大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・059『高校生集会に行った』

2023-10-28 16:32:29 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

059『高校生集会に行った』   

 

 

 10月も末の日曜日、地元の奥宮駅から七つ向こうの谷口(やとぐち)駅に来ている。

 

 なんでかっていうと、ほら、高校生集会。

 MITAKAで盛り上がって――今度は高校生集会に行こう!――って話がまとまったでしょ。

 

 会場は県立大浜高校。

 大浜って言うのは、バイトでいってる結婚式場がある丘。そこを下った団地の先にある大きな街。

 位置関係でいうと、平仮名の『し』、『し』の頭のところに我が家の最寄りの奥宮駅。

 頭のところから二駅下りたところが学校がある宮之森駅。

 宮之森駅を出ると電車は大きな弧を描いて東に向かって『し』の底のあたりでスコーンと開けて海が見える。

 その大海原を右手に見つつ、三つ目の大きな駅が大浜駅。

 

 駅に着くと、いろんな制服の高校生が大浜高校を目指している。

 中三の時の模試を受けたのに似ている。

 

 大浜高校は県内有数の進学校で、なんか校門潜るだけで位負けしそう。

「昔のナンバースクールですからねえ……」

「ナンバースクール?」

「あ、昔は、県立一中とか第三高女とか番号ついてたんですよ。ちなみに大浜は県立一中ですからねグレードが違います」

 ロコは平気なようだ。

 他の子たちはどうしてるのかなあと思ったら、メガホン持って案内係やってる真知子が目についた。

「案内板で分科会の教室を確認してから入ってくださーい。校舎内は土足厳禁です、入り口で持参した上履きに履き替えてくださーい」

 慣れた口調で案内しながら矢印のプラカードを振っている。矢印の先には合格発表の時みたいな大きな張り紙の案内図がマジックで書かれている。

「サブカルチャーはあっちですね」

 ロコは、自分のは後回しにしてわたしの会場を探してくれる。

「じゃ、終わったら、またここで」

 

 政治活動とか安保問題とかは苦手なんで、サブカルチャーって令和のわたしでも付いていけそうな分科会を選んだ。

 他の分科会は普通の教室を使ってるんだけど、サブカルチャーのは視聴覚教室。

 視聴覚教室はおっきくて、マイクとかの放送設備もあるので、きっと他よりも参加者が多いのだろうと思った。

 

 てっきり、マンガ、アニメ、ライトノベル的なのが話題になるかと思ってた。

 

『新宿フォークゲリラ闘争の総括と展望』

 

 え、なに(;'∀')?

 

 上下可動式の黒板の隠れていた裏側のが下ろされると、物騒なタイトルが書かれている。

 いっしゅん頭に浮かんだのは、サバゲーみたいな戦闘服にヘルメット姿のゲリラたちが手に手にフォークを持って、こっちに襲い掛かって来る姿!

 え、サブカルの分科会だよね?

 プチパニックになっていると、ショートカットの大浜女子が制服の袖をまくって現れた。

「ここにいるみんなも承知している通り『新宿駅西口闘争』は当局の不当な弾圧により敗北し……」

『敗北って言うな!』『ナンセンス!』

「失礼、頓挫するに至った。しかし、我々の不屈の精神は、これを頓挫のままに置いておくことは思考を停止することだと思う。昨年の状況を振り返り総括して、新たなる地平を見出し、60年代を通して醸成されてきた我々の文化を失うことになると思う。ここには、この闘争を真に理解するに至っていないノンポリの諸君も多いとと思う。まずは映像資料によって事実を確認するところから始めたいと思う。上映時間は16分。実行委員の諸君は窓を閉め暗幕をひいてくれ」

 シャーー シャーー シャーー

 暗幕がひかれると、黒板の前にスクリーンが下ろされ、同時に照明が落ちて、スクリーンに映像が映された。

 

 友よ~ 夜明け前の闇~の中で~ 友よ~ 戦いのぉ~ 炎を燃やせ~♪

 

 なんか物騒な歌をアコステ持ったニイチャンたちがリードし、地下通路に集まった数百人、ひょっとしたらそれ以上の若者たちがスクラム組んで歌っている。

 場所は、なんか地下通路? ぶっとい柱が何本もあって、天井が低いんだけど、それなりに広さがある。

 カメラがパンすると、面積的には学校の体育館よりも広い。

 みんなふつうの服装なんだけども、ゼッケンとか付けたら、どこかの国の労働争議みたい。

 え、なんか行進してる。ヘルメット被ってる奴もいるし、なんか体育祭の日に10円男らがやってたデモの豪華版?

 歌も「インタナショナ~ル 我らが~もの~」なんて物騒になってきたしぃ。

 画面が切り替わると、機動隊が周囲を取り囲んで、隊長っぽい隊員がマイクを握った。

「君たちの行為は道路交通法に違反するだけではなく、東京都迷惑防止条例にも違反……すみやかに解散しなければ、我々は実力を持って、この新宿駅西口広場より君たちを排除する」

「ナーンセンス!」「帰れ、機動隊!」とかヤジが飛ぶ。

 上映はあっという間に終わって、明かりが点くと、会場は、ちょっと異様な雰囲気。

 なんていうんだろ、火が点きましたというか、体育祭で騎馬戦が始まる直前みたいな空気。

 それからは、使われてる言語が日本語であると言う以外には理解できない言葉が飛び交って、さらに高揚していく。

「では、これからジッセンに入るぞー!」

 大浜女子が拳を突き上げると、アンプに繋がったアコステを抱えたニイチャンが二人出てきて、大合唱になる。

 なんか、昔の若者の歌っぽいんだけど、一つも分からない。

 あ、知ってると思えたのは『今日の日はさようなら』一曲だけ。

 なんで知ってるんだろう?

 

 あ、そうか『エヴァンゲリオン』の挿入歌なんだ!

 

 でも、エヴァといえば『残酷な天使のテーゼ』でしょ!

 

 何曲も知らない曲が続いて思った。

 いろいろ言ってるけど、ようはみんなで歌いたかったんじゃなかったのかなあ?

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組)

  

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RE・トモコパラドクス・61『友子の倍返し!・1』

2023-10-28 07:24:48 | 小説7

RE・友子パラドクス

61『友子の倍返し!・1』 

 


 三十年前、友子の娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来から来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に復帰する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」 そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……夏休みも終り、いよいよ始業式……と思ったら、もう日曜日。


「倍返しだからね!」という怖ろしげな紀香の電話がかかってきた。

「ち、仕方ねえなあ!」と、相手を先輩とも思わぬタメ口で返事をした。

 もっとも紀香とは、第三者が居ない限り、友だち言葉で話すことにしていた。公式には、紀香は未来からやってきた義体で、『友子の娘が極東戦争を起こす』という未来の予測のために監視していることになっている。しかし、それは今世紀の地球温暖化と同じく利権化した仮説で、紀香とは、監視し監視されるフリをして仲良くしている。

 新学期といっても半日授業。
 
 退屈なので、『倍返しごっこ』を始めたのである。

 明日の天気を予測して、百円かけるのだ。

 両方が同じ予測で当たれば、何も無し。両方とも外れば互いに百円を払う(客観的には意味はないのだが、ゲームだから面白い)。で、片方が外れば倍の二百円を払うことになっている。
 ただし、予測について、電脳を使ってはいけないことにしている。ネットに出ている天気図だけをもとに、当てっこするのである。ズルができないように、予測するときには、互いにリンクして、電脳を使っていないことを確認する。

 で、二日目にして友子は予報を外してしまった。

 

「くそ、倍返ししてやりたいなあ!」

 

