大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 146『信長版西遊記・敦煌・1・悟空三蔵法師に化ける』

2023-10-09 15:10:39 | ノベル2

ら 信長転生記

146『信長版西遊・敦煌・1・悟空三蔵法師に化ける信長 

 

 

 砂の大海タクラマカン砂漠が東の果てで転がり落ちたところに敦煌がある。

 

 転がり落ちたところは砂まみれの崖のようになっていて、その崖に千年以上の長きにわたって石窟がが穿たれ、その数は大小合わせて七百を超える。

 五百近くの石窟には精緻な仏教壁画や仏像群が残されており、石仏の最大のものは奈良の大仏の二倍もあるという。

 

「いやあ、この月牙泉も大したものッパ!」

 頭の皿に水を補給しながら沙悟浄が感動する。

 月牙泉は、敦煌石窟群のすぐ南にあって、三日月形の泉とそれを取り巻く緑の中に殿郭と塔が聳えて、東西の街道を往来する旅人のいい目じるしになっている。

「きれいな三日月の形ブヒ」

「ああ、シルクロードの果て、三国志の玄関口。たとえ砂まみれになろうと、その美しさを保とうというのは褒めてやっていいウキ」

 俺は、物や人を見るに、その機能を第一とするが、機能を飾る設えにも大いに理解があるぞ。

 安土城の壮麗さ、正親町天皇(おうぎまちてんのう)をお迎えしての京都御馬揃えのきらびやかさは美意識にうるさい都雀や伴天連のパードレどもも舌を巻いておった。

 しかし、この敦煌はすごいぞ。

 これから足を向けようと言う石窟群も楽しみだが、目の前に広がる月牙泉もなかなかのものだ。

 陽関の城頭からも、はるかに塔の先端は見えていたが、その足もとにこれだけの緑と、その形も秀麗な三日月の泉を抱えているとは、なかなかのものだ。

「玉門関は武骨なオアシス城塞だったが、この敦煌は三国志の豊かさと奥の深さを感じさせる。西域から来た者は、さぞかし胸をうたれることだろう」

「沙悟浄、素に戻ってるブヒ」

「僅かな間だ、許せ……どうだ、この水の清冽なこと、器にすくえばそのまま飲めそうだ……兄曹操のことが片付いたら、西遊記のコスプレなど解いて訪れなおしたいものだな」

「解くわけにはいかんだろうが、少し変更したいウキ」

「「変更?」」

「ああ、玉門関から二度も三蔵……お師匠を拉致されているウキ、ちょっと手を打っておきたいウキ」

「どうするんだッパ?」

「一言主、起きておるか?」

 緊箍児(頭の金輪)の一言主に話しかけると、小さく震える。

『なんじゃぁ、せっかく昼寝をしておったというのに……』

「俺を三蔵法師にしてくれ」

「「ええ?」」

『それは造作もないが、三蔵が二人になるぞ』

「かわりに三蔵は悟空の姿にするんだ」

「「ええ!?」」

『三蔵は馬に乗ってるだけだが、悟空は歩かなければならん。場合によっては走りもするだろうし、口も利かねばならんだろうし、ギミックが多すぎてたいへんじゃぞ』

「そこをなんとかしろ、俺は先手必勝でいくんだ」

「だいじょうぶかッパ?」

「ああ、敦煌は仏教遺跡だ。坊主が一人で見学していても不思議はない。二人は宿屋で待機していてくれ」

「ああ、かまわないが、なにかあったらすぐに呼んでくれッパ」

「気を付けて行くんだブヒ」

『ではいくぞ、信長、いや孫悟空』

「ああ」

『ひの……ふの……みっ!』

 

 ボン!

 

「よし、どこから見ても三蔵法師だ。そっちは……?」

 馬の上の三蔵も見たところ悟空そのものに変化(へんげ)して、一言主も悟空の頭に引っ越している。

「おい、馬から下りて歩いてみろブヒ」

『ウキキ』

 猿語で返事するとかっこよく馬から……落ちた。

 ドサ

「まあ、なんとかやってみるッパ、悟空も気を付けていけッパ」

「ブヒ」

「じゃあ、頼んだぞ」

 

 俺は、ひとり別行動で石窟群を目指した。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・トモコパラドクス・42『東京異常気象・1』

2023-10-09 06:31:22 | 小説7

RE・友子パラドクス

42『東京異常気象・1』 

 


