大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・057『ウィッチカモミール』

2023-10-14 15:14:02 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

057『ウィッチカモミール』   

 

 

「活性化して来てるねえ……」

「活性化ぁ?」

 腕を組んだお祖母ちゃんに、ボケた応えをする。

 チョボチョボチョボ……

「まあ、お茶でも飲んで……」

 学校でのあれこれ、おもに栗原さんのことにまつわる不思議のあれこれを話している。

 話し始めると「お茶でも淹れよう」と言ってお湯を注いでいたのが、ようやく飲み頃になった。

「離れたところの話が聞こえるのはテレパシーの一種でクレアオーディエンスって言うの。一瞬で場所を移動するのはテレポート……どっちも魔法少女の潜在能力」

「ええ(-_-;)……」

 魔法少女の家系だけども、お祖母ちゃんは、とっくに現役引退してるし、お母さんは、そういうのに関心なくてNASAで火星行きの訓練中。

 わたしは、1970年の高校に通っている以外は普通の高校生をやってる。このまま二十歳になって、魔法少女の能力なんか芽生えないで普通の人生歩みたい。

「たぶん、栗原さんのことで芽生えたんだと思う……」

 

 ああ……そんな能力欲しくも無いよ。

 

「それと、1970年に行くにあたって、ちょっとだけ巡の力解放しちゃったしね……」

「関係あるの?」

「ほんの入り口の力、空を飛ぶのが魔法少女の力だとしたら、やっと家の二階から飛び降りるくらいの力。とてもテレポートに結びつくような力じゃないよ」

「そうなんだ」

「他になんか無かったかい?」

「他には……」

 

 一つ思い浮かんだ。

 

 体育祭の開会式で、とつぜん先生のではないホイッスルが鳴った。

 ピイイイイイイイ!

 なんだと思って、ホイッスルのした校舎の端っこを見ると、ゲバ棒にヘルメット被った二十人くらいの集団が「体育祭粉砕!」とか叫びながらグラウンドに入ってきた。みんなタオルや手拭いをメットのストラップにひっかけて顔が見えないようにしてる。手には軍手嵌めて、五人一組でスクラム組んで蛇行しながら行進してんの。

「あ、あれ、加藤高明!」

 ロコが気づいて指を指したのは、先頭でホイッスル吹いてリードしてる奴。三度目ぐらいのシュプレヒコールでタオルがずれて横顔がばっちり。わたし一人が密かに10円男と呼んでいる留年生のクラスメート。

 学園紛争なんて、前の年の1969年で終わってるのに、こいつらはバカかと思った。

 ほんの二十人ほどだし、今朝まで練習してたムカデ競争ほどにも統制取れてないし。シュプレヒコールとかうるさいし。

――もう、こけちゃえ!――

 そう思ったら、一列目が脚を絡ませて、ほんとうにこけた!

 後の三列も続いてコケまくって、グラウンドのみんなから笑いが起こった。

 どうも、二人ほど脚をグネったみたいで起き上がれずにいると、見かねた保健の先生が救護の生徒を呼んで救助に行った。

 さっきまで威勢のよかったヘルメットたちがペコペコお礼をいって、みんなで校舎裏に戻って行った。

「あはは、ドリフターズのコントみたい(^▽^)」

 だれかが言って、グラウンドは爆笑の渦になった。

 

「ほう、そんなことがあったんだぁ」

 

「え?」

 思い浮かんだだけで、まだ喋ってないんだけど。

「これって、クレアオーディエンス?」

「クレアエンパシー、言葉を使わずに意志や気持ちを伝える能力さ」

「どっちの?」

「両方、わたしが四分で、巡が六分ってとこかなあ」

「そ、そうなんだ」

「もう一度ゲバ坊主たちがコケたところ思い出して」

「う、うん…………プ(`艸´)」

 今度は十円男の心底情けない顔がアリアリと浮かんで笑ってしまう。

「わかった」

「え?」

 