 父であり、弟である一郎がため息混じりに大きな独り言を言った。母であり義妹である春奈は、今日はクラス会に行って留守である。

 友子は、すぐに一郎の思いが飛び込んできて、そのアマチャンぶりに呆れた。

「そりゃ一郎、あんたが甘いのよ」

「なんだ、心読んだのか?」

「それだけハッキリ恨んじゃったら、読まなくってもわかってしまうわよ」

「だったら、どうして甘いなんて言うんだよ!」

「日本の感覚で、商談したり契約したりするからよ」

「でもなあ……」

 中身は、こうである。C国から受け入れた熱心な研修者に、新製品のルージュの製法を盗まれたのである。おまけに、彼の勤務態度の良さに気をよくして派遣してきた子会社に十億円の融資をしたのであるが、この子会社が、計画倒産をしてしまい、十億の融資は焦げ付いてしまった。

 おまけに、研究職の太田を引き抜かれてしまった。

 太田は、この春に一郎たちと一緒に新製品のルージュを開発した後輩であるが、同じく研修生として引き受けていた美人のハニートラップにひっかかって、今朝、一番の飛行機でC国に渡ってしまったのである。

 まさか太田に限ってはと、一郎らしく甘く見ていた。

「まあ、尖ってないで、コーヒーでも飲みなよ」

 

 隣家のカーテンが揺れた。

 泥棒事件で助けてもらって以来、中野は友子が気になって仕方がない。

 友子も隣人が覗いていることを承知で見せつけている。

――うらやましかったら、家庭をもちなさいよ――

 そう思っているが、半分は面白がっている友子だ。

 

 一郎はイライラとスマホを繰りながらシュガーポットの砂糖をコーヒーに入れた。

 

「ウッ、姉ちゃん、このコーヒーしょっぱいよ!」

「あたしは、ただ、塩のポットを置いただけよ。ちょっと見ればすぐに分かるのに。やっぱ一郎は抜けてんねえ」

「まさか、姉ちゃんがするとは思わないだろ!?」

「ハハ、怒るな怒るな。お姉さまがが倍返ししてあげるから」

「ほ、ほんと!?」

「お金の方は、証券会社が開いてからやるとして、とりあえず、太田くんを取り戻してくる」

 そう言うと、友子は二階への階段を上がって隣家の窓からは死角に入った……。

 

 太田は、C国の彼女のことで頭がいっぱいであった。

 

――本社が、子会社に不動産投資をさせて焦げ付かせてしまって。このままじゃ、お父さんは、責任をとらされて、会社を首になるわ――

 会社の給湯室で泣いていた彼女から三日がかりで聞き出したのが、このお盆明け。少し迷いはあったが、今朝、決行してしまいC国S市行きの飛行機の中で、一人高揚していた。

「太田様、後ろのP席窓ぎわのお客様が、ご用があるとおっしゃっておられますが」

 キャビンアテンダントのオネーサンが優しく後部座席を指し示した。首を回して、そっちを見ると見慣れた彼女の頭が見えた。

「ありがとう!」

 キャビンアテンダントのオネーサンが友子であることにも気づかずに、太田は後部座席に急いだ。

「もう、ほんとに日本の男ときたら!」

 そう呟くと、友子はスッと姿を消した。

「ありがとう、ボクと同じ飛行機に乗ってくれたんだね!」

 彼女は、ゆっくりと窓から、太田に顔を向けた。

「お久しぶり、太田さん」

「!……君は、鈴木先輩のお嬢さん!?」

 次の瞬間、目の前が真っ白になり、気が付いたら、同じ飛行機の同じシートに、友子といっしょに座っていた。

「友子ちゃんがどうして?」

「周りを見てごらんなさい」

「……あ!?」

 それは同型機ではあるが、日本航空のS市発羽田行きの飛行機であった。

「とりあえず、あたしの家に来てもらおうかしら」

 二時間後、太田は友子といっしょに家のリビングに居た……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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