大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・2・011『みんなで温泉』

2023-10-16 10:50:14 | カントリーロード

くもやかし物語・2

011『みんなで温泉』 

 

 

 ヨロレイヒーーーーー!

 

 高らかにヨーデルを吠えると(ヨーデルって、動詞でどう表現するんだろ、歌う? 奏でる? つま弾く? どれも合わない。でも、ハイジのヨーデルは、まさに『吠える』だよ(^_^;))勢いよく露天風呂の浴槽に飛び込んできた。

 ドップーーーン!

オリビア:「キャ!」

ネル:「ハイジも女なんだからさぁ、マッパで飛び込んだりするなよ!」

ハイジ:「だって、温泉てば日本だろ、日本てば風呂はマッパだろ、アニメでやってたぞ(^▽^)」

ヤクモ:「日本でも前ぐらいは隠すよぉ(#^_^#)」

ハイジ:「え? アニメだったら湯気とか水しぶきで隠れてんじゃん、そうなってっだろ?」

ヤクモ:「あれはアニメだから」

ハイジ:「ええ、じゃあ、丸見えだったのかぁ(ºº; ; )!?」

ロージー:「かわいいお皿だったな」

ハイジ:「お皿いうなあ(;>∀<)」

オリビア:「オサラってなんですの?」

ハイジ:「あーもー、なしなし!」

 アハハハハハ((´∀`*))

 

 開校してからも、学校のあちこち、内側も外側も工事が続いてる。

 

 なんせ、八十年前に閉鎖した建物に手を入れただけの校舎や寄宿舎。じっさいに人が入って活動が始まると、あちこち不具合や手直しするところが出てくる。

 その一つがお風呂。

 古いお風呂は各部屋に付いているんだけど、五部屋以上が同時に使うと水圧が下がるし、お湯の温度は上がらないし。

 とうぜん修理に入ったんだけど、王女さまの発案で日本風の大浴場を作る工事に入っていたんだよ。

 一から大浴場を作るのは大変なので、廃業した日本の銭湯をまるまる移築している。

 移築と言っても大きな銭湯なので完成は、もうちょっとあと。

 その移築工事の横に塀で囲ってあるところがあって、てっきり資材置き場だと思っていた。

 なんと、塀の内側では、ずっとボーリングをやっていたんだよ。

 ボーリングと言っても、玉を転がすスポーツじゃなくて、穴を掘って地質とか調査するやつね(^_^;)。

 その甲斐あって、温泉が湧いてきて、でも、みんなをビックリさせてやろうという王女さまの指示で完成までは秘密にされていた。

 そして、お昼休みに発表されたんで、お仲間で入り初めをさせてもらっているというわけなのよ。

 

 入り初めには条件がある。

 

 水着とかは着用してはいけない。浴槽に浸かる前に体を洗うこと。タオルを浴槽につけてはいけない。浴槽で泳いだり遊んだりしてはいけない。

 つまり、日本のルールなんだよ。

 なにも日本趣味を押し付けようというんじゃない。お風呂を清潔に保ち、みんなで楽しむのは、このルールがいちばんいいんだよ。

ヤクモ:「だから、飛び込むのは禁止だよ」

ハイジ:「うん、わかった(#*´ω`*#)!」

ロ-ジー:「ネル、耳にお湯が入ったりしないのかぁ?」

ネル:「え、あたし?」

 たしかに、エルフの耳は水とか入りやすそう。

ネル:「こうやるんだよ」

 プルプルプル

 なんと、耳だけが別の生き物みたく、プルプルして水滴を弾き飛ばした。

ネル:「真剣に潜る時は、こうだ……えい!」

みんな:「「「「おお!」」」」

 なんと、耳たぶを器用に丸めて耳の穴を塞いだよ!

ネル:「でも、こんなに気持ちいいと、森の妖精たちが面白がって入って来るかもな」

みんな:「「「「ああ……」」」」

 学校が始まって三カ月、みんな、不思議なことの一つや二つに出くわしている。

 先生たちも注意してるんで、害を及ぼされるようなことはないんだけど、ちょっとマジにはなるよ。

 

 ガラ

 

 脱衣所の戸が開く音がして、みんなビックリ!

「ごいっしょしますねぇ……」

 振り向いて、ビックリした。

 なんと、王女さまがタオルで前を隠しただけのお姿でお立ちになっておられるのですよ!

王女:「一番乗りを狙ったんですけど、先を越されましたね」

ハイジ:「ウキ!」

みんな:「「「「し、失礼しましたぁ!」」」」

王女:「かしこまらないでください(^_^;)」

みんな:「「「「イエス、マム!」」」」

王女:「さっさと洗っちゃいますから、入るまで居てくださいね」

みんな:「「「「はい」」」」

 王女さまは五分もかからずに、髪と体を洗うと、わたしたちの真ん中に入ってきた。

オリビア:「殿下、慣れていらっしゃいますわねえ」

王女:「中学や高校では合宿とかで、みんなでお風呂入ってましたし、子どもの頃、家のお風呂が工事中の時は銭湯にも行ってましたよ」

ハイジ:「王女さま、えらい!」

王女:「そうそう、えらいんです。それで、お風呂も学校施設の一つなんで、教室同様に、みなさんで掃除していただきたいんですけど、みなさん、こういう大きいお風呂って掃除の経験ないでしょ」

