大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・2・013『魔法の杖が配られて防御魔法を習う』

2023-10-29 10:38:37 | カントリーロード

くもやかし物語・2

013『魔法の杖が配られて防御魔法を習う』 

 

 

 いつも閻魔帳しか持って来ないソフィー先生がカステラの三本詰めくらいの木箱を持ってやってきた。

 

「他の先生たちとも話し合ったんだが、諸君にも魔法の杖を持ってもらうことにした」

 二種類の「え?」が湧き上がる。

 一つは、思っても見なかった「え?」、もう一つは嬉しい「え?」だよ。

 ここ(ヤマセンブルグ王立民俗学学校)が魔法学校だったことは入学式でも説明されて、みんな知っている。

 いずれは、魔法の「魔」の字くらいはやるもんだとも思っている。

 現に、教壇に立っているソフィー先生は先祖代々王室に仕える魔法使いの家系だし。

「ついては、各自、魔法の杖をもってもらう。すでに、自分の杖を持っている者は見せてくれ、呪力・魔力を計測して適当であれば使用を認める。持っていない者は学校の杖を貸与する。持っている者は見せに来い。持っている者は手を挙げろ」

 他人の様子を伺いながら、1/3ほどの子たちが手を挙げる。

「ヤクモ、おまえも持っているんだろう」

「え、あ……」

 あれって魔法の杖なんだろうか?

「え、じゃあ、とりに戻っていいですか?」

 日本に居た時と同じく、あれは机の一番下の引き出しにしまい込んである。

「念じて見ろ、魔法の杖なら、五秒もかからずに手の中に現れる」

「え、そうなんですか!?」

 それまで湯せんしなければ食べられないと思っていたレトルトカレーがレンチンでもいけると分かったときみたいに驚いた。

「やってみろ」

「はい」

 …………ボン!

 ガスが突然点いたみたいな音がして、握った手の中に鬼の手が現れた。

 

 おお( ゚Д゚)!

 

 教室のみんなが驚いた。持ち主のわたしはもっと驚いた。

 他の魔法の杖は菜箸くらいの大きさなのに、鬼の手は孫の手ほどの大きさがあるし、先っぽはまさに手の形してるし。

「見せろ」

 ちょっと厳しい声で先生が言うので、教壇までの5メートルほどを走ってしまった。

「…………これは……一級呪物だな」

 一級呪物?

「並みの杖が自転車だとしたら、これはレオパルドⅡかM1エイブラムスほどの力があるぞ」

 ええ!?

 わたしも、みんなも驚いた。

 戦車なんかにはウトイんだけど、ウクライナ戦争のおかげで憶えてしまった。両方とも世界最高の戦車だよ!

「しゅっげ~(´ºº♡)

 ハイジなんか、なにを間違えたかよだれを垂らしてるしぃ。

「ヤクモ、おまえ、これを三輪車程度にしか使ってないな」

 三輪車ぁ(^_^;)

 アハハハハ(>▽<*)

 わたしは驚いて、教室のみんなは笑った。

「本来なら学校で預からねばならないほどのものだが、よく馴れている。注意して使え」

「は、はひ」

 それから、先生は五人の杖を鑑定して、ルームメイトのネルに目を向けた。

「コーネリア、おまえも魔法を使うんだろ、見せろ」

「あ、あたしは魔法の杖は使いません。インスピレーションですから」

「ほう……では、魔法を使う時は無詠唱なのか?」

「は、はい」

「……そういえば、コーネリアとヤクモは同室だったなあ」

「「はい」」

 (* ´艸`)クスクス

 なぜか、みんながクスクス笑う。

 残りのみんなに杖を配り終えて、先生は居住まいを正した。

 

「実は、学校の周囲で不穏な動きがある」

 

 不穏な動き……

 

「森が騒めき、湖はさざ波だっている。まだまだ精霊のレベルだが用心にこしたことはない。王宮と学校には結界が張られたが、お前たちも用心してもらいたい」

 なるほど、そのために魔法の杖なんだ。

「では、初歩的な防御魔法を教える。見本を見せるから、あとに続け」

 そう言うと、先生は、年季の入った杖を出すと頭上に構えて詠唱したよ。

「ディフェンシブ!」

 先生の頭上にアニメに出てくるような亀甲模様が数十個連結したシールドが現れた。

「やってみろ」

 ディフェンシブ!

 無詠唱のわたしとネルは即座に、みんなは一二秒遅れてシールドが現れる。

「そのままで居ろ」

 先生は机間巡視しながら、みんなのシールドをトンカチで叩いて周る。

 トントン  タンタン  ボコボコ  ベシャベシャ  カンカン  コンコン

 いろんな音がする。

 カチンカチン

 ネルのは鋼鉄を叩いたような音がした。

 キィーーーーーン

 わたしのは、もっと高い音がした。

 先生は、手がしびれて手をフルフルと振ったよ(^_^;)。

「頭上に作った時は前も左右もがら空きだが、慣れれば、同時に前方にもシールドが張れる。もっと慣れれば全身を覆うシールドも可能だ。しかし、結界もシールドも過信は禁物、危ないと思ったら、一目散に逃げろ」

 

 うんうん

 

 ネルとわたしは実感を込めて頷いたよ(^_^;)。

 

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学)

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・62『友子の倍返し!・2』

2023-10-29 06:45:40 | 小説7

RE・友子パラドクス

62『友子の倍返し!・2』 

 

 

 カチャカチャカチャカチャ……

 

 パソコンのキーを数百回押すとC国S市のパソコンのカメラに繋がった。どこやらのオフィス。複数のデスクの上にはパソコンやらモニターやらが並び、大きなガラス窓の向こうにはS市のシンボルの高層ビル群が立ち並んでいる。

 カチャカチャカチャ……

 さらに、数十回押すと、オフィス全てのパソコンと監視カメラと繋がって、友子のパソコンのモニターにはオフィス内の八つの映像が映し出された。

 そのうちの四つには男女が抱き合っている映像が四つのアングルで映し出され、一つはローテーブルに置かれたパソコンのもので、ちょっと刺激的。

 ガチャ!

