大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:209『米子のヨネコ』

2023-10-03 16:56:27 | 時かける少女

RE・

209『米子のヨネコ』テル 

 

 

 船通山を下りると、我々は雪舟ねずみのタクシーに、与一殿は天斑駒(あめのふちこま)に乗って北に進んで山陰地方有数の都市、米子を目指した。

 米子は東の美保湾、西の中海に挟まれ、その二つの海の圧力が強すぎて南東方向にはみ出たような形をしている。

 はみ出た部分と挟まれた部分の境目にJR米子駅。

 その駅前広場のオブジェに思わず――パクリ!――と叫びそうになった。

 

 三本の柱が立っていて、その上に、その柱を跨ぐように鉄橋めいた鉄路が空を目指している。

 手前の低いところで校舎の三階あたり、高い方が四階を超えて屋上に突き抜けようかという位置にあって、その上を二両の客車を引いた蒸気機関車が、今まさに夜空に駆けのぼろうとしている。

 ……なんというか、銀河鉄道をモチーフにしたSFファンタジーアニメにソックリ(^_^;)。

 ケイトもリアル世界での記憶があるのか「おお!?」と疑問の混じった歓声をあげ、その性質上ビジュアルにはうるさそうな雪舟ねずみも「おやおやぁ」と控えめに驚いている。

 

「これは、山陰鉄道発祥の地の記念碑なのですよ」

 

 メンバーではない可愛らしい声で注釈が入って振り返る。

 わかめちゃんに妹がいたらこんな感じという女の子がランドセルを背負ってニコニコしている。

桃太郎二号:「な、何者だ! こんな昼間に小学生が、駅前をウロウロしていたらぶっ飛ばされんぞ!」

ケイト:「お、いきなりタメ口で責め立てて、おまえ、一目ぼれしたか!?」

桃太郎二号:「ち、ちがわい!」

 また、ガキ同士の微笑ましい口げんかが始まろうかと思ったら、女の子はランドセルの中身が全部出てしまうのではないかと思うくらいのお辞儀をして挨拶をしてくれる。

女の子:「こんにちは! わたくし、ヨネコと申します。米子を訪れたお客様たちのお役に立つのが、わたくしの務めなのです」

イザナギ:「まだ小さいのに、えらいねえ」

ヨネコ:「いえ、役目ですから」

ヒルデ:「おまえ、ヒトではないな」

ヨネコ:「はい、精霊でございます!」

 思いのほかキリリとした答えに、少したじろいだ。

ヨネコ:「みなさまは、米子の名の由来をご存知でしょうか?」

 米子の由来?

 いきなり地名の由来を聞かれてつまってしまう。

イザナギ:「……ヨネコというのは、米子のことですか?」

ヨネコ:「はい、その通りなのですが、ご説明させていただきます」

 かわいいし折り目正しいし、思わず聞きいってしまう。

ヨネコ:「むかしむかし、米子に長者さまがおられました。何不自由なく穏やかに暮らしていた長者さまだったのですが、たった一つだけ悩みがありました。いつまでたってもお子に恵まれないのです。長者さまは、毎日、毎月、毎年、さまざまな神仏にお祈りされましたが、やはり子宝には恵まれませんでした」

イザナギ:「それは気の毒なことですねえ」

ヨネコ:「それが、長者さまが88歳の時、とうとう奥方さまのお腹に子が宿り、十月十日のあとに元気な赤ちゃんをさずかりました」

みんな:「88歳で!?」

ヨネコ:「それで、八十八を一つに組み合わせ、米と書き、子どもの子を付けて米子と読ませたのです」

イザナギ:「ああ、米はお百姓さんが八十八の手間をかけて育てるんだという言い伝えに通じるものなのですね」

雪舟ねずみ:「お米の大切さと子宝の大切さとを兼ね合わせた心が米子の地名に反映されているんですねぇ」

ヨネコ:「えへへ……」

タングニョ-スト:「そのランドセルの中には何が入っているのかな?」

 そう言えば、背中の大荷物という点ではタングニョ―ストの背嚢と似ている。ランドセルというのは元々は兵隊の背嚢であったものを小学生の通学カバンに流用したものであると聞いたことがある。

ヨネコ:「えと……これはですねぇ……みなさんのお役に立ちたいと言うヨネコの気持ちが詰まっているのです!」

 

 ニコニコと、でも、どこか切羽詰まったような笑顔を向けるヨネコであった。

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ

 

 

 

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・36『50年後 友子の決着・1』

2023-10-03 06:59:10 | 小説7

RE・友子パラドクス

36『50年後 友子の決着・1』 

 

 

 ズゥイーーーーーン

 

 2トンもある隔壁の扉が開いた、50年タイムリープした栞の時代のラボの扉が。

 1メガトンの戦術核にも耐えられる特殊部隊のラボは黒部峡谷の近く、人を寄せ付けぬ岩山の中にある。その存在は防衛省の数人しか把握しておらず、総理でさえ五年以上在職した者にしか伝えられていない。

「母を捕獲しました。安全のため全ての動力をダウンし、僅かでも電脳が起動の兆しを見せたら、即破壊されるようにしてあります」

 栞は無表情に答えた。

 このラボでは、感情を交えたコミニケーションは禁止されている。長官は、無機質に聞いた。

「この二体の君の義体は?」

「ご覧のように、母にプラグインして、万一の場合は、自分の動力とショートさせ、身をもって安全を確保するようにしてあります」

「栞らしい念の入れようだな。しかし、こいつは本当にオリジナルなんだろうな?」

「戦闘詳報は、ダイレクトで送らせていただきましたが」

「たしかに、君と義体二体で友子を捕獲し、フリーズさせた上で動力をダウンさせたところは確認している。しかし、こいつがオリジナルであることは、状況証拠しかないからな」

「しかし、このラボに入るときに、我々も含めてアナライズされたと承知していますが」

「栞と、その義体はな。しかし友子は違う。なんせ、こいつを作ったのはミームの連中だ。詳しいスペックも、シリアルも確認できていない」

「我々のメモリーの確認だけではいけませんか?」

「君のメモリーには主観が入っている。こいつがオリジナル友子であるという」

「では、どのようにして確認を?」

「八十年前、人間だったころの友子を争奪しようとしたことがあるだろう」

「はい、ミームの工作員は始末。母は、瀕死の重傷で、それが義体化のきっかけになったと承知しております」

「そのとき、破壊された工作員の電脳から、一部だけだが、義体の情報を抜き出せた」

 この情報は、栞は知らなかった。

 長官から得ていた情報にはフィルターがかけられていたようだ。

「これを見たまえ」

 長官のガード兼秘書が、モニターに、あるものを写した。

「これは……」

「友子のシリアルだ。3Dのホログラムになっている。我々の技術でもできない高度なものだ。この友子の義体に宇宙人のテクノロジーが使われているのは間違いない」

「まさか、母のシリアルと照合しようと!?」

「ああ、それが一番確実だからな」

「いけません。そのためには母の電脳の一部を起動させなくてはなりません。何が起こるか分かりません。危険すぎます!」

「多少のリスクを冒しても、確認はしなくてはな。おい」

 長官は、直接栞の合成義体に命じた。

「はい、10秒お待ち下さい。安全性の確認を行った上で実施します」

「これで、君たちが本物であることも確認できる。オリジナルの君を含め、栞の義体は俺には反抗できないからな」

「安全性の確認ができました」

「ようし、シリアルを出せ」

 モニターに資料とそっくりなシリアルが映し出され、ラボのコンピューターも百パーセント本物であることを証明した。

 

「よし、確認できた。友子を破壊しろ」

 

 シートに深く座りなおすと、長官は自慢の長い脚を組みなおして静かに命じた。

「……某ロボットアニメの12回目に似たようなシーンがありました」

「12回目……フフフ、最終回だな」

 めずらしく短い感想が交わされて、友子は、その最後を迎えようとした。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
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