「列をコケさせたのは、巡、おまえだよ」

「ええ!?」

「テレキネシスの一種だよ」

「ええ、どうしよう!?」

「いま飲んだお茶、ウィッチカモミールって言うんだ。抑制効果があるから、しばらく飲み続けるんだね」

「ええ……」

 正直、おいしいお茶じゃなかった。

 あくる日からは水筒に入れてもっていかされることになってしまった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組)

 

 

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銀河太平記・185『ゾンビと旧友』

2023-10-14 09:20:36 | 小説4

・185

『ゾンビと旧友』ツナカン 

 

 

 ゾンビだぁ(゚д゚)!

 

 そう思ったっす、慌てて口を押えたっす!

 チーチェが群がっていた戦死者どもは、ムクムク起きだしてぎこちなく動き始めたっす!

 

 ノッシ……ノッシ……ノッシ……

 

 まるで、オデンカンが嵌ってる古典ゲームのゾンビみたいっす!

 ――任 ヒンメル副長――

 船長にもらった副長の辞令が頭に浮かんだっす。

 もし、この辞令が浮かんでこなかったら、そのまま逃げだしたかもっす。

 副長なんだから、しっかり見極めて報告しなくっちゃっす!

 ゲロ吐きそうなのを、必死でこらえて観察するっす…………少し分かったっす。

 ロボットも義体も、電脳で動いてるっす、人間の脳みそと変わりないっす。

 でも、末梢神経的なのが、体のあちこちにあって、突然の刺激や情報に反応するように出来てるっす。

 人間が熱いもの触ったら「アチ!」って感じで手を引っ込める、アレっす。

 突然の危機に出くわして、いちいち脳みそを経由して行動していたら生きていけないからっす。

 恐竜が分かりやすいっす。恐竜は図体でかいっすから、足でなにか踏んづけて「痛い!」と思って脚を上げるのに脳みそを使っていたら間に合わないっす。だから、あちこちにある制御用のプチ脳みそが信号送って回避するっす。

 目の前のゾンビどもは、扶桑のパルスター攻撃で電脳は焼かれてるっす。

 でも、目の前をノッシノッシ動いてるのは、体のあちこちにある制御系が生きてるからっす。

 

 チーチェどもが埋め込んだのは、そういう制御系に指令を与えるチップ、あるいはソフト。

 

 電脳によって全体としての制御はされていないので、走ったり跳んだりの素早い動きができない様子っす。

 大勢の人間が体の部分部分を動かすコントローラー持って、一体のロボットを動かすようなものっす。

 だから、ゆっくりでしか動かせねえっす、バラバラな動きになるっす、だからゾンビみたいなんす。

 

 そうと分かっても気持ち悪いっす。

 

 副長って自覚が無かったら逃げ出していたかもっす。

 

 バシ! ビシバシ! ブシュ!

 

 突然の斬撃音に驚いて目を向けたっす!

 小柄な迷彩服が刀でゾンビどもをビシバシ切りまくってるっす!

 セイ!

 迷彩服は、数匹のゾンビに囲まれそうになると、小気味いい掛け声をかけてジャンプ、空中で一回転して、十メートルほども飛んだっす!

 あ!?

 その美しい跳躍、反らした胸の膨らみ、きれいな喉から顎にかけてのライン……サンパチ殿!

 思わず漏れ出た感激にサンパチ殿も気づいた様子で、着地の寸前に向こうの岩山を指したっす。

 ザザザザザザザザザ!

 ゾンビどもの群れの中を掻いくぐって岩山を目指すっす。

 

 ズチャ! ズサ!

 

 岩山に着地したのは同時っす。

 美少女という点では引けを取らないツナカンっすけど、サンパチ殿の美少女ぶりは、ほとんど反則っす!

 140センチそこそこの身長、小さく引き締まったお尻、掴んだら潰れてしまいそうな肩、細い首に載った瓜実顔は、頬っぺたがぷっくりして、五年もしたらすこぶる付の美人まちがいなし!