 音がしたかと思うと、その画面は天井と壁の一部を映した。

 どうやら女の足がパソコンを蹴ってしまったようだ。

 カチャカチャ

 数回キーを押すと監視カメラのコントロールができるようになり、コントローラーのジョイスティックを動かして二人の姿が画面の中央に据えられた。

 S市に戻った彼女は、日本での仕事がつつがなく終わったのをカレと確認して、オフィスでイチャイチャしていたのである。

「ウ、ウググググ……( ノД`)」

 太田は、ただ泣きの涙であった……。

「泣いておしまいなの?」

 友子は、太田の不甲斐なさに、ただただ呆れるばかりである。

「こんなのもあるのよ」

 監視カメラのアーカイブの映像も、無修正で見せてやった。二人は以前から深い仲であったようだ。太田は、ただ悲しそうに悔しそうに、涙と鼻血を流すばかりであった。

「この子はS市の党幹部の娘でね、オヤジが作った会社のCEOに収まろうって思って、今度のことを計画したのよ。彼女がフィクサーであり、実行犯のボスよ。で、相手の男はね……」

 映像から、男の顔のモザイクを外した。

「あ、こいつは……!?」

 今度は、一郎が熱くなった。男は、新製品の情報を盗み、会社から10億の金をC国の子会社に融資させ、焦げ付かせた張本人である。

「分かったかなあ……こういう仕掛けなのよ、情けないなあ、落ち込むしか手がないのぉ? いい歳したオッサンがさ!」

「だって、姉ちゃん……」

「姉ちゃん?」

 太田がビックリした。

「チ……太田さん、悪いけど、しばらく眠ってもらうわね」

 一瞬で太田はソファーにひっくり返って寝息を立てだした。

「起きたら記憶はないんだろうね……」

「当たり前でしょ。一郎の会社のためなんだから、今回は特別。ほっといたら、一郎は首だろうし、会社だって損失が大きすぎて、人員整理しなくちゃならなくる」

 友子は、口にケーブルをくわえると、パソコンに繋いだ。

「なに、やってんの?」

「盗まれたUSBを繋いだら、内容が書き換わるようにしてんの。五十年前のC国製のルージュになるわ」

 カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ…………カチャ!

 目にもとまらぬ早さで数万回キーを叩き、最後に留めのエンターキーを押した。

「これでよし!」

「十億の融資は、姉ちゃん!?」

「明日、証券市場が開いてからね。十億は、証券のカタチになってるのよ。とりあえずなんとかなったから、太田さんお願いね。じゃ、あたしクラブの稽古だから……」

 制服の上着を掴むと友子は家を出た。隣家からの視線を感じるが、これはパス。

 

「ムハハ、そりゃ、朝から面白そうだったじゃん(* ´艸`)」

 紀香が、面白そうに笑う。

「でも、流行りの倍返しにしたいわね」

「それなら、こんなアイデアがあるよ」

 妙子が、一生懸命に稽古しているのに見事に付き合いながら、さらに情報交換をやった。

「……て、わけよ」

「ナルホドね!」

 さすがに、稽古が止まってしまった?

「なにが、ナルホド?」

「ああ、妙子の演技よ。イイ線いってたよぉ!」

「え、あ、そう(^_^;)?」

 嬉しそうにはにかむ妙子。実際、妙子の芝居は良くなっていたので、あながちウソでもない。

 しかし、敵もなかなかのもので、昨日の月曜で取引を操作して、証券価格を一気に20%も引き上げた。あらかじめ紀香に言われて織り込み済みの事態だったので、昨日は静観。

 そして、膨らみきった証券に、不良債権を山ほど付けて証券市場に流してやった。敵が持ち出した証券は、あっと言う間に、二十億の不良債権を含んでしまい。五分で一億ずつ負債がふくらんでいった。気づいたC国の会社は、すぐに手を打とうとしたが、手続き上子会社化してあり、破綻したことにしてあるので、親会社が処理に乗り出せたころには、親会社の総資産額を超えてしまい、昼には親会社自身が破綻した。

 

「姉ちゃん、会社の証券が一日で倍の含み益になったよ!」

 

 家に帰ると、一郎が喜びの余り友子にハグしてきた。

 羨ましそうな隣家の視線を感じたが、まあ……いいかと放っておく。

「で、それをさっさと売って十億余計に取り戻したんでしょ。感謝しなさいよ、お姉ちゃんに」

 喜ぶ弟を、半分情けなく思いながらも、笑顔だけは向けてやって自分の部屋でスマホを開く。

 

 ムグ……!

 

 歯ぎしりした。

 今日も天気予報を外してしまい、倍返しの200円を取られた友子であった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士

 

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