ハイジ:「お湯を抜いて乾かしときゃいいんじゃね?」

王女:「だめですよ、汚れとか水垢とか取らなきゃダメなんですよ」

ハイジ:「そ、そうなのか?」

ネル:「エルフは泉の沐浴ですましてたしぃ」

オリビア:「うちはメイドたちがやってましたし」

ロージー:「うちは手下……従業員がやってたしぃ」

王女:「そうですか……」

ヤクモ:「あの……お風呂掃除なら毎日やってたんで、あ、大きくても要領は変わらないと思うんで……」

王女:「まあ! じゃあ、小泉さん、みんなに指導してあげてくれます!?」

ヤクモ:「あ、はい」

 

 パチパチパチパチパチパチ(^▽^)

 

 みんなが拍手して、風呂掃除委員長になってしまった(^_^;)

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ

 

 

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RE・トモコパラドクス・49『友子の夏休み 軽井沢・1』

2023-10-16 06:45:22 | 小説7

RE・友子パラドクス

49『友子の夏休み 軽井沢・1』 

 

 

 駅の改札を出たとたんに少女たちは興奮した。なんたって、ここは軽井沢なのだ!

 

 友子のクラスメート王梨花の突然のメールで決まってしまった。梨花のお父さんは四代続いた華僑で、よく分からないが、大変なお金持ちなんだろうけど、そんな感じは普段ぜんぜんさせない本物のセレブ。

 そのお父さんが気を遣った提案をしてくれた。

「八月の半ばに、仕事仲間を連れて避暑にいくので、それまで別荘の掃除とかしてくれたら、食料付きで使ってもいいよ」

 娘が学校でうまく溶け込み始めているので、二学期を見据え、もっと友だちとの関係を良くしてやろうという親心であることは、解析しなくても友子には察せられた。見かけは十六歳の女子高生であるが、感性の奥には四十六歳のオバサンが潜んでいる。

 で、けっきょくクラスの仲良し女子、麻子、妙子、純子、そこに友子と紀香が加わった。紀香と妙子は演劇部員でもあるので、梨花のお父さんが趣味で敷地の中に作ったダンスのレッスン用の別棟を借りて、コンクール用のお芝居の稽古をするという、もっともらしい理由もねじこんである。

 

「うわー、山が近ーい!」

 

 麻子が無邪気に感動。妙子がその横に並んだ。

「あれは離山、向こうに見えるのがもっと大きくて浅間山」

 純子の父も軽井沢に別荘を持っているので、つい解説してしまう。家の事情があったとはいえ、引きこもっていたころの陰は微塵も無い。梨花は、それを後ろでニコニコ聞いている。人柄の良い子だ。

 紀香と友子は、駅前の国道26号線、すなわち旧中山道に気を取られた。

 明治に外国人達が、ここに別荘を構え始める前や後の土地の情報がいっぺんに飛び込んできた。中には皇女和宮が、十四代将軍家茂に嫁いだとき、ここを通ったときの覚悟や寂しさなども混じっていた。

「お気軽そうだけど、ここもいろいろあったところなんだよね……」

「ま、しばらくシャットダウンする、バカンスにならないものね」

 六人は、タクシー二台に分乗して別荘に向かった。

 

 気づくと、後ろからつかず離れずで、一台のワゴンが着いてきている。

 

「ちょっと後ろの車まきますね」

 運転手さんは気楽そうに言ったが、緊張はダイレクトに伝わってきた。

「竹内興産のセガレとその取り巻きですね」

 紀香が振り向きもせずに答えたので運転手さんはびっくりしていた。

「え、知っているの!?」

「ちょっと、そこの脇道に入ってもらえます?」

「え、この道は林への一本道で、行き止まりだよ」

「ちょうどいいわ」

 友子と紀香は平気な顔をしていたが、四人は顔色もなかった。

「大丈夫、同じ人間、コミニケーションすれば分かるわよ、ね?」

 

 タクシーを停めて、紀香は友子といっしょにワゴン車に近づいた。

 

「ちょっと秀哉くん。顔かしてくれないかなぁ(^▽^)」

 男達は、秀哉の名前を知っているので驚いたようだが、ニヤニヤ笑いながら、二人のあとを付いてくる。

――いい、ケガさせちゃだめよ――

――うん、ちょっと、あそこの神経刺激しておわりにしよう――

 

 そのあと、林の奥で男達の大笑いする声がしはじめた。

 ガハハハハꉂꉂ(ᵔᗜᵔ* ) ギャハハハꉂꉂ◟(˃᷄ꇴ˂᷅ ૂ๑) グハハハハꉂꉂ◟(˃᷄ꇴ˂᷅ ૂ๑) 

 

 気になった運転手さんが駆けつけると、男達は笑いながら地面をのたうち回っていた。

「ちょっとギャグが効き過ぎたみたい」

「もう、大丈夫だからいきましょう」

 

 その後、男達は、気絶するまで笑い続け、六人は無事に別荘に到着した……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
  • 鈴木 一郎        友子の弟で父親
  • 鈴木 春奈        一郎の妻
  • 鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
  • 白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
  • 大佛  聡        クラスの委員長
  • 王  梨香        クラスメート
  • 長峰 純子        クラスメート
  • 麻子           クラスメート
  • 妙子           クラスメート 演劇部
  • 水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
  • 滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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