 30年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺されたが、これに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは30年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」 友子は16歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された。娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。

 

 東京は、もう10日連続の真夏日で、学者や評論家たちが、地球温暖化のせいだと騒いでいる。

 温暖化がガセだというのは、未来を知っている友子にはフンってなもんだが、それを信じ込んでいる現代人には深刻だ。クールビズはダサイので下火気味だが、冷感繊維を利用した衣類は今年のヒット商品になってきた。
 残念ながら、乃木坂の制服は、そういう繊維でできていないので、学校に着くころにはアセビチャで、朝の教室は、耐汗スプレーや、抗菌スプレー、それに汗などものともしない男どもの臭いが混ざって一種異様な臭いがする。

 友子も紀香も義体なので、汗をかかないでおこうと思えばできるのだが、自然さを装うためにも人並みの汗はかかなければならない。先日の『ベターハーフ事件』では、うっかり汗も忘れていた友子だったが、あれから、16歳の女子高生に相応しい汗をかくようにプログラムしなおした。

 

 しかし、それが問題だった。

 

 汗というのは適度なフェロモンが含まれていて、地下鉄の中などでは、異常接近になり、男どものイヤラシイ欲望を刺激してしまう。
 友子は、なるべく普通にふるまっているので、地下鉄でも必要が無くてもつり革に掴まっている。当然脇の下は無防備になり、合成フェロモンをまき散らしっぱなしである。また、見た目には、ごく清楚な女子高生にできていて、とても10万馬力の義体には見えない。

 

 ……気づくと、お尻と右の胸を触られていた。

 お尻は大学生のニイチャン。胸は新聞で巧妙に手を隠した公務員風のオッサン。二人とも顔はあさっての方角を向いている。

 大学生のニイチャンは、彼女に振られた腹いせが原因であることが分かったが、その後ろのサラリーマンのオッサンが――うまいことやりやがって――と、羨望の目で目撃しているので、放ってはおけない。

 方や、公務員風のオッサンは、どうやらプロで、この混雑の中、友子の足の間に膝を割り込ませてきた。

 グニ! グチャ!

 同時に悲劇的な音がした。

「痴漢です! 警察呼んでください!」

 友子は両手でニイチャンとオッサンの手をひねりあげ、股でオッサンの膝を締め付けたのだ。

 ちょっとやりすぎた……ニイチャンとオッサンは手首を骨折、オッサンは膝の骨にヒビが入った。

「オッサン、よく、こんな痛む脚で……よっぽどのスケベだな」

「違う! こいつが凄い力で、オレの脚挟みやがって、イテテテ……」

「それにしても、お嬢ちゃん偉かったねえ!」

「わ、わたし、怖くて怖くて、でも、女性の敵だと思って一生懸命で(#'∀'#)」

 友子は、顔を赤くして、涙さえうかべてみせた。

「でも、大した度胸! 大した力だったよ!」

 駆けつけたお巡りさんが、あまりに褒め称えるので、つい言ってしまった。

「はあ、合気道を少々やっていたものですから……」

「ほう、自分もやっておるのですが、どこの流派で?」

 友子は、お巡りさんの心に浮かんだ流派を、そのまま口にした。

「はい……青芝流を」

「奇遇だ、自分と同じだ!」

「あ、わたしは本を読んで、ほんの真似事で……(^_^;)」

 この遣り取りが新聞に載り、SNSにも流れ、テレビでも放送したので、その影響は凄かった。

 絶滅寸前だった青芝流は入門者が引きも切らず。絶版になっていた『青芝流合気道入門』は大増刷になった。

 乃木坂の女生徒は被害者も多かったので、わざわざ全校集会が開かれ、理事長表彰を受けただけでなく、痴漢撃退の講師までやらされた。

「あ、その……わたしが掴まえられたのは、たまたまですが。犯人の手を掴まえること、それが無理なら『通報してください!』とか『警察を呼んでください!』と叫ぶことが大事です。『助けて下さい』では、一瞬意味が分からず、取り逃がすことがあります。乃木坂学院からこれ以上の犠牲者を出さないためにも、がんばりましょう!」

 パチパチパチパチパチパチ

 みんなが拍手をする中、紀香一人が笑いを堪えていた。

 

 そして、この「警察呼んでください!」が、とんでもない事件を引き起こすのだった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする