、家でゴロゴロしている。
  •  柳沢 琢磨          対立候補だった ちょっとサイコパス 
  •  橘 健二            なつきの弟
  •  藤田先生           定年間近の生徒会顧問
  •  中谷先生           若い生徒会顧問
  •  園田 その子          真凡の高校を採点ミスで落とされた元受験生

 

 

 

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