 着地と同時に振り返った上半身、意外に大きい胸がブルンと揺れて、ツインテールの先っぽが頬っぺたを撫でて、長いまつげがパチパチしたかと思うと、朱い唇が小さく開いて懐かしい声を発したっす!

 

「久方ぶりでござる! ツナカン殿!」

 

 美少女に武骨な侍言葉のアンビバレンツ!

「サンパチ殿おおおおお!」

 背中にビビっと電気が走って、思わずハグしてしまったっす(#^▽^#)!

 

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟

 

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・47『友子のマッタリ渇望症・3』

2023-10-14 06:53:07 | 小説7

RE・友子パラドクス

47『友子のマッタリ渇望症・3』 

 

 

 気が付くと、父でもあり弟でもある一郎がニヤニヤ笑いながら写真を見て立っている。母であり義妹である春奈は並べたあれこれをゴミと保存に分けている。

 夏休みの初日と日曜が重なったので、この妙な親子三人は、まず身の回りの整理から始めた。両親の一郎と春奈は、新発売のルージュの販売が軌道に乗ったので、友子はマッタリの一環としてオカタヅケという人間的な行為にいそしんでいるのである。

 ただ、友子は義体なので、身の回りは最高に機能的で、その点ではオカタヅケの必要など無かった。

 で、年頃の女の子らしく、適度に散らかして(人間的には飾り付けるという)いるのだが、これが、なかなか難しい。

「なによ、気持ちわるいわねえ」

「友子も見てごらんよ」

「あ……!」

 その写真を見たとたん、記憶が膨大な情報として蘇ってきた。

「連休にディズニーランド行った時のだ!」

「そうだよ、このグズって、お袋にあやされてるのがおれで、全然構わずにビッグサンダーマウンテンの方見てるのが友子だ」

「ハハ、なんか今と関係逆過ぎるから笑えるね」

「母」の春奈が、笑った。

「懐かしい、ちょっと借りていい?」

 友子は、部屋のベッドにひっくり返って、写真を見るというか、解析してしまう。

 軽い気持ちで見ても、数億の情報が頭の中で演算されていく。

「ああ、だめ。もっと軽い気持ちで!」

 友子は、気合いを入れてお気楽になった。

「このときの、わたしって、ビッグサンダーマウンテンのことしか考えてないよ。一郎の泣き声も聞こえてこない。いいよなあ……こういうワガママというか無神経さは」

 数秒後、頭の中で、かすかなアラームが鳴り、ガバっと身を起こした。

 

「これ……滝川さんに似てる」

 

 義体である友子に「気がする」はあり得ない。写真を見れば、その人物から、すくなくとも数万の情報を得ることができるが、滝川らしきものからは、らしいという以外なにも分からなかった。

「ああ、これがいけないんだ。マッタリマッタリ!」

 再びバタリと仰向けに寝転がると、ベッドのスプリングが「プツン」と、音がして折れてしまった。

「いかん、十万馬力なんだ、わたしは……ちょっと、散歩してくる!」

 友子は電脳の中に「無意味」というカテゴリーを作ろうとしていた。昨日食堂で、アイスクリームとラーメンの汁を被ってしまったのは、機能不全によるバグである。人間的なマッタリとは似て非なるものである。友子はバグりかけたPCの持ち主のように必死であった。

 外に出ると、数兆の情報が飛び込んでくる。人間にとっては、体にも頭にも良い刺激なのだろうが、友子にとっては、ただCPUの負荷を掛けるだけのデブリ情報に過ぎなかった。友子は、この負荷を取捨選択し「無意味」をカテゴライズしようと、いわば逆療法に出たわけである。

 

「え、あんなとこに喫茶店が……?」

 

 『再会』という名前の喫茶店だった。友子のGPS機能は「確認不能」のシグナルを発していたが、しばらくすると、確認に変わった。

 カランカラン

 もう――この土地に大正時代からありました――というような面構えをした店で、友子が入ると、レトロなドアベルの音がした……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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